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累から指を受け取った銘は、累の様子に違和感を感じながらも彼女の家で待っている彩にそれを渡した。彩はいつものように指を受け取ると、部屋を出ていく。
最近彩はよく銘の部屋にやってくることが多い。それでも彼は何もしない。キス一つ、手を握るわけでもなくただそこにいることが多いのだ。
ジャケットを脱ぐときつめのチューブトップはサイズが合っていない。それくらい強調した方がいいと、彩が指定したのだ。少しずらせば乳首が出そうなくらい強調されている。累相手ではこんな服は進めない。メリハリのない体をしているからかもしれないが、それでもずいぶん過保護だと思う。彼女にはこんな服を着せるくせに。
化粧を落として、シャワーを浴びる。そして部屋着に着替えると、いつものように冷蔵庫からビールを取り出した。その時だった。
ピンポーン。
部屋のチャイムが鳴る。彩だろうか。何か忘れ物でもしたのだろうか。彼女はそう思いながら、玄関ドアを開ける。
「はい。」
そこには見覚えのある男がいた。それはいつか幻と一緒に食事をしていた男。鎧を着て、手には槍を持っている。
「お前は……。」
彼も驚いているようだった。食堂で幻といろんな事を話していたあの女が、鼠だったとは思ってもみなかったのだ。
話を聞きたいというだけだと銘を城につれてきた。話だけでは終わらない。銘はそう思いながら悦に付いてきた。
その甘い言葉とは裏腹に彼女が連れてこられたのは、城の地下にある牢だった。その時やっと彼女は自分が鼠として疑われていることに気が付く。だが何があってもそれは否定しないといけない。彩のためにも。
牢の中は狭い。ベッドとテーブル。衝立の向こうにはトイレがあるだけ。窓は遙か上。それも小さいもので鉄格子がはめられている。逃げられそうにはない。
こんな絶体絶命の状況で、彼女は何が出来るだろう。ただ沈黙を守るのだろうか。何も話さなければ殺されるのだろうか。確かに彼女が鼠に入ったとき、死を恐れてはいけないといわれていたが実際そうなると手が震えてくる。
それにしても誰が気が付いたのだろうか。彼女の変装は完璧だったはずだ。どんな相手でも騙せる自信があったのに。
その時ドアの鍵が開く音がした。思わず身構える。だが武器も何も持っていない彼女にとって、その拳だけが武器だ。累ではないので威力はほとんどないが、その辺の兵士よりは力があるはずだ。
ドアが開く。そこに現れた人を見て絶句した。
「藍……。」
累と懇意にしている藍。それが目の前にいた。ただの用心棒が城の中にはいるのだろうか。それに彼の後ろには悦と、白衣を着て眼鏡をかけた女がいる。だが女はおどおどした視線で彼女をみていた。
「藍。どういうことなの?」
すると彼は冷たく言う。
「お前は鼠の可能性がある。まぁ……それでもおそらくヒューマノイドの可能性はないと思うが……。京。調べろ。」
すると白衣の女は一歩彼女に近づくと、銘はビクッとしてベッドの後ろに下がる。そして女が銘に手を触れようとした瞬間、銘はそれに抵抗するように手を振り払った。
「いや。触らないで。」
すると悦がそれを止めるように彼女を押さえつける。すごい力だ。彼女の力を持ってもふりほどけない。そして彼女のシャツに手をかけると、京は青色のライトを当てる。
「詳しいことを調べてみなければわかりませんが、ヒューマノイドの証明であるナンバーの入れ墨がありません。おそらく人間です。」
「そうか。そうかもしれないとは思ったが。」
夕べ対峙した女とは別人だ。それは何となくわかる。体格も何もかも違うからだ。
「紅花様。ヒューマノイドではないといっても鼠と無関係だとは思えません。」
「紅花?」
手を離された銘はシャツを下ろしながら、彼を見上げる。
「王の側近で赤の側近。紅花様だ。」
その言葉に銘は声を思わず上げた。
「嘘!だって……。あなたは用心棒で……。」
「そんな仮面をかぶっているだ。普通なら、お前みたいなモノが声をかけられる立場じゃない。口を慎め。」
悦の言葉に銘はぐっと黙ってしまった。
「銘。おそらくお前がいつも餌になっていた。そして実行犯がいるはずだ。あの黒ずくめのヤツ。それは誰だ。」
「……藍。」
「あいつに称を殺された。そして幻も……。」
幻の名前に悦の拳もぐっと握られた。おそらく幻を失って悲しんでいる一人なのだろう。だが彼女は言えるわけがない。
「……。」
「言いませんね。」
「まぁ、簡単に口を割るとは思っていない。それに自分が鼠だと言うことをわざわざ証明している。」
「どうしてですか?」
「普通なら否定をするからですね。」
京はそう言って、彼女をみる。
言わないのは戸惑っていたからだ。累のことを知らないまま、彼は累を恨んでいるのだから。
その時藍は銘に近づく。そして胸ぐらを掴むと、その太い指が口の中に入ってきた。そしてその口の中をみる。
「妙なモノはないな。」
「前のヒューマノイドは口の中に毒を仕込んでいましたからね。十分検査をした方がいいでしょう。それから……そのついでに口を割らせます。」
検査という言葉に彼女はぞっとした。何かされるのだろうかと。
「勝手にしろ。」
藍はそう言って悦を促した。
ため息を付くと、京だけをつれて部屋を出ていく。
「あの……。」
地上にあがる京は、先をいく藍に声をかけた。
「何だ。」
「口を割らせるって……拷問でもするつもりですか。」
「悦はな、あぁあって激しいSだ。ハードなモノが好きで、女が死ぬんじゃないかといつも思う。自分の命よりも鼠がいいなら、口を割らないまま屈辱のまま死ねばいい。」
「でも……。」
女としてそれを受け入れられるのか。そんな死に方をしていいのか。京は複雑な思いで、彼をみていた。
それは藍も同じだった。銘は累の友人だと言っていた。ということは累も何かしらの関係があるのかもしれない。それにあの黒ずくめのヤツの体格。それは累と同じくらい。
やめよう。全ては銘が口を割ればすむ話だ。そして累が関係しているなど思いたくない。
地上に出て窓から外を見る。月は出ていない。雲の隙間から見える星はあるが、月はない。満月までまだ時間があるのだ。
「紅花様。私はこれから王の検診へ。」
「あぁ。手間をとらせてすまなかった。あぁ。京。最後に聞きたいことがあるのだが。」
「どうしました?」
「そのライトだが。」
「あぁ。紫外線です。ヒューマノイドは左の脇にこれで反応する入れ墨を入れていることが多いからですね。」
「入れ墨?」
「製造ナンバーです。普段は見えませんが、これで照らせば浮いて出ます。」
「それを借りれないか。」
「これですか?いいですけど、誰か心当たりが?」
「……あぁ。」
累がそうだと思いたくなかった。だが立場上累がヒューマノイドであれば、捕らえないといけない。そして殺して……。
累を殺す。一人になった藍は、唇をかむ。
最近彩はよく銘の部屋にやってくることが多い。それでも彼は何もしない。キス一つ、手を握るわけでもなくただそこにいることが多いのだ。
ジャケットを脱ぐときつめのチューブトップはサイズが合っていない。それくらい強調した方がいいと、彩が指定したのだ。少しずらせば乳首が出そうなくらい強調されている。累相手ではこんな服は進めない。メリハリのない体をしているからかもしれないが、それでもずいぶん過保護だと思う。彼女にはこんな服を着せるくせに。
化粧を落として、シャワーを浴びる。そして部屋着に着替えると、いつものように冷蔵庫からビールを取り出した。その時だった。
ピンポーン。
部屋のチャイムが鳴る。彩だろうか。何か忘れ物でもしたのだろうか。彼女はそう思いながら、玄関ドアを開ける。
「はい。」
そこには見覚えのある男がいた。それはいつか幻と一緒に食事をしていた男。鎧を着て、手には槍を持っている。
「お前は……。」
彼も驚いているようだった。食堂で幻といろんな事を話していたあの女が、鼠だったとは思ってもみなかったのだ。
話を聞きたいというだけだと銘を城につれてきた。話だけでは終わらない。銘はそう思いながら悦に付いてきた。
その甘い言葉とは裏腹に彼女が連れてこられたのは、城の地下にある牢だった。その時やっと彼女は自分が鼠として疑われていることに気が付く。だが何があってもそれは否定しないといけない。彩のためにも。
牢の中は狭い。ベッドとテーブル。衝立の向こうにはトイレがあるだけ。窓は遙か上。それも小さいもので鉄格子がはめられている。逃げられそうにはない。
こんな絶体絶命の状況で、彼女は何が出来るだろう。ただ沈黙を守るのだろうか。何も話さなければ殺されるのだろうか。確かに彼女が鼠に入ったとき、死を恐れてはいけないといわれていたが実際そうなると手が震えてくる。
それにしても誰が気が付いたのだろうか。彼女の変装は完璧だったはずだ。どんな相手でも騙せる自信があったのに。
その時ドアの鍵が開く音がした。思わず身構える。だが武器も何も持っていない彼女にとって、その拳だけが武器だ。累ではないので威力はほとんどないが、その辺の兵士よりは力があるはずだ。
ドアが開く。そこに現れた人を見て絶句した。
「藍……。」
累と懇意にしている藍。それが目の前にいた。ただの用心棒が城の中にはいるのだろうか。それに彼の後ろには悦と、白衣を着て眼鏡をかけた女がいる。だが女はおどおどした視線で彼女をみていた。
「藍。どういうことなの?」
すると彼は冷たく言う。
「お前は鼠の可能性がある。まぁ……それでもおそらくヒューマノイドの可能性はないと思うが……。京。調べろ。」
すると白衣の女は一歩彼女に近づくと、銘はビクッとしてベッドの後ろに下がる。そして女が銘に手を触れようとした瞬間、銘はそれに抵抗するように手を振り払った。
「いや。触らないで。」
すると悦がそれを止めるように彼女を押さえつける。すごい力だ。彼女の力を持ってもふりほどけない。そして彼女のシャツに手をかけると、京は青色のライトを当てる。
「詳しいことを調べてみなければわかりませんが、ヒューマノイドの証明であるナンバーの入れ墨がありません。おそらく人間です。」
「そうか。そうかもしれないとは思ったが。」
夕べ対峙した女とは別人だ。それは何となくわかる。体格も何もかも違うからだ。
「紅花様。ヒューマノイドではないといっても鼠と無関係だとは思えません。」
「紅花?」
手を離された銘はシャツを下ろしながら、彼を見上げる。
「王の側近で赤の側近。紅花様だ。」
その言葉に銘は声を思わず上げた。
「嘘!だって……。あなたは用心棒で……。」
「そんな仮面をかぶっているだ。普通なら、お前みたいなモノが声をかけられる立場じゃない。口を慎め。」
悦の言葉に銘はぐっと黙ってしまった。
「銘。おそらくお前がいつも餌になっていた。そして実行犯がいるはずだ。あの黒ずくめのヤツ。それは誰だ。」
「……藍。」
「あいつに称を殺された。そして幻も……。」
幻の名前に悦の拳もぐっと握られた。おそらく幻を失って悲しんでいる一人なのだろう。だが彼女は言えるわけがない。
「……。」
「言いませんね。」
「まぁ、簡単に口を割るとは思っていない。それに自分が鼠だと言うことをわざわざ証明している。」
「どうしてですか?」
「普通なら否定をするからですね。」
京はそう言って、彼女をみる。
言わないのは戸惑っていたからだ。累のことを知らないまま、彼は累を恨んでいるのだから。
その時藍は銘に近づく。そして胸ぐらを掴むと、その太い指が口の中に入ってきた。そしてその口の中をみる。
「妙なモノはないな。」
「前のヒューマノイドは口の中に毒を仕込んでいましたからね。十分検査をした方がいいでしょう。それから……そのついでに口を割らせます。」
検査という言葉に彼女はぞっとした。何かされるのだろうかと。
「勝手にしろ。」
藍はそう言って悦を促した。
ため息を付くと、京だけをつれて部屋を出ていく。
「あの……。」
地上にあがる京は、先をいく藍に声をかけた。
「何だ。」
「口を割らせるって……拷問でもするつもりですか。」
「悦はな、あぁあって激しいSだ。ハードなモノが好きで、女が死ぬんじゃないかといつも思う。自分の命よりも鼠がいいなら、口を割らないまま屈辱のまま死ねばいい。」
「でも……。」
女としてそれを受け入れられるのか。そんな死に方をしていいのか。京は複雑な思いで、彼をみていた。
それは藍も同じだった。銘は累の友人だと言っていた。ということは累も何かしらの関係があるのかもしれない。それにあの黒ずくめのヤツの体格。それは累と同じくらい。
やめよう。全ては銘が口を割ればすむ話だ。そして累が関係しているなど思いたくない。
地上に出て窓から外を見る。月は出ていない。雲の隙間から見える星はあるが、月はない。満月までまだ時間があるのだ。
「紅花様。私はこれから王の検診へ。」
「あぁ。手間をとらせてすまなかった。あぁ。京。最後に聞きたいことがあるのだが。」
「どうしました?」
「そのライトだが。」
「あぁ。紫外線です。ヒューマノイドは左の脇にこれで反応する入れ墨を入れていることが多いからですね。」
「入れ墨?」
「製造ナンバーです。普段は見えませんが、これで照らせば浮いて出ます。」
「それを借りれないか。」
「これですか?いいですけど、誰か心当たりが?」
「……あぁ。」
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