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一年目
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前も通ったけれどじめじめして暗いそんな道だった。日差しが来ないぶん楽かもしれない。竹彦は横で黙ったまま、私の横を歩いている。多分、私が彼を突き放すようなことをしたから、不機嫌なのかもしれない。
でも言えるわけない。柊さんのことは私を信用をしてくれて柊さん自身の口から聞いたこと。だからそんなことを何の関係もない竹彦に話すわけにはいかないのだ。
「ヤクザでしょ?あの人。」
ずっと黙っていたけど、ぽつりと彼が聞いてきた。
「えぇ。前に「虹」で会ったわ。」
「「虹」で?あぁそうだね。夜はバーをしているんだから、そういう人とも繋がりがあるんだろうね。」
「……。」
「でもあまり付き合いはない方がいいに決まっている。」
「そうね。」
「でも気に入られていたみたいだ。」
「気のせいよ。」
「気のせい?」
「そうでなければただのリップサービスね。それくらいはするでしょ。」
女性をだますことでのし上がった人だ。それくらいはするだろう。
そのときラブホテルの入り口でかかっていた音楽が耳に付いた。
「……。」
夕べ椿さんがかけていた曲だった。どうして椿さんは夕べの私の心情をくんだような曲をかけてくれるのだろう。
「どうしたの?」
足を止めた私を心配そうに竹彦は見ていた。私は下を向いて、彼の方に視線をまた移した。
「いいえ。何でもないわ。行きましょう。」
「こんなところで足を止めたら大変だよ。」
「そうね。」
そういって私たちはそのラブホテルの通りを急ぎ足で通り過ぎた。
やがて分かれ道になる。竹彦は向こうへ行く。私はこっちへ。
「また。明日。」
「うん。」
私は彼から離れていこうとした。しかし彼が私に後ろから声をかけた。
「桜さん。」
驚いて振り返る。
「僕でよかったら話を聞くから。彼らのように大人ではないから、役には立たないかもしれないけど。聞くだけなら……。」
驚いた。私が前に葵さんに行った言葉を、竹彦からも聞くなんて。
「そうね。」
私はそれだけをいうと、彼から離れていった。
次の日。私は学校にカタログを持ってきた。昼休み、顔をつき合わせてあれがいい、これがいいと皆で思案していたのだ。
「ギャルソンエプロン、超格好いい。足が長く見えそう。」
「そう?私いつもしてるけど、そうでもないよ。」
「夢がないなぁ。」
「ベスト必要?」
「本格的な喫茶店は……。」
そのとき竹彦が私に近づいてきた。
「桜さん。ちょっといい?」
「何?」
様子が違う。その雰囲気に、向日葵達が顔を見合わせた。私は席を立って、教室の外に連れ出された。
「どこまで行くの?」
「一階。話があるんだって。」
「誰が?」
「柊さんが。」
でもメッセージも何もない。だから嘘かもしれないと思った。だけど彼は何もいわずに私を引きずるようにつれてきた。
そして彼が連れてきたのは化学室だった。そこには本当に柊さんの姿がある。
「来たか。」
「どうしました?」
彼は不機嫌そうに私に近づいた。
「昨日蓬に会ったか。」
そのことか。私はため息を付いていう。
「えぇ。会いました。」
「……。」
彼はため息を付いて、私を見下ろした。そして視線を竹彦に移す。
「本当だったな。」
「だからあなたに嘘を付いても仕方がないでしょうと言いましたよね。」
「……悪かったな。」
彼はため息を付いて私をまたみる。それは怒ってるような表情だった。
「ごめんなさい。すぐ言えば良かったんですけど。」
「……いいや。偶然会ったと言っていたな。偶然を避けるために逃げれば不自然になる。別に責めない。」
彼はため息を付いて外を見る。すると教室のドアが開いた。
「柊さん。ちょっと来てもらえませんか?生物室のエアコンの冷風が利かないって言われてるんですよ。」
棗さんだった。彼は工具箱を手にすると、私の頭に触れる。
「今日行くから。」
「わかりました。」
行くというのは、どこに来るのかわからなかったけれど多分「窓」のことだろう。文化祭の準備でいつもよりも「窓」にいれる時間は少ない。だけど柊さんはことあるごとに「窓」に来てくれる。顔が見れるだけで嬉しかった。
「来るって。どこ行くの?」
竹彦は不思議そうに声をかけてきた。あ、まだいたんだっけ。
「……店でしょ?」
「桜さん。柊さんとうまくいってないの?」
「どうしてそう思うの?」
「だって昨日のヤクザのことなんか知らなかったし。」
「別にいいんじゃない?知らない方がいいことも沢山あるわ。」
「それに……。」
「竹彦君。もうやめて。引き離そうとしているのかもしれないけど、もう引き離れられないのよ。騙されていてもいいって位の覚悟があってつき合っているの。」
「……桜さん。」
「これ以上関わらないで。」
私はそういって化学室をでようとした。そのとき後ろで何かが倒れる音がした。
「……何?」
後ろを振り返ると、そこには机にもたれ掛かり、それでも力つきて床に倒れ込んだ竹彦の姿があった。
「竹彦君?」
どうしたの?竹彦に近づいて、その手を掴む。すごい熱い。熱でもあるのか。
「誰か……。」
そういえばさっき生物室って棗さんがいっていた。生物室は隣だ。私はすぐに部屋を出ると、生物室のドアを開けた。
「柊さん。助けて。」
柊さんはエアコンの中を解体していたようだったが、私の様子に驚いて脚立を下りた。
「どうした。」
「竹彦君が急に倒れたんです。」
「急に?やばくないですか。熱中症とかだったら。」
棗さんも心配してくれているように隣の部屋に来てくれた。そして様子を見ると、彼は竹彦を抱えて保健室に連れて行ってくれた。
でも言えるわけない。柊さんのことは私を信用をしてくれて柊さん自身の口から聞いたこと。だからそんなことを何の関係もない竹彦に話すわけにはいかないのだ。
「ヤクザでしょ?あの人。」
ずっと黙っていたけど、ぽつりと彼が聞いてきた。
「えぇ。前に「虹」で会ったわ。」
「「虹」で?あぁそうだね。夜はバーをしているんだから、そういう人とも繋がりがあるんだろうね。」
「……。」
「でもあまり付き合いはない方がいいに決まっている。」
「そうね。」
「でも気に入られていたみたいだ。」
「気のせいよ。」
「気のせい?」
「そうでなければただのリップサービスね。それくらいはするでしょ。」
女性をだますことでのし上がった人だ。それくらいはするだろう。
そのときラブホテルの入り口でかかっていた音楽が耳に付いた。
「……。」
夕べ椿さんがかけていた曲だった。どうして椿さんは夕べの私の心情をくんだような曲をかけてくれるのだろう。
「どうしたの?」
足を止めた私を心配そうに竹彦は見ていた。私は下を向いて、彼の方に視線をまた移した。
「いいえ。何でもないわ。行きましょう。」
「こんなところで足を止めたら大変だよ。」
「そうね。」
そういって私たちはそのラブホテルの通りを急ぎ足で通り過ぎた。
やがて分かれ道になる。竹彦は向こうへ行く。私はこっちへ。
「また。明日。」
「うん。」
私は彼から離れていこうとした。しかし彼が私に後ろから声をかけた。
「桜さん。」
驚いて振り返る。
「僕でよかったら話を聞くから。彼らのように大人ではないから、役には立たないかもしれないけど。聞くだけなら……。」
驚いた。私が前に葵さんに行った言葉を、竹彦からも聞くなんて。
「そうね。」
私はそれだけをいうと、彼から離れていった。
次の日。私は学校にカタログを持ってきた。昼休み、顔をつき合わせてあれがいい、これがいいと皆で思案していたのだ。
「ギャルソンエプロン、超格好いい。足が長く見えそう。」
「そう?私いつもしてるけど、そうでもないよ。」
「夢がないなぁ。」
「ベスト必要?」
「本格的な喫茶店は……。」
そのとき竹彦が私に近づいてきた。
「桜さん。ちょっといい?」
「何?」
様子が違う。その雰囲気に、向日葵達が顔を見合わせた。私は席を立って、教室の外に連れ出された。
「どこまで行くの?」
「一階。話があるんだって。」
「誰が?」
「柊さんが。」
でもメッセージも何もない。だから嘘かもしれないと思った。だけど彼は何もいわずに私を引きずるようにつれてきた。
そして彼が連れてきたのは化学室だった。そこには本当に柊さんの姿がある。
「来たか。」
「どうしました?」
彼は不機嫌そうに私に近づいた。
「昨日蓬に会ったか。」
そのことか。私はため息を付いていう。
「えぇ。会いました。」
「……。」
彼はため息を付いて、私を見下ろした。そして視線を竹彦に移す。
「本当だったな。」
「だからあなたに嘘を付いても仕方がないでしょうと言いましたよね。」
「……悪かったな。」
彼はため息を付いて私をまたみる。それは怒ってるような表情だった。
「ごめんなさい。すぐ言えば良かったんですけど。」
「……いいや。偶然会ったと言っていたな。偶然を避けるために逃げれば不自然になる。別に責めない。」
彼はため息を付いて外を見る。すると教室のドアが開いた。
「柊さん。ちょっと来てもらえませんか?生物室のエアコンの冷風が利かないって言われてるんですよ。」
棗さんだった。彼は工具箱を手にすると、私の頭に触れる。
「今日行くから。」
「わかりました。」
行くというのは、どこに来るのかわからなかったけれど多分「窓」のことだろう。文化祭の準備でいつもよりも「窓」にいれる時間は少ない。だけど柊さんはことあるごとに「窓」に来てくれる。顔が見れるだけで嬉しかった。
「来るって。どこ行くの?」
竹彦は不思議そうに声をかけてきた。あ、まだいたんだっけ。
「……店でしょ?」
「桜さん。柊さんとうまくいってないの?」
「どうしてそう思うの?」
「だって昨日のヤクザのことなんか知らなかったし。」
「別にいいんじゃない?知らない方がいいことも沢山あるわ。」
「それに……。」
「竹彦君。もうやめて。引き離そうとしているのかもしれないけど、もう引き離れられないのよ。騙されていてもいいって位の覚悟があってつき合っているの。」
「……桜さん。」
「これ以上関わらないで。」
私はそういって化学室をでようとした。そのとき後ろで何かが倒れる音がした。
「……何?」
後ろを振り返ると、そこには机にもたれ掛かり、それでも力つきて床に倒れ込んだ竹彦の姿があった。
「竹彦君?」
どうしたの?竹彦に近づいて、その手を掴む。すごい熱い。熱でもあるのか。
「誰か……。」
そういえばさっき生物室って棗さんがいっていた。生物室は隣だ。私はすぐに部屋を出ると、生物室のドアを開けた。
「柊さん。助けて。」
柊さんはエアコンの中を解体していたようだったが、私の様子に驚いて脚立を下りた。
「どうした。」
「竹彦君が急に倒れたんです。」
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