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一年目
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保健室に連れて行った竹彦は、結局熱中症という判断だった。保健婦の先生は、ぐっすりと眠っている竹彦に「寝不足もあったんじゃないの」と言って彼をベッドで眠らせてくれている。
「人騒がせな。」
柊さんはそういって、保健室を離れていった。
「男子では珍しいけれど、結構低血圧ね。」
「そんなものですか。」
「男の子と女の子じゃ体の作りも全く違うしね。」
そんなモノなのかな。皮を一枚めくれば皆同じだと思っていたけれど、やっぱり一緒ではなかったのだろう。私はそう思いながら教室に向かっていく。次の授業には出られないだろうと次の授業の先生に言ってくれと頼まれて。
予鈴はとっくに鳴ったので、廊下に人は少なかった。階段にさしかかると、声をかけられた。
「桜。」
振り向くと柊さんがいた。登りかけた足を元に戻し、彼の元へ向かう。
「あいつ、何か話していたのか。」
「……心配してました。」
「何を?」
「私と、うまくいっていないのではないかと。」
「……あいつ、葵とは違うがやはり……。」
「はい。」
「……あまり深入りするな。文化祭とかの実行委員で一緒にいることも多いのかもしれないが、狙っているのは間違いないのだと思う。くそっ。女装とかしていたから、女に興味がないのかと勘違いしていた。」
「それはそれ。これはこれらしいですよ。」
廊下の角から棗さんがやってきたが、私たちを見てさっと姿を隠してしまった。気を利かせてくれてるらしい。
ふと柊さんの手が泳いでいた。何かしたいのに、今は出来ないもどかしさがあるようだ。
「何故笑った?」
「……いいえ。別に。」
「桜。また連絡をする。都合があえば……。」
「はい。わかってます。」
本鈴が鳴った。授業には間に合わなかったな。
「もう行け。」
「ありがとう。柊さん。」
私はそういって、階段を上がっていった。
考えてくれていた。それが嬉しくて、スキップしながら階段を上がりたいくらいだった。
六限目にやっと竹彦が戻ってきた。けれどやっぱり今日は帰った方がいいと言われて、放課後の文化祭の準備はできなかった。
教室の飾り付けの手伝いをして、そのあと食器やコップなんかの打ち合わせをした。時計を見ると、十七時。十八時にはバイトに行けそうだな。
「ねぇー。桜ー。体育祭のことだけど。」
あっ。そうか。忘れてた。文化祭のことで頭一杯だったけど、体育祭もあったんだっけ。向日葵はプリントを持って、私に近づいてきた。
「皆もうだいぶ決めてんのよねぇ。あと桜とー竹彦君くらい。遅くても月曜日に提出しないと行けないからさぁ、何でもいいから決めてくれる?」
プリントを見ると、あらゆる種目があったけど抜けているのはほんの一部だった。うーん。この中で何が出来る?と言うか、何がましなの?
「桜って結構足遅いもんね。」
「んー運動苦手。どうしようかな。」
「とりあえず考えて置いて、プリントコピーしようか。」
「あ、いい。とりあえず写メで。」
「そうね。それからさ、竹彦君だけど。」
「んー。どうしたの?」
「今日帰ったじゃん。だから月曜日までに決めて欲しいんだけど。連絡つく?」
「あぁ。連絡付くからこの写真メッセージに張り付けとく。」
その言葉に向日葵が驚いた表情になる。
「何?」
「ううん。竹彦君の連絡先知ってんだと思って。」
「知らないの?」
「竹彦君って、多分このクラスの人、誰も知らないよ。ケータイの番号。」
「そうなの?」
「何で知ってんの?やっぱあれ?竹彦君が……。」
「違うって。」
「だってさぁ。昨日も二人でコーヒーのメーカーに行ってたんでしょ?」
「うん。でも、同じ実行委員だし。」
「それはそうだけどさ。」
「考えすぎ。」
「でもさぁ、桜ってあたしとかともお茶したりとか遊びに行ったりしないじゃん。でも何で竹彦君とは行くの?」
「実行委員だからでしょ?終わったらいつも通りよ。」
そう。いつも通り。これが終われば何もない。
「桜ぁ。この衣装だけどさ、レンタルの値段って一緒?」
匠君から声をかけられて、私はカタログに目を移した。
「それにしてもバリスタの格好ねぇ。桜いっつもしてんだろ?どんな格好なの?」
「普通。白いブラウスに黒のパンツ。それに長めのバリスタエプロン。」
「あんまり見栄えしないよなぁ。やっぱベスト着ようぜ。」
「でも女装でしょ?」
「は?しねぇよ。」
「いいじゃん。詰め物してさ。」
「だったら女は胸つぶせよ。さらし巻いてさ。あぁ。桜は必要ねぇな。」
むかっ!気にしてることを!
「あんたねぇ。」
「駄目よ。匠君。桜気にしてんだから。」
向日葵はそういって笑っていたけど、やっぱりムカつく。
「でも桜、ちょっと変わったよ。」
向日葵がフォローするように私に言ってきた。
「何が?」
「色気って言うのかな。前、髪下ろしてたときにしか気が付かなかったけど、今は髪下ろさなくても何となく変わった感じがあるね。」
「そうかな。」
「彼氏のおかげ?」
その言葉に匠君が驚いたように私を見た。
「彼氏?桜いるの?」
「別に関係ないでしょ?」
そういって私はプリントに目を落とした。
「人騒がせな。」
柊さんはそういって、保健室を離れていった。
「男子では珍しいけれど、結構低血圧ね。」
「そんなものですか。」
「男の子と女の子じゃ体の作りも全く違うしね。」
そんなモノなのかな。皮を一枚めくれば皆同じだと思っていたけれど、やっぱり一緒ではなかったのだろう。私はそう思いながら教室に向かっていく。次の授業には出られないだろうと次の授業の先生に言ってくれと頼まれて。
予鈴はとっくに鳴ったので、廊下に人は少なかった。階段にさしかかると、声をかけられた。
「桜。」
振り向くと柊さんがいた。登りかけた足を元に戻し、彼の元へ向かう。
「あいつ、何か話していたのか。」
「……心配してました。」
「何を?」
「私と、うまくいっていないのではないかと。」
「……あいつ、葵とは違うがやはり……。」
「はい。」
「……あまり深入りするな。文化祭とかの実行委員で一緒にいることも多いのかもしれないが、狙っているのは間違いないのだと思う。くそっ。女装とかしていたから、女に興味がないのかと勘違いしていた。」
「それはそれ。これはこれらしいですよ。」
廊下の角から棗さんがやってきたが、私たちを見てさっと姿を隠してしまった。気を利かせてくれてるらしい。
ふと柊さんの手が泳いでいた。何かしたいのに、今は出来ないもどかしさがあるようだ。
「何故笑った?」
「……いいえ。別に。」
「桜。また連絡をする。都合があえば……。」
「はい。わかってます。」
本鈴が鳴った。授業には間に合わなかったな。
「もう行け。」
「ありがとう。柊さん。」
私はそういって、階段を上がっていった。
考えてくれていた。それが嬉しくて、スキップしながら階段を上がりたいくらいだった。
六限目にやっと竹彦が戻ってきた。けれどやっぱり今日は帰った方がいいと言われて、放課後の文化祭の準備はできなかった。
教室の飾り付けの手伝いをして、そのあと食器やコップなんかの打ち合わせをした。時計を見ると、十七時。十八時にはバイトに行けそうだな。
「ねぇー。桜ー。体育祭のことだけど。」
あっ。そうか。忘れてた。文化祭のことで頭一杯だったけど、体育祭もあったんだっけ。向日葵はプリントを持って、私に近づいてきた。
「皆もうだいぶ決めてんのよねぇ。あと桜とー竹彦君くらい。遅くても月曜日に提出しないと行けないからさぁ、何でもいいから決めてくれる?」
プリントを見ると、あらゆる種目があったけど抜けているのはほんの一部だった。うーん。この中で何が出来る?と言うか、何がましなの?
「桜って結構足遅いもんね。」
「んー運動苦手。どうしようかな。」
「とりあえず考えて置いて、プリントコピーしようか。」
「あ、いい。とりあえず写メで。」
「そうね。それからさ、竹彦君だけど。」
「んー。どうしたの?」
「今日帰ったじゃん。だから月曜日までに決めて欲しいんだけど。連絡つく?」
「あぁ。連絡付くからこの写真メッセージに張り付けとく。」
その言葉に向日葵が驚いた表情になる。
「何?」
「ううん。竹彦君の連絡先知ってんだと思って。」
「知らないの?」
「竹彦君って、多分このクラスの人、誰も知らないよ。ケータイの番号。」
「そうなの?」
「何で知ってんの?やっぱあれ?竹彦君が……。」
「違うって。」
「だってさぁ。昨日も二人でコーヒーのメーカーに行ってたんでしょ?」
「うん。でも、同じ実行委員だし。」
「それはそうだけどさ。」
「考えすぎ。」
「でもさぁ、桜ってあたしとかともお茶したりとか遊びに行ったりしないじゃん。でも何で竹彦君とは行くの?」
「実行委員だからでしょ?終わったらいつも通りよ。」
そう。いつも通り。これが終われば何もない。
「桜ぁ。この衣装だけどさ、レンタルの値段って一緒?」
匠君から声をかけられて、私はカタログに目を移した。
「それにしてもバリスタの格好ねぇ。桜いっつもしてんだろ?どんな格好なの?」
「普通。白いブラウスに黒のパンツ。それに長めのバリスタエプロン。」
「あんまり見栄えしないよなぁ。やっぱベスト着ようぜ。」
「でも女装でしょ?」
「は?しねぇよ。」
「いいじゃん。詰め物してさ。」
「だったら女は胸つぶせよ。さらし巻いてさ。あぁ。桜は必要ねぇな。」
むかっ!気にしてることを!
「あんたねぇ。」
「駄目よ。匠君。桜気にしてんだから。」
向日葵はそういって笑っていたけど、やっぱりムカつく。
「でも桜、ちょっと変わったよ。」
向日葵がフォローするように私に言ってきた。
「何が?」
「色気って言うのかな。前、髪下ろしてたときにしか気が付かなかったけど、今は髪下ろさなくても何となく変わった感じがあるね。」
「そうかな。」
「彼氏のおかげ?」
その言葉に匠君が驚いたように私を見た。
「彼氏?桜いるの?」
「別に関係ないでしょ?」
そういって私はプリントに目を落とした。
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