夜の声

神崎

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二年目

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 コーヒーのお陰でとりあえずは空気は柔らかくなった。落ち着いたところで、私たちはどうして知り合いなのか。そして何をしていたのか説明した。
「夕べここに来るって言いながら、来なかったってこと?」
 コーヒーを飲みながら、母さんは茅さんに聞いてきた。どうしても私が説明しようとしたら、言葉に詰まってしまってうまく説明が出来なかったからだ。どうしてだろう。それだけ不安なんだろうか。私が?信じてるとかずっと言ってたのに、私は何も信用できていなかったの?それがまた不安にさせてしまう。
「多分、姉さんのところにいると思う。」
「浮気してたのはあっちってことか。」
 母さんはため息を付いて、ソファの背もたれにもたれ掛かる。
「浮気とは限らないけど、連絡が付かないのは確かだ。そして家にもいねぇから、どこに行っているのかわからない。」
「でも一つ、あたしも確かめたいことがあるんだけど。」
「柊のことか?」
「えぇ。あの人、蓬さんとは繋がりがもうないの?」
「……ない。とは言い切れない。」
 その言葉は寝耳に水だった。カップを持った手を落としそうになってしまう。
「何ですって?あんな人と繋がりがあったら、とんでもないことになるわよ。」
「そんなことは椿だった奴ならみんなわかってる。あいつだってバカじゃねぇ。進んで繋がりを持とうとはしてねぇよ。ただ……。」
「ただ?」
「蓬は欲しがってるんだよ。柊の力と……それからコネかな。」
「コネ?一介の派遣に何のコネがあるって言うの?」
「あいつは、SyuとしてDJをしている。それを進めたのは菊音亮だ。でもそこからあいつ自身の手で、コネを広げている。Syuって言えば、今だったら客をどれだけでも集められるだろうよ。」
「……そんなに?」
 想像もしてなかった。確かにSyuがステージに上がっただけで人混みが出来てしまったくらい人が多くなったのは確かだけど……。でもそれだけが欲しいのかな。
「まぁそれ以外のことがあるんだろうが、俺にはそれ以上のことはわからん。」
 茅さんは煙草に火をつけると、煙を吐き出した。母さんはため息を付いて私を見る。
「あんたもとんでもない人を好きになったもんね。」
「そんな後ろ盾を見て好きになったんじゃないわ。」
「まぁ、そうでしょうけど、それじゃないと一年もつき合わないわね。」
「一年もつき合ってんのか。あいつにロリコンの趣味があったとは知らなかったな。」
「バカね。ロリコンで好きになるわけないでしょ?だいたい、あんたの姉さんを好きになったって言うんだから、ロリコン趣味なんか無いわよ。」
「まぁな。」
 不機嫌そうに母さんは煙草を消して、私を見る。
「どうすんの?あんた。」
「え?」
「別れるの?」
 別れる?柊さんと?そんなこと……想像もしてなかった。首を横に振り、それを否定する。
「俺は別れた方がいいと思うけどな。」
「イヤです。」
「俺の方がいい思いさせてヤるよ。」
 そう言って彼は私の肩に手をおこうとした。しかし私はそれを拒否するように払いのける。
「結構です。」
 その光景を見て、母さんはニヤリと笑う。
「何?あんたも狙ってんの?」
「いいや。俺ロリコンじゃねぇし。」
 ロリコンじゃないっていってる人は、何度私に襲いかかろうとしたんですかね?何いけしゃあしゃあと言ってんだろ。
「まぁね。一人しか知らないで、結婚でもしたら人生半分くらい損してるわ。そう言う意味で一度ヤっておいてもいいかもしれないわねぇ。」
「母さん。」
「あっちも浮気してだったらお互い様でしょ?だいたい、柊さんがおかしいわよ。連絡付かないときもあって?何してるかわからない?なのにこっちには貞操を守れって?強くなれって?女を何だと思ってんのよ。」
 激しいなぁ。彼氏となんかあったのかな。茅さんと顔を見合わせて、ため息を付いた。
「胡桃さん。もう寝たら?」
 茅さんも呆れたように母さんにいった。
「茅。うるさいわね。桜もそう思わないの?」
「……私は待つから。」
「つまんない女。」
 彼女はそう言って、ソファから立ち上がった。
「寝るわ。あんまり寝れないと肌荒れするし。」
「うん。お休み。」
「コーヒー飲んでよく寝れるな。」
「寝れるときに寝ないといけない生活をしたからよ。」
 そう言って母さんは部屋に戻っていった。

 外を見るともう日は高く上がっている。それでも携帯に連絡の一つもない。私は何度携帯を見て、そして外を見ていた。バイクはあったから、バイクの音はしないのは確かだ。
「桜。」
 茅さんはまだそこにいる。心配しているのかもしれない。
「茅さん。あまり寝ていないんでしょう?もう帰ってもいいから。」
「……寝なくても大丈夫だ。それに多分今は寝れない。」
「それもそうですね。」
「……桜。ちょっと外に出るか?」
「……。」
「この中にずっといたら、気が滅入るだろう?どこか連れて行ってやるよ。」
「ううん。平気。」
 平気じゃない。そんなことは自分自身がわかっている。どうしても最悪のことを想像するから。
「桜。」
「……大丈夫。私は……大丈夫だから。」
 まだ大丈夫だ。まだ自分を保てる。柊さんが入ってきて、抱きしめてもらえるとまだ信じれる。
 そのとき、ベッドの上に座っていた私に、茅さんが近づいてきた。そして私の手を握り、その手の甲に口づけをする。
「ここにいて、奴を待つのか。何も知らないように装って、奴に抱かれるのか。」
「……別れたくないから。」
「やっぱりバカ女だな。お前は。」
 足を延ばしている私の太股の上に乗ってくる。見下ろした私の顎を持ち上げてきた。
「我慢するな。」
「……駄目です。」
 私は首を横に振り、彼を押し退けた。
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