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二年目
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「魔法瓶はあげるわ。」
「いいよ。また返しに行くから。」
竹彦はそういって帰って行った。きっと話をしていた時間はそれほど長い時間じゃない。
「コーヒーがこんなところで役に立つとはな。」
「そうね。」
私たちはそういってアパートの方に歩いていく。
「あいつはこれからが大変だろう。」
「どうして?」
「ヤクザの組の中に入っていなかったとは言え、手を切るのにはさらに大変なんだ。主に金だがな。」
「お金?」
「慈善事業でヤクザも椿を育ててるわけじゃない。育ててもらった「お礼」と「手切れ金」が必要になる。それからある年数は関係者だったと、レッテルを貼られる。周りの目もあるだろう。」
「それは……この間お葬式の時に聞いた。」
お葬式の時「柄が悪い」とか「体裁が良くない」とか言っている人の話を聞いた。彼がそれを耳にしているのかわからない。今から彼はその声にぶつかっていかなければいけないのだろう。
そしてそれは彼の身内にも影響する。
「……心配か?」
「そうね。同級生としてね。」
「妬けるな。」
「つまんないことで妬かないで。」
それよりももっと別のことで妬いて欲しい。
だけど、私は彼に妬かれるような人間じゃない。数時間前だ。たった数時間前、私は茅さんに抱かれた。罪の意識がないわけじゃない。柊さんが式をしたいとお金を稼いでいるときに、私は別の男の前で股を開いていたのだ。
「どうした。表情が暗いな。」
「……今日、帰ってくるとき……。」
思わず言いそうになった。だけど言えるわけがない。
「菊音さんが社長の所へ行くところを見たわ。」
「社長?あぁ。蓬さんの兄と言っていたか。」
「ヒジカタコーヒーは高杉組と深く繋がっている。そこへ菊音さんがいるのがおかしいと思ったの。」
「……なるほど。やはりユダは菊音というわけか。」
彼はそういうと私の手を握る。足を止めると、彼は私の手に唇を寄せた。
「後は、蓬に任せよう。俺たちが出来るのはここまでだ。」
「そうね。」
「今度の日曜日は今度こそ物件を見に行こう。春先だから、もう少し早めに見ておけば良かったがな。」
後は自分たちのことを考えればいい。彼はそう言ってくれているようだった。
「菊音がねぇ。」
柊さんがお風呂に入っている間、茅さんは向かいのソファで私の話をずっと聞いていた。
「確かに昔から掴めねぇヤツだと思ってたけどな。高杉組と繋がりがあったのか。」
「そんなことをして何のメリットがあるの?」
お茶を飲みながら私は茅さんに聞いた。
「基本、ヤクザってのは組から金は出ねぇんだ。上納金っていう形で、ヤクザが上のヤツに納める金ばっか。でもネームバリューがあって、さらにコネがあればいくらでも金は集めることが出来る。」
「そんなものなの?」
「薬、詐欺、女をソープに落としたり、売ったり、まぁ、稼ぐ方法はいくらでもあるけどな。」
絶句するような世界だ。淡々と話すけどすごい世界だな。
「でもたぶんそれだけのことをしてんだ。菊音は高杉組からたぶん金をもらってたんじゃねぇのか。」
「でもそんなことをして何のメリットがあるの?」
「高杉組にか?あるさ。」
煙草を消して彼はいう。
「坂本組は大本の坂本組があってそこの傘下だけど、その中でも蓬さんの所は、割と大きいものになりつつある。そこを高杉組にしちまえば、また力と金とかが流れ込んでくる。だから必要なんだよ。この国にどんだけのヤクザの組があると思ってんだ。そいつらよりも強い力が欲しいに決まってんじゃねぇか。力と金だからな。奴らの世界は。」
そんなものドブにでも捨ててくればいいのに。わけわかんない世界だ。
「何を話しているんだ。」
柊さんがタオルで髪を拭きながら、お風呂で髪を拭きながら上がってきた。
「変なことを教えてねぇよ。聞きてぇっていうから。」
「……桜。これからはそんな世界には縁がないようになる。気にするな。」
「そうね。ない方がいいわ。」
そう言うと彼は私の頭に手を置いた。
「明日も早えし、俺寝るわ。」
「そうね。私たちも寝ましょうか。」
お風呂上がりの柊さんの腕に捕まると、いい香りがした。石鹸の匂いだ。
「はー。相変わらずだな。お前等、今日スるなよ。」
「わかってる。じゃあな。」
腕から手を離すと、柊さんは部屋に戻る。その後を追うように私も部屋へ向かう。すると茅さんはこちらを見て、口元だけで笑った。その笑いに意味があるように。
布団にはいると、さっきまで布団に吸い込まれそうなくらい眠かったのに今は眠れなかった。
髪を乾かし終わった柊さんが布団にはいってきて、私を抱きしめると額に口づけをする。
「何もされなかったのか?」
「あっちで?うん。そうね。されそうになったけれど……。」
彼の腕に力が入る。怒りがこみ上げてきているのかもしれない。
「でも邪魔が入って何もされなかったわ。」
「そうか。」
「柊。捕まえていてね。あっちに行けば、あなたよりも茅さんといることの方が多いかもしれないから。」
「あぁ。あいつは人妻キラーだったからな。」
「そうだったの?」
「お前が人妻になれば、さらに手を出してくるかもしれないな。何かあったらすぐに教えてくれ。」
「うん。」
肝心なことは言えない。彼を幻滅させるから。私は上を見て、彼の唇に唇を軽く重ねた。
「いいよ。また返しに行くから。」
竹彦はそういって帰って行った。きっと話をしていた時間はそれほど長い時間じゃない。
「コーヒーがこんなところで役に立つとはな。」
「そうね。」
私たちはそういってアパートの方に歩いていく。
「あいつはこれからが大変だろう。」
「どうして?」
「ヤクザの組の中に入っていなかったとは言え、手を切るのにはさらに大変なんだ。主に金だがな。」
「お金?」
「慈善事業でヤクザも椿を育ててるわけじゃない。育ててもらった「お礼」と「手切れ金」が必要になる。それからある年数は関係者だったと、レッテルを貼られる。周りの目もあるだろう。」
「それは……この間お葬式の時に聞いた。」
お葬式の時「柄が悪い」とか「体裁が良くない」とか言っている人の話を聞いた。彼がそれを耳にしているのかわからない。今から彼はその声にぶつかっていかなければいけないのだろう。
そしてそれは彼の身内にも影響する。
「……心配か?」
「そうね。同級生としてね。」
「妬けるな。」
「つまんないことで妬かないで。」
それよりももっと別のことで妬いて欲しい。
だけど、私は彼に妬かれるような人間じゃない。数時間前だ。たった数時間前、私は茅さんに抱かれた。罪の意識がないわけじゃない。柊さんが式をしたいとお金を稼いでいるときに、私は別の男の前で股を開いていたのだ。
「どうした。表情が暗いな。」
「……今日、帰ってくるとき……。」
思わず言いそうになった。だけど言えるわけがない。
「菊音さんが社長の所へ行くところを見たわ。」
「社長?あぁ。蓬さんの兄と言っていたか。」
「ヒジカタコーヒーは高杉組と深く繋がっている。そこへ菊音さんがいるのがおかしいと思ったの。」
「……なるほど。やはりユダは菊音というわけか。」
彼はそういうと私の手を握る。足を止めると、彼は私の手に唇を寄せた。
「後は、蓬に任せよう。俺たちが出来るのはここまでだ。」
「そうね。」
「今度の日曜日は今度こそ物件を見に行こう。春先だから、もう少し早めに見ておけば良かったがな。」
後は自分たちのことを考えればいい。彼はそう言ってくれているようだった。
「菊音がねぇ。」
柊さんがお風呂に入っている間、茅さんは向かいのソファで私の話をずっと聞いていた。
「確かに昔から掴めねぇヤツだと思ってたけどな。高杉組と繋がりがあったのか。」
「そんなことをして何のメリットがあるの?」
お茶を飲みながら私は茅さんに聞いた。
「基本、ヤクザってのは組から金は出ねぇんだ。上納金っていう形で、ヤクザが上のヤツに納める金ばっか。でもネームバリューがあって、さらにコネがあればいくらでも金は集めることが出来る。」
「そんなものなの?」
「薬、詐欺、女をソープに落としたり、売ったり、まぁ、稼ぐ方法はいくらでもあるけどな。」
絶句するような世界だ。淡々と話すけどすごい世界だな。
「でもたぶんそれだけのことをしてんだ。菊音は高杉組からたぶん金をもらってたんじゃねぇのか。」
「でもそんなことをして何のメリットがあるの?」
「高杉組にか?あるさ。」
煙草を消して彼はいう。
「坂本組は大本の坂本組があってそこの傘下だけど、その中でも蓬さんの所は、割と大きいものになりつつある。そこを高杉組にしちまえば、また力と金とかが流れ込んでくる。だから必要なんだよ。この国にどんだけのヤクザの組があると思ってんだ。そいつらよりも強い力が欲しいに決まってんじゃねぇか。力と金だからな。奴らの世界は。」
そんなものドブにでも捨ててくればいいのに。わけわかんない世界だ。
「何を話しているんだ。」
柊さんがタオルで髪を拭きながら、お風呂で髪を拭きながら上がってきた。
「変なことを教えてねぇよ。聞きてぇっていうから。」
「……桜。これからはそんな世界には縁がないようになる。気にするな。」
「そうね。ない方がいいわ。」
そう言うと彼は私の頭に手を置いた。
「明日も早えし、俺寝るわ。」
「そうね。私たちも寝ましょうか。」
お風呂上がりの柊さんの腕に捕まると、いい香りがした。石鹸の匂いだ。
「はー。相変わらずだな。お前等、今日スるなよ。」
「わかってる。じゃあな。」
腕から手を離すと、柊さんは部屋に戻る。その後を追うように私も部屋へ向かう。すると茅さんはこちらを見て、口元だけで笑った。その笑いに意味があるように。
布団にはいると、さっきまで布団に吸い込まれそうなくらい眠かったのに今は眠れなかった。
髪を乾かし終わった柊さんが布団にはいってきて、私を抱きしめると額に口づけをする。
「何もされなかったのか?」
「あっちで?うん。そうね。されそうになったけれど……。」
彼の腕に力が入る。怒りがこみ上げてきているのかもしれない。
「でも邪魔が入って何もされなかったわ。」
「そうか。」
「柊。捕まえていてね。あっちに行けば、あなたよりも茅さんといることの方が多いかもしれないから。」
「あぁ。あいつは人妻キラーだったからな。」
「そうだったの?」
「お前が人妻になれば、さらに手を出してくるかもしれないな。何かあったらすぐに教えてくれ。」
「うん。」
肝心なことは言えない。彼を幻滅させるから。私は上を見て、彼の唇に唇を軽く重ねた。
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