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情事 の 嫉妬
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上品な薄味の椀物。季節の野菜の炊き上げ。上品に盛られた刺身。日本酒は飲み慣れていないせいか、頬が赤くなるようだった。
しかし目の前の桐彦さんは顔色一つ変えず酒を飲んでいた。やはり強いんだな。
でも何だろう。味気のない食事だ。
そんなにショックだったの?息吹に家族があったことが。私と寝たのは、ただの行為だったのかもしれないってことが。
確かに私も、彼も「愛している」とか「好き」とか言わなかった。ただくっついていたい。触れいていたいという感情だけだった。まるで獣だ。
その間には「愛」なんてモノはなかった。
料亭を出ると、いつものように黒塗りの車に乗り込んだ。もう夜も更けている。いつもだったら、お風呂に入ってビールを飲んで……そんな時間だった。
「六花。ワタシの部屋で酒を飲み直すぞ。」
それがどんな意味なのか知らない訳じゃない。恥ずかしがっているわけじゃないのだ。
「……はい。」
これでいいのかもしれない。息吹には帰るべき家族がいて、私には桐彦さんがいる。記憶をなくす前、きっとこれが自然の形だったのだ。
「素直だな。」
「……抵抗しても連れて行くのでしょう?」
その言葉に、彼は笑っていた。
流れる景色が、早い。彼が早くホテルに着きたいのかもしれない。
ワインを注がれて、それを飲んでいる。
目の前には桐彦さんは電話がかかってベッドルームへ行ってしまった。何か私には言えない話をしているのかもしれないが、その話に私が首を突っ込んでもしょうがない。
やがてベッドルームから桐彦さんが戻ってきた。彼はたったままワインを一口飲むと、テレビの電源を入れた。そこに写ったのはくだらないお笑い番組だった。
またボタンを押すと、今度は真っ暗な画面になる。そして次に映し出されたのは、荒い画像だが二人の男と女のようだった。裸になり、どうやらセックスをしているようだ。
「何を見せてるんですか。」
「よく見ろ。」
男の声に聞き覚えがあった。そして女の声も。
「……。」
一気に酔いが醒めたような気がした。
「どこで……これを?」
「よく写っているな。最近の盗撮機は。」
「消してください。」
それは私と息吹の映像だった。角度からして、おそらくあの喪服に付いていたのだろう。
「消す?どうしてだ。」
「こんな映像残しておくようなものではないから……。」
「違うだろう。」
すると彼はソファに座っている私の前にたった。そして腰を屈め、私の視線と合わせる。
「後ろめたさじゃないのか。」
「……。」
「お前にはワタシがいる。息吹には妻がいる。もっともそれはさっき知ったのかもしれないが……。この時点でもお前も息吹も、ワタシが何なのか知っていたはずだ。だから後ろめたいと思っていたのだろう。」
「……私……。」
あなたと好きで夫婦になっているわけじゃないんだろう。それを言いたかったけれど、言えるわけがなかった。
「奴とのずいぶんセックスは気持ちよかったようだな。」
「そんな言い方はやめてください。」
「事実だろう。息吹もずいぶんお前の具合がいいようだな。こんな表情は初めて見る。」
相変わらずテレビの画面に私たちの映像が流れている。
「もういいから……消してください。」
すると彼はそのテレビの画面を消した。そして再び私に近づく。
「言っておくが、ワタシは嫉妬などしない。お前も息吹以外にもセックスをした相手がいるのも知っているし。」
「……昔のことです。」
「マグロと言われていたな。」
「……。」
確かにセックスをして気持ちいいと思えることはなかった。ただの肉と、ただの穴。そうとしか思えなかった。だけど息吹とは違った。
離れたくない。もっとくっついっていたい。その感情が私を会館におぼれさせた。そう思える。
不意に、彼が私の唇にキスをした。もう抵抗はしなかった。抵抗しても無駄だ。
息をつけれないほど激しいキスの後、私は抱き抱えられた。
「シャワー浴びたい。」
「後でな。」
ベッドルームに連れ込まれ、その大きくふかふかのベッドに投げ込まれた。
その私の上に桐彦さんがのしかかり、また唇に触れた。そしてブラウスのボタンをはずしていく。
「どの女よりも綺麗だな。」
普段の桐彦さんなら絶対言わない台詞だろう。女性ならきっと嬉しいと思うのだろうが、今の私に話にも響かなかった。
だけど体は悲しいくらい反応する。
責められているその部位一つ一つが悲鳴を上げるように、赤く染まっていく。
お互いに裸になり改めて一つになったとき、私はついに声を上げてしまった。それがどうしても息吹にとって裏切りになっていると思いながら。
それでも私はその快感に逆らうことは出来なかった。
「どの女よりも具合がいい。昔と変わらないな。」
広いバスタブに、お湯をためて二人で浸かっていた。私は桐彦さんに抱き抱えられるようにして、湯船に浸かっている。
「わからないわ。私……こんなになったのは初めてで……。」
結局私はすこし気絶していたようで、気がついたら湯船に浸かっていたのだ。
「人間ではお前の良さがわからなかったようだな。」
「……そんな……モノなんですか。」
魔物だから、だから息吹ともこんなに乱れてしまったのか。
違う。違う。何かが違う。
すると彼の手が私の胸に触れてきた。唇も首筋に這ってくる。
「桐彦さん……こんなところで……。」
「何回でもしたい。」
敏感になっているそれを、弄ぶように彼は私を味わっていた。
しかし目の前の桐彦さんは顔色一つ変えず酒を飲んでいた。やはり強いんだな。
でも何だろう。味気のない食事だ。
そんなにショックだったの?息吹に家族があったことが。私と寝たのは、ただの行為だったのかもしれないってことが。
確かに私も、彼も「愛している」とか「好き」とか言わなかった。ただくっついていたい。触れいていたいという感情だけだった。まるで獣だ。
その間には「愛」なんてモノはなかった。
料亭を出ると、いつものように黒塗りの車に乗り込んだ。もう夜も更けている。いつもだったら、お風呂に入ってビールを飲んで……そんな時間だった。
「六花。ワタシの部屋で酒を飲み直すぞ。」
それがどんな意味なのか知らない訳じゃない。恥ずかしがっているわけじゃないのだ。
「……はい。」
これでいいのかもしれない。息吹には帰るべき家族がいて、私には桐彦さんがいる。記憶をなくす前、きっとこれが自然の形だったのだ。
「素直だな。」
「……抵抗しても連れて行くのでしょう?」
その言葉に、彼は笑っていた。
流れる景色が、早い。彼が早くホテルに着きたいのかもしれない。
ワインを注がれて、それを飲んでいる。
目の前には桐彦さんは電話がかかってベッドルームへ行ってしまった。何か私には言えない話をしているのかもしれないが、その話に私が首を突っ込んでもしょうがない。
やがてベッドルームから桐彦さんが戻ってきた。彼はたったままワインを一口飲むと、テレビの電源を入れた。そこに写ったのはくだらないお笑い番組だった。
またボタンを押すと、今度は真っ暗な画面になる。そして次に映し出されたのは、荒い画像だが二人の男と女のようだった。裸になり、どうやらセックスをしているようだ。
「何を見せてるんですか。」
「よく見ろ。」
男の声に聞き覚えがあった。そして女の声も。
「……。」
一気に酔いが醒めたような気がした。
「どこで……これを?」
「よく写っているな。最近の盗撮機は。」
「消してください。」
それは私と息吹の映像だった。角度からして、おそらくあの喪服に付いていたのだろう。
「消す?どうしてだ。」
「こんな映像残しておくようなものではないから……。」
「違うだろう。」
すると彼はソファに座っている私の前にたった。そして腰を屈め、私の視線と合わせる。
「後ろめたさじゃないのか。」
「……。」
「お前にはワタシがいる。息吹には妻がいる。もっともそれはさっき知ったのかもしれないが……。この時点でもお前も息吹も、ワタシが何なのか知っていたはずだ。だから後ろめたいと思っていたのだろう。」
「……私……。」
あなたと好きで夫婦になっているわけじゃないんだろう。それを言いたかったけれど、言えるわけがなかった。
「奴とのずいぶんセックスは気持ちよかったようだな。」
「そんな言い方はやめてください。」
「事実だろう。息吹もずいぶんお前の具合がいいようだな。こんな表情は初めて見る。」
相変わらずテレビの画面に私たちの映像が流れている。
「もういいから……消してください。」
すると彼はそのテレビの画面を消した。そして再び私に近づく。
「言っておくが、ワタシは嫉妬などしない。お前も息吹以外にもセックスをした相手がいるのも知っているし。」
「……昔のことです。」
「マグロと言われていたな。」
「……。」
確かにセックスをして気持ちいいと思えることはなかった。ただの肉と、ただの穴。そうとしか思えなかった。だけど息吹とは違った。
離れたくない。もっとくっついっていたい。その感情が私を会館におぼれさせた。そう思える。
不意に、彼が私の唇にキスをした。もう抵抗はしなかった。抵抗しても無駄だ。
息をつけれないほど激しいキスの後、私は抱き抱えられた。
「シャワー浴びたい。」
「後でな。」
ベッドルームに連れ込まれ、その大きくふかふかのベッドに投げ込まれた。
その私の上に桐彦さんがのしかかり、また唇に触れた。そしてブラウスのボタンをはずしていく。
「どの女よりも綺麗だな。」
普段の桐彦さんなら絶対言わない台詞だろう。女性ならきっと嬉しいと思うのだろうが、今の私に話にも響かなかった。
だけど体は悲しいくらい反応する。
責められているその部位一つ一つが悲鳴を上げるように、赤く染まっていく。
お互いに裸になり改めて一つになったとき、私はついに声を上げてしまった。それがどうしても息吹にとって裏切りになっていると思いながら。
それでも私はその快感に逆らうことは出来なかった。
「どの女よりも具合がいい。昔と変わらないな。」
広いバスタブに、お湯をためて二人で浸かっていた。私は桐彦さんに抱き抱えられるようにして、湯船に浸かっている。
「わからないわ。私……こんなになったのは初めてで……。」
結局私はすこし気絶していたようで、気がついたら湯船に浸かっていたのだ。
「人間ではお前の良さがわからなかったようだな。」
「……そんな……モノなんですか。」
魔物だから、だから息吹ともこんなに乱れてしまったのか。
違う。違う。何かが違う。
すると彼の手が私の胸に触れてきた。唇も首筋に這ってくる。
「桐彦さん……こんなところで……。」
「何回でもしたい。」
敏感になっているそれを、弄ぶように彼は私を味わっていた。
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