夏から始まる

神崎

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真実

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 義母がいなくなった家に、武生がここに寄りつかない理由はない。武生は今日も夕方ほどになり家に帰ってきた。
「ただいま。」
 するといつも迎えてくれる孝子という家政婦ではなく、省吾の嫁である日向子が迎えてくれた。
「お帰りなさい。」
「あれ?省吾兄さんが帰ってきているの?」
「えぇ。実は、お母様があぁいうことになってしまったので、省吾さんに帰ってきて欲しいとお父様自らおっしゃったようですよ。」
「ここに帰ってくるんですか?」
「えぇ。明日荷物を運びますわ。」
「子供たちは転校するんですか?」
 靴を脱ぎながら日向子に聞くと、日向子は笑顔のまま言った。
「元々私立ですからね。迎えにやってましたし。住所の変更はしますけどね。」
 日向子は省吾の嫁とは思えないほど若々しい。日向子は村上組の傘下の娘であるため、幼い頃からこの家に顔を出すことが多かった。そのため省吾ともいつも顔を合わせていて、小さな頃は小さなことで喧嘩をしたり言い合いをしていたようだが、今はヤクザの嫁としてのつとめをしっかりしている。
 省吾もそれで助かっているところもあり、頭はあがらないようだ。
「で、その省吾兄さんは?」
「圭吾さんのところへ行ってますね。」
「圭吾兄さんのところ?」
「圭吾さんは明日から出張だそうですよ。その打ち合わせだそうです。」
 出張というと普通の企業のようだが、用は他の町でイベントや祭りがあったときの監視をしに行くのだ。ともあればみかじめ料として、ある程度の資金源になる。
「武生さん。食事ができてますよ。子供たちも今からですから、食べますか。」
「えぇ。特に食べてきてないんで。」
「良かった。だったら用意します。」
 義母は家の中ではいつも和服だった。外で会うときは胸の大きく開いたワンピースなんかを着ていたみたいだが、それがいつも恥ずかしいと思ってた。
 だが日向子は違う。見た目は普通のお嬢さんだ。ふわっとした膝丈のスカートや水色のTシャツはどこにでもいる女の人に見える。
 菊子のようにシャープな人ではないが、どこか女性らしい柔らかな印象があった。

 子供たちは武生の弟である陽生と仲がいい。関係は叔父になるのかもしれないが、陽生の方が少し年下だ。特に女の子は陽生の面倒を見たがっているのかもしれない。
 武生はハンバーグを食べながらそう思っていた。
「ねぇ。武生さんは大学へ行くそうですね。」
 日向子に声をかけられて、一瞬箸が止まった。
「えぇ。外国語大学へ行きたいんです。」
「良いですね。あたしも、短大では外国語を専攻していたんですよ。」
 日向子はそういって陽生の口を拭って上げた。
「外国へ行きたかったんですか?」
「えぇ、昔はね。外国語を専攻しながら、農業も勉強してましたよ。」
「農業?」
「えぇ。砂漠で緑が育たないかって、夢みたいなことを思ってましたよ。」
 ふっと笑うその顔が、似ていないのに何故か知加子を思い出させた。知加子も外国へ行き、女性の地位の低さ、そしてその女性が紡ぎ出す布、貴金属などをこの国に伝えようとしていたと、表向きにはそういっていた。
 だが裏向きには、この国で認められていない薬の受け渡しをしていた。そうでなければ、しょっちゅう外国なんかに行けない。だがやっていることは犯罪だ。
「……武生君?」
 箸が止まっているのを見て、陽生が声をかけた。
「ん?」
「ハンバーグ美味しいね。お母さんが作るのも美味しいけど、日向子ちゃんが作るの、幼稚園のハンバーグに似てる。」
「あら。そう?そんなに美味しいかしら。」
「甘いね。」
 子供向けにソースを甘くしているらしい。そうすれば子供は進んで食事をする。集中力のない子供を考えた日向子らしい優しさだった。
 義母ではそうはいかない。

 食事のあと風呂に入っていても、どこか知加子を思い出す。おそらく日向子とこんな話をしたからだろう。
「……。」
 湯船で顔を洗い、武生は風呂から上がる。そしてジャージとTシャツに袖を通し、キッチンへ行ってお茶を飲んでからもう少し勉強をしようとしていたときだった。
「あっ……。こんなところで……。」
 キッチンをのぞき見ると、日向子と誰かがいた。よく見るとそれは省吾の姿だった。
 シャツをまくり上げられた日向子は、体に似合わない大きな胸をはだけさせ、その乳首を省吾の指でいじられていた。
「こんなに立てさせて、誰か来るかもしれないと思って興奮しているのか。」
「そんなこと……。んっ……先っぽが……。」
「ここ好きだもんな。日向子。ほら。こっち見て。」
 背中を向けていた日向子は、省吾の方をみる。すると音を立ててキスをした。わざとそうしているのだろうか。
 しかし武生はその光景から目を離すことができなかった。知加子が捕まって以来、武生は誰とも寝ていない。当然、精が溜まっているのだろう。気が付けば、自分の下が堅くなっているのに気が付いた。
 スカートを脱がせないまま、下着を撮られた日向子はさっきまで食事をしていたテーブルの上に座らされる。そして省吾の方を向いて足を広げた。
「すげぇ。もうどろどろだな。ガキを二人産んだ割には、綺麗なマ○コしてるし。それにこんなになってんの、誰かに見られてるかもしれないって思ってんのか。」
「や……。省吾さん。そんなに見ないで。」
「見ないでっていう割には、見る度に垂れてきた。ほら。」
 省吾の指が日向子の性器をいじる。そのたびにぐちゃぐちゃという卑猥な音がした。
「あっ……。」
「クリ、ビンビン。ここも好きだもんな。」
「だめ……省吾さん。あっ……そんなに早くしたら……イく。イっちゃうから。」
 激しくなる水の音。足や太股につたう愛液。そして日向子はびくっと体をふるわせた。
 その様子を見て武生は、キッチンへ行くことをあきらめて自室に戻る。そしてベッドに腰掛けた。
「……。」
 日向子に欲情したことはない。日向子は、男ばかりの兄弟の中で面倒見のいい母というよりは姉のようだと武生は思っていた。
 だが今日の日向子は女だった。大人しそうな顔をして、どん欲に省吾を求めている。
 気が付けば武生はジャージ越しで自分の性器に触れていた。もう堅くなっている。もどかしいようにジャージと下着をずらし、直接そこに触れた。
「あっ……。」
 思うのは日向子ではない。もう手の届かない知加子の姿。入れ込む度に喘ぐ顔。動く度に震える胸。武生を呼ぶ声。温もり。すべてがまだリアルに残っている。
「んっ……。」
 危機一髪のところでぎりぎりティッシュで押さえ込んだ。
 知加子に会いたかった。忘れるために勉強に打ち込んでいたのに、我慢していたことがあふれそうになる。
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