49 / 49
冬
12
しおりを挟む
まだ寒い春先のことだった。
それぞれの行き先から、一時的に戻ってきた四人は解体される「シーサイド」を見ていた。
解体されるのはあっという間だった。
朝から始まり、昼頃にはがれきだけになる。
破壊は再生の始まりである。誰かが言ったことだ。
たぶんこの土地は売られ、買い手が着けば新しい建物が建つだろう。それはきっと私たちの知らない誰かだった。
これから楓はここから南の土地へ行く。
そこである雑誌社の編集長になるのだ。
「シーサイドのメンツは恵まれてたよ。本当に。実感する。」
よっぽど苦労しているのだろうか。
光は本社に戻った。担当雑誌は十八歳未満は手に取れない雑誌らしい。
「元々そんな仕事をしてたもの。嫌々だったけどね。だけどちょっとでも知っていれば、彼女たちの気持ちに寄り添えるわ。本心を聞くことが出来るの。」
風俗ライターにでもなるつもりなのだろうか。
律は本来なりたかった世界を渡り歩きながらの、カメラマンになった。人物は苦手だと言って、自然のモノばかりを撮っていた。それ破棄の遠くなるような時間を待たないといけないモノもあり、気の短い彼には会っていないように見える。
「待たないといい写真は撮れない。上田登がしていたように、俺もそうしてみる。」
私は律について行くと光にも楓にも言っていた。しかし実際はこの国にいる。
刺された手の神経はうまく繋がっていなかった。左手の薬指と小指がうまく動かない。そのリハビリをしながら、律の紹介でウェブデザイナーの端くれになっていた。
いずれ手が動くようになったら、律について行く。その気持ちは変わらなかった。
いつになるかわからない。一年かかるか、二年かかるか。その間に律に何が起きてもおかしくはない。
だけど彼と一緒にいるだろう。未来なんて見えないけれど、断言する。それが明るい未来なのだから。
彼が写真を撮り、その隣で私が絵を描く。その風景が見えるから。
そして私たちは再び別れる。海の見えるこの町から立ち去るのだ。
「またね。」
誰もさようならとは言わない。
きっと生きていればまた会えるから。
それぞれの行き先から、一時的に戻ってきた四人は解体される「シーサイド」を見ていた。
解体されるのはあっという間だった。
朝から始まり、昼頃にはがれきだけになる。
破壊は再生の始まりである。誰かが言ったことだ。
たぶんこの土地は売られ、買い手が着けば新しい建物が建つだろう。それはきっと私たちの知らない誰かだった。
これから楓はここから南の土地へ行く。
そこである雑誌社の編集長になるのだ。
「シーサイドのメンツは恵まれてたよ。本当に。実感する。」
よっぽど苦労しているのだろうか。
光は本社に戻った。担当雑誌は十八歳未満は手に取れない雑誌らしい。
「元々そんな仕事をしてたもの。嫌々だったけどね。だけどちょっとでも知っていれば、彼女たちの気持ちに寄り添えるわ。本心を聞くことが出来るの。」
風俗ライターにでもなるつもりなのだろうか。
律は本来なりたかった世界を渡り歩きながらの、カメラマンになった。人物は苦手だと言って、自然のモノばかりを撮っていた。それ破棄の遠くなるような時間を待たないといけないモノもあり、気の短い彼には会っていないように見える。
「待たないといい写真は撮れない。上田登がしていたように、俺もそうしてみる。」
私は律について行くと光にも楓にも言っていた。しかし実際はこの国にいる。
刺された手の神経はうまく繋がっていなかった。左手の薬指と小指がうまく動かない。そのリハビリをしながら、律の紹介でウェブデザイナーの端くれになっていた。
いずれ手が動くようになったら、律について行く。その気持ちは変わらなかった。
いつになるかわからない。一年かかるか、二年かかるか。その間に律に何が起きてもおかしくはない。
だけど彼と一緒にいるだろう。未来なんて見えないけれど、断言する。それが明るい未来なのだから。
彼が写真を撮り、その隣で私が絵を描く。その風景が見えるから。
そして私たちは再び別れる。海の見えるこの町から立ち去るのだ。
「またね。」
誰もさようならとは言わない。
きっと生きていればまた会えるから。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる