古い家の一年間

神崎

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 まだ寒い春先のことだった。
 それぞれの行き先から、一時的に戻ってきた四人は解体される「シーサイド」を見ていた。
 解体されるのはあっという間だった。
 朝から始まり、昼頃にはがれきだけになる。
 破壊は再生の始まりである。誰かが言ったことだ。
 たぶんこの土地は売られ、買い手が着けば新しい建物が建つだろう。それはきっと私たちの知らない誰かだった。

 これから楓はここから南の土地へ行く。
 そこである雑誌社の編集長になるのだ。
「シーサイドのメンツは恵まれてたよ。本当に。実感する。」
 よっぽど苦労しているのだろうか。

 光は本社に戻った。担当雑誌は十八歳未満は手に取れない雑誌らしい。
「元々そんな仕事をしてたもの。嫌々だったけどね。だけどちょっとでも知っていれば、彼女たちの気持ちに寄り添えるわ。本心を聞くことが出来るの。」
 風俗ライターにでもなるつもりなのだろうか。

 律は本来なりたかった世界を渡り歩きながらの、カメラマンになった。人物は苦手だと言って、自然のモノばかりを撮っていた。それ破棄の遠くなるような時間を待たないといけないモノもあり、気の短い彼には会っていないように見える。
「待たないといい写真は撮れない。上田登がしていたように、俺もそうしてみる。」

 私は律について行くと光にも楓にも言っていた。しかし実際はこの国にいる。
 刺された手の神経はうまく繋がっていなかった。左手の薬指と小指がうまく動かない。そのリハビリをしながら、律の紹介でウェブデザイナーの端くれになっていた。
 いずれ手が動くようになったら、律について行く。その気持ちは変わらなかった。
 いつになるかわからない。一年かかるか、二年かかるか。その間に律に何が起きてもおかしくはない。
 だけど彼と一緒にいるだろう。未来なんて見えないけれど、断言する。それが明るい未来なのだから。
 彼が写真を撮り、その隣で私が絵を描く。その風景が見えるから。

 そして私たちは再び別れる。海の見えるこの町から立ち去るのだ。
「またね。」

 誰もさようならとは言わない。
 きっと生きていればまた会えるから。
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