王道くんと、俺。

葉津緒

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第六章

ノアの短い説明を聞いた途端、優ちゃんは真っ青になり慌てふためきだす。今にも泣きそうなその顔を目にしたら……逆に俺のほうが少し落ち着いてきたかも。

いつの間にか詰めていた息を、ふうう、と大きく吐き出してみる。うん、大丈夫。


「怪我、は多分そんなに問題ないと思う。えっと、擦り傷くらいはあるかもだけど。ノアが助けてくれたから……その、ほんの少し触られたくらいで……最後まではされてない、よ?」

「えっ、あ」

「でも郁人ぷるぷる仔鹿みたいになって動けなくなってた。俺が担いで温室まで運んだあと、休憩室のシャワーを使ってもらって、汚れた制服はジャージに着替えてもらった」

「そ、そうか。そういう理由か。わかった、郁人を助けてくれてありが――コホン。郁人様を助けてくださってありがとうございます会計様」

「ノア、でいいよ『優ちゃん』」

「はい?」

「敬語や親衛隊ぶりっ子もしなくて大丈夫。『優ちゃん』のことは、いつも郁人に聞いて知ってるから。ね、郁人」


そう言ってノアがくすりと笑う。
一瞬唖然とした優ちゃんは、やがて真っ赤になり


「郁人てめ、何勝手に人のことバラしてやがる。ふざけんなよ、ずっと演技してた俺が一人だけアホみたいじゃねーか。しかも途中、完っ全に素が出ちまってたけどな! くそっ」


と恥ずかしそうに頭を抱えてしゃがみ込んじゃった。
それを見たノアはさらに楽しそうに笑ってる。

うんうん。
二人が仲良くなりそうで俺も嬉しいです。

――が、それはさておき。
あの、とりあえず俺そろそろ正座やめても良いかなぁ。痺れすぎちゃって痛みどころか、すでに足の感覚がまったく無いのですがあぁッ(涙)



 ***



「優馬さんの指示通り、晴巳さん(※第二保健室)から着替え用の制服とタオルとドライヤー借りてきました。郁人さん、大丈夫っスか!」

「無事か郁人!?」

「……祥ちゃんに、りっちゃん先輩?」


正座解除のお許しが出てようやく足の感覚が戻ってきた頃。空き教室内に飛び込んできたのは、祥ちゃんと、りっちゃん先輩でした。
珍しい組み合わせだよね、お昼休みぶりー。
二人とも走ってきたのか額に汗かいてるし息も切れてる。あ。りっちゃん先輩、シルバーフレームの眼鏡がちょいズレてて外れそうだよ?


「ちっ、なんで呼んでもいねぇ風紀委員長様まで連れてきやがるんだ……まあいい。祥太郎、一応ご苦労。おら郁人、髪乾かしてやるからさっさと着替えて晴巳さんとこ行くぞ。風紀委員長様は、あー。見ての通り立て込んでますので少々お待ちください」


りっちゃん先輩が少しだけ目を見開いた。
優ちゃんが適当~に猫を被ってるというか、実はノアに本性がバレてたと知って不貞腐れてまぁす。可愛いよねー、ぷぷっ。

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