王道くんと、俺。

葉津緒

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第六章

「俺、ちょうど風紀に用事があった。向こうで少し話してくる」

「は? 生徒会の会計がどうしてここにいるんだ。おい、引っ張るなッ」


いきなりノアが先輩の腕をつかんで教室の隅へと行っちゃいました。
え。ちょっと待って。
あの、人見知り気味なノアが積極的に近寄り、しかも相手の身体に触れただとぉ?
こ、これはもしや、実は以前から密かに先輩のことが好きだったりとかするのでは。風紀委員長×わんこ会計……ふおお!?


「郁人」

「な、何も考えてませんっ」


ひいいっ、優ちゃんには本当にすぐバレる俺の腐妄想。
や、やっぱり今は自重しとこ。
ドライヤーあったかくて気持ちいいなぁ。(※逃避)


「あのさぁ優ちゃん。髪乾かしてもらえるのは嬉しいけど別に俺、ジャージのままで良くない?」

「授業中でもねーのにお前が制服以外の姿で校内うろつくと目立つんだよ」

「えー、そうかなぁ?」

「去年それで騒ぎになったのを忘れんな。しかもそのダボッとしたジャージ姿は……
(よく見りゃ首元丸見えだし彼氏の服着た彼女みたいっつーか。特に今の妙な色気垂れ流し状態、かつ弱ったお前じゃ『どうぞ襲ってください』と、わざわざ宣伝するようなもんだろ。絶対に目撃したやつらのドエロ妄想かき立てちまうし、そしたらまた鼻血や気絶やなんやらで校内大騒ぎ&大惨事確定なんだよッ)」


うーん。
途中からブツブツ小声すぎてよく聞こえないや。
とりあえずダメみたいです。


「あ。郁人が着替えてるあいだは廊下に出てろよ、祥太郎」

「ええと、それは優馬さんや他の二人もってことですよね?」

「いや、俺は郁人が心配だからここにいる。あの二人は――。とりあえずお前の場合、興奮すると鼻血出すし」

「待ってください、なんですかそれ。俺だけ仲間外れってひどくないですか。郁人さんが心配なのは俺も同じっすよ。もちろん着替えてるあいだは背中向けて目も閉じてますから俺もここにいていいッスよね郁人さん、ぶほおっ!?」

「ん? うわぁ、祥ちゃん鼻血が」


皆を待たせるのも嫌なのでさっさとジャージを脱いだんだけど。
こっちを振り向いた祥ちゃんが、突然鼻血を出しました。


「だから言ったじゃねーか! アホか!?」

(お前、最近やっと郁人の色香にほんの少し慣れてきた程度だろうが。背中向けようが目閉じようが衣擦れの音だけで興奮するし、耳栓したところで逆に妄想を膨らませて結局鼻血を流すんだろ。いちいち掃除するのも面倒だし、それならいっそ最初から大人しく外で待機しとけよ、という俺の配慮を無駄にしやがってこの野郎ッ)
※優馬、心の叫び。


「……っ!」


最近はあまり見なかったけど、祥ちゃんって、たまーに鼻血出すんだよね。
喧嘩っ早いし血の気が多いのかな。
そしてなぜか優ちゃんが怒り出す、みたいなちょっとしたじゃれ合いもあったり。
きっと優ちゃんは可愛い後輩の祥ちゃんを心配してるんだろうけど、照れ隠しでつい怒ってるふりを……むふん♪


「郁人」

「ふあいッ」


うぐっ、またもや俺の腐妄想が見破られましたぁ。
さすがは俺の優ちゃん。疲れたような、呆れたような顔してますけども。あ、視線そらされた。
「もういーから早く服を着ろ」と大きなため息まで吐かれました。……ごめんなさい。

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