王道くんと、俺。

葉津緒

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第三章

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「ふぅん。けど単なる憶測だろ。もし噂が本当なら郁人は風紀委員の監視対象、要注意人物だよな?」

「……」


お、目が泳いだ。
まあほんの僅かに、程度だが。


「否定はしません。最初は俺も監視のつもりで接していましたから。去年、性的暴行を受けかけた生徒を郁人が助けた際に俺も現場に居合わせ、その時初めて面識を持ったのですが」

「は? おい待て何の話だ、それ」

「ご存知ないのですか。昨年学園内で起きた性的暴行未遂のうち、かなりの件数を郁人が押さえてますよ」

「……何やってんだアイツ」


犯されかけてる奴を助けに行って、逆に自分がヤられたらどうする気だ。
向こうにしてみりゃ鴨葱じゃねーか。
いくら優馬に護身術を叩き込まれ、ある程度強かろうが薬でも使われたらアウトだろ。

猫被り親衛隊長は知ってんのか?
いや、知ってたらそんな危険な真似をさせる筈もねーか。
全く……何の為に郁人の傍にくっついてんだ、優馬の奴。これでもし郁人が襲われてまた傷つくことにでもなれば、わざわざお前らが揃って学園に来た意味自体、無くなっちまうんだろ?

まあ、俺が言うのもアレだけど。

さっきも郁人を呼び出せばもれなく優馬が来ると知ってて、からかい半分・脅し半分に手を出すふりをした訳だが。
尤もあいつらが来なけりゃ別に、何なら最後までヤったって俺は構わ――いや、本気で未成年のガキなんぞに手ぇ出すほど暇じゃないっつーか、相手には困ってねぇから。
……あーくそっ、その筈の俺が何やってんだかな。

それよか郁人の奴、俺が相手だからって幾ら何でも油断し過ぎだろ。
襲われてる最中も緩い抵抗しかして来ねーし。
あんなんで本当にこれからも大丈夫なのかよ。



「ともかく俺が言いたいことは先程の通りです。先生の呼び出しを耳にした者達が良からぬことを考え、資料準備室の近くに潜んでいるところを風紀委員ら数十名で排除しました」

「へー。そいつはお疲れさん」


俺は呼び出し場所すら言ってない筈だけど、スゲーな。


「風紀委員にとって現在、郁人は危険人物としての監視対象ではありません。だが事件に巻き込まれる可能性が非常に高い、特別保護対象者として認識されています。故に本人にはなるべく気付かれないよう、我々に出来る範囲内で見守っているところです」

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