転生したら✕✕が無かった

葉津緒

文字の大きさ
1 / 14
【1】町外れの三人

しおりを挟む
物心がついた頃から何となく変だなぁとは思ってたんだけど。
多分ここ、異世界だ。そして僕は異世界に転生したらしい。

前世の記憶によると女だった僕はこの世界で男に生まれ変わったようだ。
それは別に構わない。成長するにつれてどんどん前世の記憶は薄れていってるし、今は男の自分にもすっかり馴染んだから。
問題なのは性別よりも種族で、何故かというと。


「え? うちの子には触手が無いですって、そんなまさか!」

「なんて事だ、そんな奇形では結婚もできない。ああ、かわいそうに」

「可愛い孫がそんな恐ろしい障害を持った体で生まれてしまうなんて、まさか誰かに呪いをかけられでもしたんじゃ」

「ねえ、弟はこれからどうなるの?」


お医者さまから僕の体についての診断結果を聞かされ、心から嘆き悲しむ僕の家族たち。
その全員が体の一部に『触手』を持っているのに、僕には無い。
男なら大小問わず必ず生えている筈の場所に影も形も見当たらないのだ。

前世ならそれが当たり前、むしろある方が異常なんだけど。
ここは異世界で、一見すると普通の人間なのに実は周りには触手人間しかいなかった。
その中で僕だけが触手を持たないからって、変ちくりんな身体障害者扱い……。

やがてあっという間に噂が広まり常に奇異の目で見られちゃうし、女の子からは気持ち悪がられて避けられる日々。
せっかく男に生まれても、女の子とホニャララする機会は多分一生来ない気がするよ。



 ***



触手人間にとっての魅力とは、顔や体の美しさではなく触手の良し悪しが全てだ。
触手は生えている数がより多い方が良いとされ、長さや太さ、器用さなども重要らしい。
男は睾丸の下あたりからニョロニョロ生えているし、女は膣の中からニョロニョロ見えるそうだ。……怖い。

僕にはそのどちらも無いから、すごく滑稽な姿に見えるのだろう。

だから


「ぎゃははは、見ろよこいつの股間、何も生えてねーぞ」

「うっわ、悲惨すぎる。死ぬまで童貞決定じゃん」

「マジで一本も触手が無いんだ。すげーな」


年頃になった最近はやたらとこんな風に裸に剥かれてからかわれる事が多くなった。
今日の相手は、確か一つ年上の素行の悪い連中だ。
のんびり散歩していたら突然からまれて腕を掴まれ、無理やり町外れの空き家まで連れて来られた。多分こいつらのたまり場なんだと思う。


「は、離してください。家に帰して……ぼ、僕、用事が」

「うるせえな黙ってろ! 触手の無いてめーに用事なんかあるわけねーだろ!」

「ひっ、痛いッや、止めて」

「あーらら泣いちゃった。触手は無いわ腕力も根性も無いしで、お前本当に男ですかぁ?」

「やだぁ、嫌、怖いッ……ひぐっ!?」

「おおっ。ぎゃははは悪いなぁ、女と間違えて入っちった」


は、入ってる?
僕のお尻の中に相手のうちの一人の触手が突き刺さってるよ。嘘だ、何で。


「な、なに、嫌だっ、ひいっ、嫌ああぁ!?」


何か粘液のようなものを纏った細い触手がニュルニュルと入り込む。痛みはほんの少しだけ。触手が麻酔のような成分を出して相手の痛覚を麻痺させるって本当だったんだ。でもそれって確か……。

.
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医

ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。 筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました

すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。 第二話「兄と呼べない理由」 セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。 第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。 躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。 そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。 第四話「誘惑」 セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。 愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。 第五話「月夜の口づけ」 セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

処理中です...