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【1】町外れの三人
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物心がついた頃から何となく変だなぁとは思ってたんだけど。
多分ここ、異世界だ。そして僕は異世界に転生したらしい。
前世の記憶によると女だった僕はこの世界で男に生まれ変わったようだ。
それは別に構わない。成長するにつれてどんどん前世の記憶は薄れていってるし、今は男の自分にもすっかり馴染んだから。
問題なのは性別よりも種族で、何故かというと。
「え? うちの子には触手が無いですって、そんなまさか!」
「なんて事だ、そんな奇形では結婚もできない。ああ、かわいそうに」
「可愛い孫がそんな恐ろしい障害を持った体で生まれてしまうなんて、まさか誰かに呪いをかけられでもしたんじゃ」
「ねえ、弟はこれからどうなるの?」
お医者さまから僕の体についての診断結果を聞かされ、心から嘆き悲しむ僕の家族たち。
その全員が体の一部に『触手』を持っているのに、僕には無い。
男なら大小問わず必ず生えている筈の場所に影も形も見当たらないのだ。
前世ならそれが当たり前、むしろある方が異常なんだけど。
ここは異世界で、一見すると普通の人間なのに実は周りには触手人間しかいなかった。
その中で僕だけが触手を持たないからって、変ちくりんな身体障害者扱い……。
やがてあっという間に噂が広まり常に奇異の目で見られちゃうし、女の子からは気持ち悪がられて避けられる日々。
せっかく男に生まれても、女の子とホニャララする機会は多分一生来ない気がするよ。
***
触手人間にとっての魅力とは、顔や体の美しさではなく触手の良し悪しが全てだ。
触手は生えている数がより多い方が良いとされ、長さや太さ、器用さなども重要らしい。
男は睾丸の下あたりからニョロニョロ生えているし、女は膣の中からニョロニョロ見えるそうだ。……怖い。
僕にはそのどちらも無いから、すごく滑稽な姿に見えるのだろう。
だから
「ぎゃははは、見ろよこいつの股間、何も生えてねーぞ」
「うっわ、悲惨すぎる。死ぬまで童貞決定じゃん」
「マジで一本も触手が無いんだ。すげーな」
年頃になった最近はやたらとこんな風に裸に剥かれてからかわれる事が多くなった。
今日の相手は、確か一つ年上の素行の悪い連中だ。
のんびり散歩していたら突然からまれて腕を掴まれ、無理やり町外れの空き家まで連れて来られた。多分こいつらのたまり場なんだと思う。
「は、離してください。家に帰して……ぼ、僕、用事が」
「うるせえな黙ってろ! 触手の無いてめーに用事なんかあるわけねーだろ!」
「ひっ、痛いッや、止めて」
「あーらら泣いちゃった。触手は無いわ腕力も根性も無いしで、お前本当に男ですかぁ?」
「やだぁ、嫌、怖いッ……ひぐっ!?」
「おおっ。ぎゃははは悪いなぁ、女と間違えて入っちった」
は、入ってる?
僕のお尻の中に相手のうちの一人の触手が突き刺さってるよ。嘘だ、何で。
「な、なに、嫌だっ、ひいっ、嫌ああぁ!?」
何か粘液のようなものを纏った細い触手がニュルニュルと入り込む。痛みはほんの少しだけ。触手が麻酔のような成分を出して相手の痛覚を麻痺させるって本当だったんだ。でもそれって確か……。
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多分ここ、異世界だ。そして僕は異世界に転生したらしい。
前世の記憶によると女だった僕はこの世界で男に生まれ変わったようだ。
それは別に構わない。成長するにつれてどんどん前世の記憶は薄れていってるし、今は男の自分にもすっかり馴染んだから。
問題なのは性別よりも種族で、何故かというと。
「え? うちの子には触手が無いですって、そんなまさか!」
「なんて事だ、そんな奇形では結婚もできない。ああ、かわいそうに」
「可愛い孫がそんな恐ろしい障害を持った体で生まれてしまうなんて、まさか誰かに呪いをかけられでもしたんじゃ」
「ねえ、弟はこれからどうなるの?」
お医者さまから僕の体についての診断結果を聞かされ、心から嘆き悲しむ僕の家族たち。
その全員が体の一部に『触手』を持っているのに、僕には無い。
男なら大小問わず必ず生えている筈の場所に影も形も見当たらないのだ。
前世ならそれが当たり前、むしろある方が異常なんだけど。
ここは異世界で、一見すると普通の人間なのに実は周りには触手人間しかいなかった。
その中で僕だけが触手を持たないからって、変ちくりんな身体障害者扱い……。
やがてあっという間に噂が広まり常に奇異の目で見られちゃうし、女の子からは気持ち悪がられて避けられる日々。
せっかく男に生まれても、女の子とホニャララする機会は多分一生来ない気がするよ。
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触手人間にとっての魅力とは、顔や体の美しさではなく触手の良し悪しが全てだ。
触手は生えている数がより多い方が良いとされ、長さや太さ、器用さなども重要らしい。
男は睾丸の下あたりからニョロニョロ生えているし、女は膣の中からニョロニョロ見えるそうだ。……怖い。
僕にはそのどちらも無いから、すごく滑稽な姿に見えるのだろう。
だから
「ぎゃははは、見ろよこいつの股間、何も生えてねーぞ」
「うっわ、悲惨すぎる。死ぬまで童貞決定じゃん」
「マジで一本も触手が無いんだ。すげーな」
年頃になった最近はやたらとこんな風に裸に剥かれてからかわれる事が多くなった。
今日の相手は、確か一つ年上の素行の悪い連中だ。
のんびり散歩していたら突然からまれて腕を掴まれ、無理やり町外れの空き家まで連れて来られた。多分こいつらのたまり場なんだと思う。
「は、離してください。家に帰して……ぼ、僕、用事が」
「うるせえな黙ってろ! 触手の無いてめーに用事なんかあるわけねーだろ!」
「ひっ、痛いッや、止めて」
「あーらら泣いちゃった。触手は無いわ腕力も根性も無いしで、お前本当に男ですかぁ?」
「やだぁ、嫌、怖いッ……ひぐっ!?」
「おおっ。ぎゃははは悪いなぁ、女と間違えて入っちった」
は、入ってる?
僕のお尻の中に相手のうちの一人の触手が突き刺さってるよ。嘘だ、何で。
「な、なに、嫌だっ、ひいっ、嫌ああぁ!?」
何か粘液のようなものを纏った細い触手がニュルニュルと入り込む。痛みはほんの少しだけ。触手が麻酔のような成分を出して相手の痛覚を麻痺させるって本当だったんだ。でもそれって確か……。
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