俺様世界

葉津緒

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序章―プロローグ―

* 異世界トリップ(?)直前 *

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 ……つまらねぇ。
 俺はいつもそう思っていた。

 子供の頃から裕福な家庭環境に育ち、容姿、頭脳、運動神経ともに恵まれ、欲しいものはいくらでも簡単に手に入る。世界を股にかけ幾つもの会社・グループ企業を持つ一族。次期後継者として将来を約束された俺は、未来に不安を抱く必要すらない。
 そんな何不自由のない人生だが、自分でも理由が分からないまま常に違和感を覚えていた。

 俺の居場所はここじゃない、と。

 高校生になり、燻るような苛立ちを紛らわすため、やりたくもない生徒会会長に就任。
 おかげで面倒な仕事をこなす毎日だ。
 全く誰だ、全寮制学園(男子校)の生徒会職を「抱きたい抱かれたいランキング」上位者から選出する、などと馬鹿げたことを考えた奴は。
 フン、抱かれたい「一位」に俺様が選ばれるのはまぁ当然だったがな。

 そんなとき、一人の編入生が学園へとやってきた。
 ボサ髪に分厚い瓶底、黒縁眼鏡。暗そうな外見に反してやたら反抗的で自己主張の激しい奴。しかも口の利き方一つ知らねぇ……要するに馬鹿だ。それも救いようのない。
 理由はよく分からねぇが、最初に奴を理事長室へ案内した副会長だけは

「あんな子、初めてです。彼は僕の太陽かもしれません」

 コイツ薬でもやってんじゃねーだろうな、と疑いたくなる発言をかましてくれやがったが。
 ああ、間違えた。
 副だけじゃなく他の生徒会役員たちも皆、いつのまにか奴に狂ってたわ。

「副会長のじゃないよー」
「僕たちだって大好きなんだからね」
「……渡さ、ない」

 顔を合わすと編入生の話ばかりで、四人の仕事は遅々として進まねぇ。
 あげく、いつのまにか生徒会室に奴を招き入れちまいやがった。

「なあ、会長って名前なんて言うんだ!?」
「お前には教えねー」 
「北條 玲王(ホウジョウ レオ)ですよ」 
「……チッ」

「玲王? カッコイイ名前だな! じゃあ俺、今からお前のこと玲王って呼ぶぞ。よろしくな、玲王!」
「うっせ誰に口利いてんだテメ」

「ねぇねぇ、会長なんかほっといて」
「僕たちとお菓子でも食べよーよ」
「わっ、お前ら離せよ。俺は玲王と遊びたいんだってば!」
「会長……ズル、イ」

 やってらんねーよ。
 アレのどこが良いというのやら、本気で理解に苦しむ。まさかあいつら全員ゲテモノ趣味だったとは。
 そんなある日、うっかり(なのか?)解けた奴の変装。その下には意外にも美形な姿が隠されていたが。

「可愛いー、どうして変装なんかしてるの?」
「素顔のほうが良いのにー」
「……可愛い。キレイ……!」
「眼鏡も伊達なんですね。なぜそんなカツラを?」
「いや、なんか理事長――叔父さんがコレつけろって言うから。な、なあ! 玲王はどっちの姿でいたほうが良いと思う?」

 なんで俺に聞く。知らねーよ。
 それよりコイツやっぱ理事長の血縁者か。
 苛つくんで家ごと潰してやろうかと考えていたのに、どーりで執事の片山が渋るわけだ。
 しかもわざわざこの俺に説教めいたことまでしやがって……脅しが通用しない相手だと分かった上で「玲王様は手を出さないでくださいね」ってことかよ。
 チッ、面倒臭ぇ。

「あっ、どこ行くんだよ玲王!?」
「お前には関係ない、退け」

 まとわりついてくる編入生を副会長たちのほうへ突き飛ばす。
 途端に全員ギャーギャー喚き始めたが、無視してそのまま生徒会室をあとにした。

 この俺様があんな奴のために「我慢」なんて胸糞悪ぃ真似ができるかよ。
 これ以上アイツを視界に入れたくねーし、話したくもない。今こうして考えていることさえ不愉快だ。
 ああ、苛々する。

 ――相手は誰でもいい。
 この怒りや苛つきそして破壊衝動、諸々を発散できるなら。
 俺様の親衛隊でもなんでも最初に目に入った奴をその場で押し倒し、ヤり殺してぇ。

 悶々と物騒な感情を抱く俺の前には(不思議なことに)誰一人現れず、気づけば学園の裏庭へと足を向けていた。

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