5 / 5
本編
3
しおりを挟む
「っん、う……」
え? な、何?
どうしてまたこんな。
いつのまに、魔物に口を塞がれてたの!?
「……っ……は、んん……ゃあ……」
早く逃げなきゃ、そう頭では分かっているのに息が苦しくて、くらくらする。
それに、なんだろう。さっきから頭も身体も凄く熱くて、ふわふわ……。
このままじゃ食い殺されるだけなのに。
「ぁん、……っ……ふ」
苦しい。
(気持ちいい)
熱い。
(なんだか、変)
助けて。
(もっと)
ああ、だめだ。混乱する僕の頭では、まともに考えることができない。
どこからか「チュ、クチュ」と水音が聞こえてくる。
だけど息苦しさと、心臓の音がドクドクうるさくてそれが遠いのか近いのかも分からない。
「や……ハァ、……っん……ぅ、ぁ」
そうして自分が今何をされているのか理解できないまま、ふいにピリピリと不思議な痺れを感じることに気がついた。
(あ、なんだろう。さっき水に触れたときのバチッとした痛みに近いような)
だけど今は痛いわけじゃなく。
むしろとても気持ちいい。
それも、塞がれながら噛みつかれたり舐められたり……してる僕の口から喉を通ってお腹のほうへ。
甘いピリピリがどんどん強くなるみたいだった。
(ふぁあ、甘い、おいしい)
やっぱり僕、変だ。
ピリピリがしてから身体もおかしい。
「!」
ふいに相手が離れる気配がして、ハァハァと荒い息のまま目を開いた。
涙で滲む景色。そこに、僕を見下ろす綺麗な魔物の姿がある。
だけどなぜか、ぼーっとする頭に浮かぶのは
(欲しい)
(モっと)
(足リナイ)
自分でもわけの分からない感情。
それがなんなのか理解できず、だけど飢えへの欲求を満たしたくて……僕は魔物に手を伸ばした。
――ドクンッ
「!」
あ、まただ。
指先が彼の頬に触れた瞬間、ピリピリと身体を走る何か。でも今度はさっきより強くて激しい感じ。
触れ合った場所から足の先まで、まるで身体中が全部心臓になったみたいにドクドクしてる。
ああ熱い、気持ち良い、美味しい。
「おい、なんなんだお前」
「え? んぅ……っ」
相手の頬に触れていた手を掴まれると同時に、魔物がまた噛みついてきた。
ああ、もうだめ、今度こそ本当に殺されるんだ。
そう考えた途端、恐怖と悲しさから涙があふれて止まらない。
(嫌だ、お願い誰か助けて)
「おい、泣くな」
(え……?)
ゾクリとするような、甘く響く低音が魔物の口から発せられた。
ほんの一瞬意識が飛んでいたのか、噛みつかれたはずの唇はいつのまにか解放され、今は必死に空気を求めている。
と、やわらかくて湿った、多分魔物の舌(?)か唇と思われるものが、反射的につむってしまった僕の目の辺りに触れた。
「……しょっぺえ、けどなんか甘いな」
(え、な、何が?)
もう一度、恐る恐る目を開ければ、さっき僕を殴った手が今度は優しく頬を撫でてくる。目のふちを沿うように動く指先がくすぐったい。
驚き見開いた目の先には、美しい魔物の顔。そして相手の瞳に映り込む、泣き顔の僕。
フ、と笑みを浮かべる魔物に息を呑んだ。
一体これはなんだろう。
魔物なのに……否、魔物だからなのか。
物凄く、魅入られてしまう。
「や、痛っ」
突然、頬に痛みが走った。
殴られて怪我したとこを魔物が触ったんだ。
そこでハッと我に返る。
ああ、きっとこいつは人間を惑わせ魅了し油断させてから喰い殺す魔物なんだ、と。
でも、いや……いやだ、痛いのも怖いのも。
僕はまだ死にたくないのに。
「おい暴れるな! ……つか、さっきはいきなり殴ったりして悪かった」
「へ?」
予期しない魔物の言葉に、動きが止まる。
悪かった?
えっと、今のは幻聴かな。もしくは、僕をだまそうと嘘をついているのか。
ああ、だめだ。
上手く考えがまとまらなくて、体を起こした魔物が己の姿を確認するのを、黙って眺めることしかできない。
.
え? な、何?
どうしてまたこんな。
いつのまに、魔物に口を塞がれてたの!?
「……っ……は、んん……ゃあ……」
早く逃げなきゃ、そう頭では分かっているのに息が苦しくて、くらくらする。
それに、なんだろう。さっきから頭も身体も凄く熱くて、ふわふわ……。
このままじゃ食い殺されるだけなのに。
「ぁん、……っ……ふ」
苦しい。
(気持ちいい)
熱い。
(なんだか、変)
助けて。
(もっと)
ああ、だめだ。混乱する僕の頭では、まともに考えることができない。
どこからか「チュ、クチュ」と水音が聞こえてくる。
だけど息苦しさと、心臓の音がドクドクうるさくてそれが遠いのか近いのかも分からない。
「や……ハァ、……っん……ぅ、ぁ」
そうして自分が今何をされているのか理解できないまま、ふいにピリピリと不思議な痺れを感じることに気がついた。
(あ、なんだろう。さっき水に触れたときのバチッとした痛みに近いような)
だけど今は痛いわけじゃなく。
むしろとても気持ちいい。
それも、塞がれながら噛みつかれたり舐められたり……してる僕の口から喉を通ってお腹のほうへ。
甘いピリピリがどんどん強くなるみたいだった。
(ふぁあ、甘い、おいしい)
やっぱり僕、変だ。
ピリピリがしてから身体もおかしい。
「!」
ふいに相手が離れる気配がして、ハァハァと荒い息のまま目を開いた。
涙で滲む景色。そこに、僕を見下ろす綺麗な魔物の姿がある。
だけどなぜか、ぼーっとする頭に浮かぶのは
(欲しい)
(モっと)
(足リナイ)
自分でもわけの分からない感情。
それがなんなのか理解できず、だけど飢えへの欲求を満たしたくて……僕は魔物に手を伸ばした。
――ドクンッ
「!」
あ、まただ。
指先が彼の頬に触れた瞬間、ピリピリと身体を走る何か。でも今度はさっきより強くて激しい感じ。
触れ合った場所から足の先まで、まるで身体中が全部心臓になったみたいにドクドクしてる。
ああ熱い、気持ち良い、美味しい。
「おい、なんなんだお前」
「え? んぅ……っ」
相手の頬に触れていた手を掴まれると同時に、魔物がまた噛みついてきた。
ああ、もうだめ、今度こそ本当に殺されるんだ。
そう考えた途端、恐怖と悲しさから涙があふれて止まらない。
(嫌だ、お願い誰か助けて)
「おい、泣くな」
(え……?)
ゾクリとするような、甘く響く低音が魔物の口から発せられた。
ほんの一瞬意識が飛んでいたのか、噛みつかれたはずの唇はいつのまにか解放され、今は必死に空気を求めている。
と、やわらかくて湿った、多分魔物の舌(?)か唇と思われるものが、反射的につむってしまった僕の目の辺りに触れた。
「……しょっぺえ、けどなんか甘いな」
(え、な、何が?)
もう一度、恐る恐る目を開ければ、さっき僕を殴った手が今度は優しく頬を撫でてくる。目のふちを沿うように動く指先がくすぐったい。
驚き見開いた目の先には、美しい魔物の顔。そして相手の瞳に映り込む、泣き顔の僕。
フ、と笑みを浮かべる魔物に息を呑んだ。
一体これはなんだろう。
魔物なのに……否、魔物だからなのか。
物凄く、魅入られてしまう。
「や、痛っ」
突然、頬に痛みが走った。
殴られて怪我したとこを魔物が触ったんだ。
そこでハッと我に返る。
ああ、きっとこいつは人間を惑わせ魅了し油断させてから喰い殺す魔物なんだ、と。
でも、いや……いやだ、痛いのも怖いのも。
僕はまだ死にたくないのに。
「おい暴れるな! ……つか、さっきはいきなり殴ったりして悪かった」
「へ?」
予期しない魔物の言葉に、動きが止まる。
悪かった?
えっと、今のは幻聴かな。もしくは、僕をだまそうと嘘をついているのか。
ああ、だめだ。
上手く考えがまとまらなくて、体を起こした魔物が己の姿を確認するのを、黙って眺めることしかできない。
.
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
憧れていた天然色
きりか
BL
母という名ばかりの女と、継父に虐げられていた、オメガの僕。ある日、新しい女のもとに継父が出ていき、火災で母を亡くしたところ、憧れの色を纏っていたアルファの同情心を煽り…。
オメガバースですが、活かしきれていなくて申し訳ないです。
地味な俺は、メイクしてくるあいつから逃げたい!!
むいあ
BL
___「メイクするなー!帰らせろー!!」___
俺、七瀬唯斗はお父さんとお母さん、先生の推薦によって風上高校に入ることになった高校一年生だ。
風上高校には普通科もあるが、珍しいことに、芸能科とマネージメント科、そしてスタイリスト科もあった。
俺は絶対目立ちたくないため、もちろん普通科だ。
そして入学式、俺の隣は早川茜というスタイ履修科の生徒だった。
まあ、あまり関わらないだろうと思っていた。
しかし、この学校は科が交わる「交流会」があって、早川茜のモデルに選ばれてしまって!?
メイクのことになると少し強引な執着攻め(美形)×トラウマ持ちの逃げたい受け(地味な格好してる美形)
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる