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006.こんなはずじゃ
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「お、おい、タダシ君、どうしたんだ?」
「ソウちゃん⋯本当にノーパラダイスでフィニッシュになりそうだぞ」
「はぁ?今はそれどころじゃないだろ」
わなわな震え初めているタダシ。
そんなタダシをどう扱えばいいか困惑しているソウシ。
「自分たちもこの村で保護してくれるってことでいいんですか?」
「ふむ、そのことなんじゃがの」
ソウシは一旦タダシを放置し、今後どうなるか尋ねた。
「お前達は全く違う大陸から来たと聞いておるが間違いないかの?」
「はい、その可能性が高いです。大陸というか、島ですが」
「自殺をしてしまった者たちがいることで、不安に思う奴らもおっての。保護してやりたいところなんじゃが、何があるかわからんからの。人族のいる街の近くまではブラーに案内させよう。人族がこの村で死んだとなると、獣人が死ぬより問題が大きくなる可能性があるのじゃ」
獣人族が見ず知らずの俺たちを保護してもメリットなんて何もないもんな。
人族がいるところまで案内して貰えるだけでもありがたいと思わないとだろう。
「そこまでして貰えるのはとても嬉しいです。厄介になるは心苦しいですが、右も左もわからないので、案内して貰えるだけでもとても助かります」
物語みたいな展開で、いきなり事件に巻き込まれるとかあるのかと思ったが、そういうことはないんだな。
むしろこれはラッキーと思った方がいいんだろう。
無償で保護して貰えて人里まで案内してくれるなんて優しすぎる。
これは裏があると考えた方がいいのか?
「今日はそろそろ日が暮れる。簡単な食事と寝るとこは用意するでの、明日の朝には出立してもらうとするのじゃ。それでよろしいかの?」
「食事まで⋯本当にありがとうございます」
「うむ、我々獣人は争いを好まぬ種族じゃからのぉ。どんなに辛くても助け合うことが大切だと教わっているのじゃ」
なんて素晴らしい教えなのだろうか。
イメージしてた異世界とは違うな。
もっと殺伐としてるものかと思ってた。
殺るか殺られるかで生きているものかと。
どこまでが本当か分からないが長老の話が本当なら、俺らの命はまだ無事ということだろう。
人族の方が好戦的なのかもしれないし、まだ予断は許さないよな。
「それではあとのことはブラーに任せるでの、少しの間じゃが2人はゆっくりするとええ」
「はい、何から何までありがとうございました」
俺はしっかりと頭を下げ、長老にお礼を伝えるのだった。
何事もないなら大ラッキーな展開と言っていいだろう。
今後のことをタダシ君とゆっくり話せるわけだからな。
ブラーさんに部屋まで案内される。
震えているタダシ君だが、ブラーさんに黙ってついてくる。
こいつは何があったんだろうか。
部屋でゆっくり聞くとしよう。
「夕飯は時間になったら持ってくる。何か用事があれば声をかけてくれ。俺も今日はここにいるだろうからな」
最後にタダシをチラッと見て部屋を出ていくブラー。
ソウシはその視線に気付いていた。
ブラーが出ていった後も扉に注視しているソウシ。
しばらくしてからホッと息を吐いた。
「外から鍵をかけられるようなことはなかったな。一安心と思ってもいいかもしれない」
普通に夕飯と宿泊をさせて、人里まで送ってくれるかはまだ確定事項じゃないんだ。
何が起こるか分からない。
逃げられるなら逃げないとなんだ。
さすがにまだ俺は死にたくない。
次は今後のことだな。
その前にホントこいつはどうしたんだか。
「おいタダシ君、何があったんだよ。さっきからずっと黙ってるじゃないか」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「どうしたんだよ。黙ってたらわかんないだろ」
「⋯⋯⋯居ないんだ」
「はぁ?なんだって?」
「だから居ないんだよ!女の子が!」
「はぁ?」
「異世界と言ったらハーレムだろ!」
「落ち着けタダシ君」
「これが落ち着いてられるか!男だけの村だと?そんな馬鹿な話があるかっての!そんなラノベとか異世界ものの漫画やアニメなんて見たことねーよ!ふざけんな!どんな思いで俺が異世界に来たと思ってんだよ!獣人の女の子のケモ耳パラダイスだろ!主人公が出会うのはいつだって女、女、女、だろーが!女の子を助けたり、女の子に助けられたり、仲良くなって絆を深めて、最終的に貴族になったりスローライフして女の子だらけの結婚生活がマストだろ!」
「いいから落ち着け!なんでタダシ君はいきなりそんなにしゃべんだよ!なげーわ!」
相変わらず急だなこいつは。
ハーレムとか、こいつはそんなこと考えてたのか。
あ、そういえば異世界に来る前に読んでた漫画って、ハーレム系の漫画じゃなかったか?
「あのなぁ、タダシ君。元の日本だろうが異世界だろうが、一般人で権力も力も金もない俺たちがハーレムなんて無理に決まってんだろ」
「異世界ならなんとかなんだろ!だから来たんだろ!」
「んなわけあるかい!」
「じゃあなんで来たんだよ!」
「お前が行くって行ったからだろ!」
「んじゃソウちゃんは俺が死ぬって言ったら一緒に死ぬんかよ!」
「小学生みたいなこと言ってんじゃねぇ!」
ああ、不毛だ。
こいつこんないドアホだったのか?
マジで一緒に異世界に来たのは失敗だったんじゃなかろうか。
「ソウちゃん⋯本当にノーパラダイスでフィニッシュになりそうだぞ」
「はぁ?今はそれどころじゃないだろ」
わなわな震え初めているタダシ。
そんなタダシをどう扱えばいいか困惑しているソウシ。
「自分たちもこの村で保護してくれるってことでいいんですか?」
「ふむ、そのことなんじゃがの」
ソウシは一旦タダシを放置し、今後どうなるか尋ねた。
「お前達は全く違う大陸から来たと聞いておるが間違いないかの?」
「はい、その可能性が高いです。大陸というか、島ですが」
「自殺をしてしまった者たちがいることで、不安に思う奴らもおっての。保護してやりたいところなんじゃが、何があるかわからんからの。人族のいる街の近くまではブラーに案内させよう。人族がこの村で死んだとなると、獣人が死ぬより問題が大きくなる可能性があるのじゃ」
獣人族が見ず知らずの俺たちを保護してもメリットなんて何もないもんな。
人族がいるところまで案内して貰えるだけでもありがたいと思わないとだろう。
「そこまでして貰えるのはとても嬉しいです。厄介になるは心苦しいですが、右も左もわからないので、案内して貰えるだけでもとても助かります」
物語みたいな展開で、いきなり事件に巻き込まれるとかあるのかと思ったが、そういうことはないんだな。
むしろこれはラッキーと思った方がいいんだろう。
無償で保護して貰えて人里まで案内してくれるなんて優しすぎる。
これは裏があると考えた方がいいのか?
「今日はそろそろ日が暮れる。簡単な食事と寝るとこは用意するでの、明日の朝には出立してもらうとするのじゃ。それでよろしいかの?」
「食事まで⋯本当にありがとうございます」
「うむ、我々獣人は争いを好まぬ種族じゃからのぉ。どんなに辛くても助け合うことが大切だと教わっているのじゃ」
なんて素晴らしい教えなのだろうか。
イメージしてた異世界とは違うな。
もっと殺伐としてるものかと思ってた。
殺るか殺られるかで生きているものかと。
どこまでが本当か分からないが長老の話が本当なら、俺らの命はまだ無事ということだろう。
人族の方が好戦的なのかもしれないし、まだ予断は許さないよな。
「それではあとのことはブラーに任せるでの、少しの間じゃが2人はゆっくりするとええ」
「はい、何から何までありがとうございました」
俺はしっかりと頭を下げ、長老にお礼を伝えるのだった。
何事もないなら大ラッキーな展開と言っていいだろう。
今後のことをタダシ君とゆっくり話せるわけだからな。
ブラーさんに部屋まで案内される。
震えているタダシ君だが、ブラーさんに黙ってついてくる。
こいつは何があったんだろうか。
部屋でゆっくり聞くとしよう。
「夕飯は時間になったら持ってくる。何か用事があれば声をかけてくれ。俺も今日はここにいるだろうからな」
最後にタダシをチラッと見て部屋を出ていくブラー。
ソウシはその視線に気付いていた。
ブラーが出ていった後も扉に注視しているソウシ。
しばらくしてからホッと息を吐いた。
「外から鍵をかけられるようなことはなかったな。一安心と思ってもいいかもしれない」
普通に夕飯と宿泊をさせて、人里まで送ってくれるかはまだ確定事項じゃないんだ。
何が起こるか分からない。
逃げられるなら逃げないとなんだ。
さすがにまだ俺は死にたくない。
次は今後のことだな。
その前にホントこいつはどうしたんだか。
「おいタダシ君、何があったんだよ。さっきからずっと黙ってるじゃないか」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「どうしたんだよ。黙ってたらわかんないだろ」
「⋯⋯⋯居ないんだ」
「はぁ?なんだって?」
「だから居ないんだよ!女の子が!」
「はぁ?」
「異世界と言ったらハーレムだろ!」
「落ち着けタダシ君」
「これが落ち着いてられるか!男だけの村だと?そんな馬鹿な話があるかっての!そんなラノベとか異世界ものの漫画やアニメなんて見たことねーよ!ふざけんな!どんな思いで俺が異世界に来たと思ってんだよ!獣人の女の子のケモ耳パラダイスだろ!主人公が出会うのはいつだって女、女、女、だろーが!女の子を助けたり、女の子に助けられたり、仲良くなって絆を深めて、最終的に貴族になったりスローライフして女の子だらけの結婚生活がマストだろ!」
「いいから落ち着け!なんでタダシ君はいきなりそんなにしゃべんだよ!なげーわ!」
相変わらず急だなこいつは。
ハーレムとか、こいつはそんなこと考えてたのか。
あ、そういえば異世界に来る前に読んでた漫画って、ハーレム系の漫画じゃなかったか?
「あのなぁ、タダシ君。元の日本だろうが異世界だろうが、一般人で権力も力も金もない俺たちがハーレムなんて無理に決まってんだろ」
「異世界ならなんとかなんだろ!だから来たんだろ!」
「んなわけあるかい!」
「じゃあなんで来たんだよ!」
「お前が行くって行ったからだろ!」
「んじゃソウちゃんは俺が死ぬって言ったら一緒に死ぬんかよ!」
「小学生みたいなこと言ってんじゃねぇ!」
ああ、不毛だ。
こいつこんないドアホだったのか?
マジで一緒に異世界に来たのは失敗だったんじゃなかろうか。
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