リリィと夜の鍵 〜ただいまのある場所へ~

あのパン

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夜の街と、うさぎのリリィ

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夕暮れを通り越し、夜が街を染めはじめたころ。
路地裏の奥で、小さな少女がひとり、誰かを待っていた。

その子の名前は「ミレイ」。
黒いレースのワンピースに、大きなリボン。どこか昔の人形のような風貌で、片手には「リリィ」と呼ばれるうさぎのぬいぐるみを抱いている。

「お兄ちゃん、まだ来ないなぁ……」

ミレイは静かに、でもどこか確信を持った笑顔を浮かべていた。
まるでこの世界で、彼女だけが“ちゃんと知っている”かのように。

リリィの目はバツ印。
まるで感情を閉ざしたようなその顔に、ミレイはふと呟く。

「大丈夫。今夜で終わりにするから……」

そう。ミレイはこの街の“秘密”を探していた。
この路地には、誰にも見えないもう一つの扉があって、
そこに迷い込んだ人は――二度と戻ってこない。

でもミレイだけは違った。
彼女はこの街の“鍵”を持っていた。
それが……このリリィだった。

「ねぇ、リリィ。
 ちゃんと笑えるようになったら……今度こそ、ほんとのお別れしようね。」

うさぎのリリィは黙ったままだ。
でもその瞳の奥に、どこか涙のようなものがきらめいた気がした。

――そして、足音がした。

「ミレイ!」

路地の奥から、少年の声が響いた。

「来てくれたんだね、お兄ちゃん。」

ミレイの表情がふっとゆるみ、ようやく本当の“ただいま”を告げるように、
彼女はピースサインを見せた。

その指のすき間から、小さな光が、夜の闇をそっと裂いた――
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