リリィと夜の鍵 〜ただいまのある場所へ~

あのパン

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ただいま、おかえり

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記憶の図書館をあとにしたふたりの前に、
やわらかな光のトンネルが現れた。

「これが……本当に帰る道なんだね」

ミレイがぽつりとつぶやく。
手のひらにはもうリリィはいない。
でもその胸の奥には、確かにリリィの温もりが残っていた。

ユウキはそっとミレイの手を取った。

「さあ、帰ろう。ミレイの居場所へ。
 “ただいま”って言えるところへ」

ふたりは光の中を歩いていく。
その道のりは、思い出をひとつずつ撫でていくように、静かで優しかった。

そして――

目を開けたとき、ミレイは自分の部屋にいた。
窓の外からは朝の光が差し込んでいて、鳥の声が遠くで聞こえていた。

「……夢、だったのかな」

でも、ベッドの枕元には、あのぬいぐるみが置かれていた。
うさぎのリリィ――でも、目のバツ印はもう、ただの縫い目に見えた。

ミレイはそっと、リリィを抱きしめた。

「……おかえり、リリィ」

その瞬間、胸の奥で声が響いた気がした。

『うん、ただいま』

ミレイの目に涙が浮かぶ。

でも今度は、泣かない。
この涙は――“ありがとう”の涙だから。



玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、そこにはユウキが立っていた。

「よう。寝坊してないか?」

ミレイはふふっと笑って答えた。

「うん、ばっちり。今日は……ちゃんと、行けそう」

「そうか。じゃあ、“日常”へ、出発だな」

ふたりは並んで歩き出す。
光が差す朝の道を。
もう、怖くない。

どんな日々も、どんな過去も――
乗り越えたからこそ、“今日”があるのだから。





だいじょうぶ。
忘れてしまっても、思い出しても。
あなたの心の奥に、ちゃんと“居場所”はある。

それはきっと――

「ただいま」と「おかえり」が交わる場所。


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