戦士と腕輪

GGG_123

文字の大きさ
上 下
1 / 44
第1章 駆け出しの戦士

第1話 駆け出しの戦士

しおりを挟む
戦士と腕輪 第1話 駆け出しの戦士

 とある山奥の辺境の村に1人の少年が暮らしていた。少年は16歳であり、母親と2人で
暮らしていた。彼は立派な騎士になることを夢見て、今日も剣技の訓練に明け暮れていた。

「ふぅー。素振り100回が終わった。次は岩への打ち込みだな。」

少年は剣技の基礎訓練を早朝からやっていた。いつもの素振り100回を終えると家の近くの
大きな岩に行って、打ち込みを始めようとしていた。そんな少年に声をかけてくる人物が
いた。

「おはよう。朝食の準備ができたから、家に戻ってらっしゃい。」

「あ。母さん。おはよう。わかったよ。今、行くね。」

少年の母親が朝食の準備ができたので呼びに来ると、少年はそれに応じて家に戻ろうと
するのであった。そんな彼に母親はさらに話しかけてくるのであった。

「剣の稽古もいいけど、家の手伝いもしっかりしてちょうだいね。朝食が終わったら、
 まき割りをお願いね。」

「えー。せっかく、今日は岩への打ち込みをしようと思ってたのに。」

少年は家の手伝いをお願いされて、少し不機嫌になるのであったが、母親はこう言って
たしなめてくるのであった。

「まき割りだって、剣の稽古の役に立つわよ。たくさんのまきを割れば、体が鍛えられる
 わよ。」

「確かに言われてみればそうだな。わかったよ。朝食が済んだら、すぐにまき割りを
 するよ。でも、それが終わったら、すぐに剣技の訓練に戻るからね。」

そう言うと、少年は朝食後のまき割りを引き受けるのであった。母親も少年の対応に
喜ぶのであったが、一言つぶやくのであった。

「あの子ったら、本当に剣が好きね。誰に似たんだか。」

母親は何かを思い出すようにつぶやくと家に戻っていくのであった。一方、少年は家に
戻ると手を洗って、さっそく食卓につき、パンを手に取って、朝食を食べ始めるので
あった。

「うーん。やっぱり、母さんが焼いてくれたパンはいつもおいしいな。」

「スープと野菜もちゃんと食べてね。栄養が偏るとだめよ。」

少年は母親の作った朝食をおいしく食べていたが、母親は少年の体のことを考えて、
スープや野菜も食べるように言うのであった。しばらくして、少年は食卓にあった朝食を
全てたいらげてしまうとお腹をたたいて満足するのであった。

「ふぅー。おいしかったな。満腹。満腹。」

「すごいわね。成長しているから食べる量も多いわね。明日もたくさん準備しないとね。」

少年の母親は少年の食べっぷりに驚くと笑顔になって、そうつぶやくのであった。
少年は朝食を終えると家の裏でまき割りを始めるのであった。毎日、剣技の訓練にあけ
くれていたので、体が鍛えられており、背筋などは同世代より大分すごかった。このため、
木を勢いよく割っていくとまきがどんどんと出来上がっていくのであった。

「よし。まき割りはこれでおしまいっと。じゃあ。あとは剣技の訓練だな。母さん。
 まき割りが終わったから、また剣技の訓練に戻るよ。」

「ありがとう。お弁当を作ったから食べてちょうだいね。夕暮れまでには戻ってきてね。」

少年は家の手伝いであるまき割りを終えると剣技の訓練に戻るため、弁当を携えて、家の
近くの大きな岩へ向かうのであった。少年が家から少し歩くと目の前に大きな岩が
現れるのであった。岩のサイズは高さが2m程度、横幅が3m程度あり、家の近くでは
最も大きな岩であった。少年はこの岩に棒切れで打ち込みを行って、剣技の訓練を行って
いた。

「いくぞ。えい。やー。とー。」

少年は声をあげて、何度も岩への打ち込みを行うのであった。たまに棒切れの芯に岩が
当たって、少年の手が痺れるくらいの感覚を覚えるのであった。

「あっ。痛。手が痺れるや。もう少しうまく岩に打ち込まないとな。」

少年は岩への打ち込みを100回行い、見事に達成するのであった。当然、彼の手は
痺れており、真っ赤になっているのであった。

「よ、よし。なんとか岩への打ち込みが終わったぞ。次は何をしようかな。」

少年は次にどんな剣技の訓練をしようかと考えていたが、近くから、鳴き声が聞こえて
くるのに気がつくのであった。

「ワオーン。」

「あれ。今のはオオカミの鳴き声じゃないかな。珍しいなこんな人がいるところには
 滅多に来ないモンスターなのに。あ、いいことを思いついたぞ。」

少年は人里には近づかないモンスターであるオオカミの鳴き声に気がつくと何かを思い
ついたようでオオカミの鳴き声の方へ忍び足で近づいていくのであった。

「よーし。バレないようにゆっくり近づいてっと。あっ。やっぱり。あのモンスターは
 オオカミだ。」

「ワオーン。」

少年は茂みの中をかがんだ姿勢で歩いていき、オオカミの姿を確認するのであった。
どうやら、オオカミは群れから離れて1匹で行動しているようで、エサでも探している
様子であった。

「あのオオカミは1匹だけだな。群れは周りにはいないみたいだし、これなら、俺でも
 なんとか戦えそうだな。よーし。日頃の剣技の訓練の成果を出せそうだな。」

少年は棒切れを両手で握って、オオカミの背後から忍び寄ると茂みから勢いよく飛び
出すのであった。

「くらえ。えい。やあ。」

「ワ、ワオーン。」

少年の先制攻撃がオオカミに当たると、オオカミはダメージを負ったようでひるんで
しまうのであった。少年は間髪入れずにすぐに第2、第3の攻撃を繰り出していくので
あった。

「えい。とう。これでどうだ。」

「ワ、ワ、ワオーン。グフ。」

少年の度重なる攻撃にオオカミは深手を負ってしまうとその場で倒れ込んでしまうので
あった。どうやら、少年はオオカミを倒したようであった。

「倒せたのかな。や、やった。モンスターを1人で倒すなんて、初めてだぞ。」

この日、少年は初めて自分1人でモンスターを倒したので、とても喜んでいる様子で
あった。今回はオオカミが群れからはぐれて単独行動であったことが幸いしていたが、
少年にとっては大きな1歩であり、自信につながる成果であった。

「よし。このオオカミの死骸を村の道具屋に持ちこめば、買い取ってくれるかな。」

少年はオオカミの死骸を肩に担ぐと村の道具屋に運ぶのであった。そんなに大きくないとは
言え、オオカミの死骸を30分くらい担いで歩くと、少年は疲れて、村の入り口近くで
昼食も兼ねて休憩するのであった。

「ふぅー。やっぱり、オオカミの死骸は結構な重さがあるな。家の手伝いでまき用の太い
 木を持ち運んだりしているけど。それよりも少し重いな。」

少年はオオカミの死骸をかたわらに置いて、休憩していると村の入り口から村長が歩いて
くることに気がつくのであった。

「あ。村長。こんにちわ。」

「おー。元気にしとるかの。お。それはもしかしてオオカミの死骸かの。お主1人で
 倒したのか?」

「は、はい。剣技の稽古をしていたら、偶然、見つけて、倒したんです。」

「おー。それはでかしたな。」

村長は少年のオオカミを倒したことを大変喜びそして褒めるのであった。少年も笑顔に
なって喜ぶのであった。

「では、このオオカミの死骸を道具屋に持っていくので、失礼します。」

「そうか。では、気をつけてな。」

少年は休憩を終えて、村長にあいさつすると村の道具屋に移動するのであった。数分後、
村の道具屋に到着すると、少年は道具屋の主人に声をかけるのであった。

「こんにちわ。オオカミを倒したんで、死骸って、買い取ってもらえますか?」

「いらっしゃい。オオカミかい。いいよ。ちょっと見せてもらうよ。」

道具屋の主人はモンスターの死骸を剥ぎ取ったりして売買していたので、さっそく、少年の
持ち込んだオオカミの死骸を鑑定するのであった。しばらくすると道具屋の主人は少年に
鑑定の結果を伝えるのであった。

「大きくはないけど、久しぶりに持ち込まれたから、銅貨8枚でどうだい?」

「俺、初めて倒したモンスターなんで、もう少しおまけしてもらえませんか?」

少年は買取の値段をもう少し引き上げたいと交渉するのであった。道具屋の主人もあまり
高く買い取れないので少年にこう伝えるのであった。

「そうか。じゃあ。銅貨8枚と店にある品物をつけてあげることでどうかな?」

「ありがとうございます。じゃあ。何にしようかな。」

少年は銅貨8枚とおまけで品物がもらえるということで、道具屋の中の品物を見渡して
いくとあるものに目を止めるのであった。

「あ、これがいいかな。すいません。この木剣をください。」

「ああ。それならいいよ。じゃあ、銅貨8枚と木剣で交換だよ。毎度ありがとうね。」

少年は銅貨8枚と木剣でオオカミの死骸を交換するのであった。少年は棒切れで剣技の
訓練をしていたので、本格的な武器が欲しかったが、お金もないので、諦めていた。
木剣であれば、訓練で使用できるし、実戦でも棒切れよりはかなり使えるので、これを
選択するのであった。

「じゃあ。失礼します。」

「ああ。また、モンスターを倒したら持ってきてくれよ。特に洞窟の中には結構いい
 モンスターがいたから、高く買い取れるよ。」

少年はあいさつをして道具屋を出ていくのであった。そして、オオカミを倒して得られた
銅貨8枚と木剣を持って、家路に着くのであった。家に戻ると夕暮れ前になっており、
母親が夕食の準備をしていた。

「ただいま。母さん。」

「お帰りなさい。あれ、それはどうしたの?」

母親は少年が木剣を携えて帰ってきたので尋ねるのであった。少年は満足気にしゃべり
始めるのであった。

「実は、今日、偶然、森でオオカミを見つけて、倒したんだよ。それを村の道具屋に
 持っていったら、銅貨8枚とこの木剣に交換してくれたんだよ。」

「す、すごいわね。でも、あぶないから、モンスター退治なんてやめてね。1人だと
 囲まれたりしたら、逃げられなくなるから。それにあなたはまだ経験も少ないし。」

母親は心配そうに少年に語るのであったが、少年も母親を安心させるために、こう
答えるのであった。

「わかってるよ。だから、毎日、家の手伝いをしながら、剣技の訓練をしているんだよ。
 あまり、無茶はしないから。あと、この銅貨8枚は生活の足しにしてよ。」

「わかったわ。ところで、夕食の準備ができたから、食卓に座ってちょうだい。」

母親は話を終わらせると夕食をふるまうべく、食卓に料理を並べていくのであった。
少年は母親の手料理を堪能して、たらふく食べていくのであった。

「おいしかったよ。ごちそうさま。」

「ありがとう。お湯で体を洗い終わったら、ゆっくり寝てね。」

少年は母親の言うとおり、お湯で体を洗い始めるのであった。洗っている最中、少年は
1日のことを思い起こすのであった。

「今日はついていたな。モンスターを1人で初めて倒せたし、それに木剣を手に入れられ
 たのは大きいな。これなら、剣技の訓練もはかどるし、モンスター退治もやりやすく
 なったな。でも母さんが心配するし、あまり、無茶はできないな。」

少年はこれからの剣技の訓練やモンスター退治に期待を膨らませて、体を洗っていたが、
ふとあることを思い出すのであった。

「あ、そういえば、今日、道具屋の主人が洞窟のモンスターが高く買い取れるって言って
 いたような。剣技の訓練をある程度やり遂げたら、力試しに行ってみようかな。」

少年は剣技の訓練を進めたのちに、力試しに洞窟に行ってみようと考えるのであった。
しおりを挟む

処理中です...