わたくし、聖女様ではございませんっ!〜最低悪役令嬢ですので、勘違いはやめてください〜

Rimia

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本人無自覚の出会い編〈7歳~12歳〉

氷の騎士の回想

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視点・場面がコロコロ変わります。
参考までに・・・



3年前の回想シーン
ユーリスト目線(当時6歳):夜の訓練場
  ↓
当時のロゼット目線(当時4歳):夜の訓練場&帰り道
  ↓
前話のその後・・・(ユーリスト目線)



となっております。
今回は過去の話なので、ギャグは少なめかも・・・
ですがどうか、見捨てずにお付き合いくださいね!ね?!
٠٠٠٠٠٠あれ、これ何のジャンルだっけ

________________________________________________________
 
 (3年前・・・・)






「ふっ!はっっ!」


訓練場に自分だけの声が響く。もう夜で、大人達はとっくに帰ってしまっている。特に今の時期は真冬で、冷え込む夜は誰も訓練場に来やしない。

 周りの奴等は自分の事を天才だともちあげる。

 確かに他の奴等に比べれば、剣は才能があると言ってもいいかもしれない。教えられたことは直ぐにできるし、今のところ試合で闘って負けたことはない。

 だが、まだまだ足りない。強くならなければいけないんだ。

   自分は両親・・・

 ゼルダン子爵夫妻の実の子ではないのだから。


 捨て子だったところを、現在当主の子爵・・・・父上が自分の剣の才能を見いだして養子にしたのだ。

 ゼルダン子爵家は代々カーライン侯爵家の当主となる人物に忠誠を誓い、仕えている。そして歴史に残る騎士を何人も輩出していることから、武家の名門として名高い。


「てやッ!」


もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっとッ・・・・・・・・・!









「だいじょーぶ?」





不意に、この場には不似合いな少女の声が響いた。

「!」

「おにいちゃん、おてて、いたいいたい。」


見ると、まだ4歳ほどだと思われる幼い少女がすぐ近くまで来て、自分の剣を握っている手を見つめていた。
 何時間も剣の素振りをしていたからか、手には血が滲んでいて、そんな自分の手を少女は心配そうに見ている。


「あ、ああ。大丈夫だよ。それより君、もう遅いよ?送って行ってあげるから、お家に帰ろうね。」


 そう言ったが、少女は口をひき結んで顔をブンブンと横に振った。何か帰れない事情があるのかもしれない。
 帰すことは諦めて、少女と訓練場の中のベンチに座った。ちょこんと座る様子が可愛らしい。

そして銀色のサラサラな髪を揺らしながら、クリクリとした大きなエメラルドグリーンの瞳でこちらを見つめてくる。

  「おにいちゃん、きし?」

キシ?ああ、騎士のことだろうか。

「う~ん、まぁそうかな。まだ見習いになったばっかりで、目指している途中だけどね・・・。」

そう。
 まだ見習いの自分だからこそ、早く騎士になる為にはもっともっと強くならなくてはいけないんだ・・・っ!

 「かっこいいっ!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


 かっこいい?自分が??

 こんなに手をボロボロにする未熟者の自分が?
 親にさえ捨てられた汚い孤児の自分が?


 なにをいっているんだこの子は。薄汚いと罵られはしても、そんなことを言われるはずはない。自分を天才だと褒めちぎって持ち上げている奴らも、元は孤児の平民だと知ったら手のひらを返して去って行くはず。それが貴族社会だ。

それなのに、こんな自分をかっこいいと言ってくれた。
 こんな自分を、認めてくれた。

 「おにいちゃん、この手はがんばったシルシなんだよ?」

「っ!・・・・・・・かっこ悪くないのか?こんなになってまで、がむしゃらに練習する俺が。」

こんなひねくれたことしか言えないのに、少女は続けてこういった。

「かっこわるくなんかない。こんなに努力ができるおにいちゃんは、すっごぉーく、かっこいいんだよ!!」



 彼女は、周囲の期待に焦り、こわばっていた自分をほぐしてくれた。

 彼女は、自分を見失い、ひねくれてしまっていた自分を温かく包みこんでくれた。


 彼女は、こんな自分をかっこいいと言い―――――――――――――――――――認めてくれた。



  気がつくと、いつの間にか少女はいなくなっていた。


   *   *   *


 次の日、自分は父上に連れられて我がゼルダン家が代々仕えているという、カーライン家に行った。カーライン家の広大な庭を歩き屋敷へ向かいながら、昨日の少女は無事に家に帰れただろうか・・・と思っていると、不意にあのときの少女の声がした。

 「!?」

 見ると、右側にあるバラ園で少女がメイドらしき人と遊んでいた。

 どうしてここにいるんだ?この屋敷のメイドの娘だったのだろうか?

自分は横にいる父上にそっと尋ねた。

 「父上、あそこにいる少女は誰なのですか?」

 「ん?ああ、あの方か。ユーリスト、あの方は我々が仕えるカーライン家のご令嬢、ロゼット・カーライン様だ。」

 「あの方が・・・・・」

 まさかあのときの少女が、カーライン家のご令嬢だとは思ってもいなかった。だが、一方で納得もした。翡翠の瞳、これはカーライン家直系の血筋の者にしか現れない特徴だからだ。

 父上に促されその場を進んだが、それからずっとあの少女――――――――――ロゼット様の姿が頭から離れなかった。

 あの優しい眼差しを思い出すだけで心が温かくなる。軽くなる。




救われる。





(ロゼット様、必ずや貴女のおそばに・・・。貴女の、貴女のためだけの騎士に・・・・。どうか待っていてください)


「自分の小さな小さな、聖女様――――――――――――――――――――――――――――――――」



  ☆   ☆   ☆   ☆




  (夜の訓練場での後のこと・・・・)





 訓練場でユーリストと別れた少女は、一人夜道を歩いていた。



 口調とか、子供のフリするのつかれたぁ~。
 それにしてもあのお兄ちゃん、最初は硬い表情だったのに、どうして途中からあんなに柔らかくなったんだろう?わたし、なんか言ったかな・・・



 少女・・・・・・ロゼットは今までの会話を思い出してみる。



 そういえばあの言葉の後だったかも。でも私、ただこう言っただけだったよね?

 『 (顔が)かっこいいっ! 』

 「それにしても、さっきのおにーちゃんかっこよかったな~。めっちゃイケメンだったわぁ~。」


 ミーハーな思いを抱きながら、ロゼットは屋敷へと帰っていく。 

 さっき自分が話した人物が未来の“氷の騎士”で、『ラブ・ラビ』の攻略対象の一人だと知らないまま・・・。

 そして自分がしたことがユーリストを心の闇から引き上げて救う、本来主人公がやるはずのイベントだったということだなんて、まったく思ってもいなかったのだった・・・・・・。



 *   *   *   *

 (ロゼットが出て行った後のユーリスト視点)




 ロゼット様・・・・ロゼット様・・・・。

 そう呼んでも彼女はもうここにいない。つい先ほど出て行ってしまったのだ。

貴女は3年前の自分との出会いを覚えているでしょうか?
ああ、でも貴女がこの屋敷から出て行く時の反応からして、覚えていないのでしょう。あの時の貴女はまだ幼かったから仕方ありません。

 でも、ロゼット様は自分の“騎士の誓い”を受け取ってくださった。

 かけられた魔法により、絶対的な拘束力をもつあの誓いは、取り消すことも、破ることもできない。受け取ったら最後、どちらかが死ぬまで契約は続く。

 そしてあの時自分はこう言った。

 『』と。

 それに対し、彼女は頷いてくれた。
 つまり、自分は彼女と永遠に一緒にいることができる・・・・。

 今は、彼女の意思を尊重してあえて離れることにするがが来ればまた一緒に・・・。


 「必ずやあの御方の横にいられるような騎士に!」




 少年は、自らの主が去ったところ、一人決意した。
 身分の差を指摘されようが鼻で笑えるくらい自分が強くなり、誰もに認められる存在になろうと・・・。



☆ ☆ ☆




 その頃ロゼットは、誓いにそんな策略が組み込まれていたとは全く知らず、のんきに自由を満喫していたのだった。

もちろん、3年前の事なんて全く覚えているはずがなかった・・・・。


________________________________________________________


☆★ユーリストの一人称は『自分』です★☆

そこのところをお願いします。

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