わたくし、聖女様ではございませんっ!〜最低悪役令嬢ですので、勘違いはやめてください〜

Rimia

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本人無自覚の出会い編〈7歳~12歳〉

小悪魔天使は決意する

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 そんな彼女がなんでこんな所にいるのか。僕は会話の中で探っていくことにした。

  「ソルくん。お母さんとか、お父さんは一緒じゃないの?」

 僕がそんなことを考えているとは知らず、彼女は僕のことを心配してきた。だがまさかその家族から逃げてきたとは言いにくかったため、逆に聞き返すことにした。

  「・・・・ロ、ロゼットおねーちゃんのおかーさまとおとーさまは、いないの?」

  さぁ、どう答えるか。

 だが彼女は、一瞬言葉を詰まらせた後、それはそれは悲しそうな目をして、微笑んだ。


(――――――――ッッ!)


どう、して?どうして、そん、な顔っ――――――


 「ぼく、おかーさまたちからにげてきたんだ。」

気づいたときには僕はここに来た理由を話してしまっていた。最初は話す気など無かったというのに・・・。

 「どうして?しんぱいされるよ?」

 「しないよ。だれもしんぱいしない・・・」

 そう。誰ものことは心配しない。心配するのは『公爵家長男』で、『跡取り』のアルストロ・イルミスという人間だけだ。

 「ソ、ソルくん。おとうさまとおかあさまは君のことキライじゃないよ?」

 「どうして分かるの?」

 おずおずと僕にそう言ってきた彼女に、なぜそう思うのか聞き返す。すると彼女は、僕に理解できないことを言い出した。

 「あ、あのね。ソルくん達はかんちがいをしてるんだよ」

 彼女は僕と両親の思いがすれ違っていることを教えてくれた。そして、

「お互いを思いすぎるからそうなっちゃっただけだよ。ソル君達が優しすぎただけなんだよ」

 優しい?この僕が??家族・・・人に対してそんなことを思うなんてなかったはずだが・・・。僕が自分の家族への気持ちに気づかなかっただけ?

いや違う。そんなことはない。



は確かにそうだった。
だけど今は違う。が見つかった。

 こんな感情を感じるのは久しぶりだ。心が晴れるような、それでいて落ち着くような・・・。

 僕は、僕をそう変えてくれた人物、ロゼットに目を向けた。彼女は相変わらず優しく微笑んでいる。この笑顔を曇らせたくない。先程のような悲しい目をさせたくない。僕が守るんだ。僕が、この手で・・・!

 すると、どこからか聞き覚えのある2人の男女の声が聞こえてきた。意識を集中して声を聞き取ると、どうやら父と義母が僕の名前を呼んで探していることがわかった。

必死に僕のことを探す、どこが不器用だけど偉大な父。
前妻の子の僕を疎うとむどころか愛情を注いでくれる優しい義母。




嗚呼。
僕はなんで気付かなかったんだろう。
僕を想ってくれる人達に。
僕の周りに溢れる人の優しさに。
僕がこんなにも――――――――愛されていることに。




 それを気づかせてくれたのは、紛れもなく目の前にいるロゼットだ。
 だから僕はもう行かなくてはいけない。僕のことを探している人たちが、必要としてくれる人たちがいる。

 しかし頭ではわかっていてもなかなか決意がつかない。そんな僕を見かねたのか、ロゼットが僕にそっと一言、言った。

 「だいじょうぶ。行って」

 「でも・・・ロゼットおねーちゃんは?」

 彼女のことを置いていけない。彼女と離れたくない。その思いだけが先走る。だが、そこで良い案を思いついた。

 「じゃあ、ボクがむかえにくるからケッコンしてね」 

僕はこの見た目の無邪気さを利用して、普通の子供はよく言うらしいセリフを使った。まぁ僕は世間一般でいうではなかったからこんな事を言った事はなかったのだが。

 「あはは。でも、もう少し大きくなったらね」

 「うんっ!ぜったいだよ!!じゃあ、ヤクソクね?ロゼットおねーちゃんだいすき!!おねーちゃんも、ぼくのことだいすき?」

 「わたしも、ソルくんのこと大好きだよっっ!」

僕の作戦通り、彼女は子供の遊びと勘違いしているらしく笑いながら受け流し、「僕のこと大好き?」も、親愛の意味での好意として受け取った。

僕が言っていることが全て本気だと言うことも知らずに。

でも――――――――――言質は取った。

 「じゃあ、この紙にサインしてくれる?」

 「ん?あ、ああ。いいよー」

 一応書類にも残しておこうと思い、彼女にサインを頼む。何の疑いもなくその書類にサインした純粋な彼女を見て、思わず笑みがこぼれる。

 「おねーちゃん、おとなになったらケッコンしてね。おねーちゃんにふさわしいおとこになってむかえに行くから、忘れないでね?」

 何度も何度も念を押し、あと少ししかない彼女との時間を噛み締めながらその姿を見つめる。
 そして、ついに決意し――――――――――――――

「ありがとう」

 最後に笑顔で彼女に別れを告げ、僕はそこを去った。



☆ ☆ ☆



 声が聞こえるほうに走っていくと、思っていた通り父と義母がいた。2人は僕の姿を見つけるなり、駆け寄ってきて抱きしめてくれた。涙を流して震える2人に僕は、

 「心配かけてごめんなさい。・・・ただいま」

 そう言って僕は2人に――――――――微笑んだ。

僕のその笑顔を見た瞬間、2人は固まった。

 「アルストロ・・・・おまえ・・・っ!わ、わらっ―――――!」

 そういうなり父は、片手で顔を抑えて涙を流した。

 「アル、ちゃん、が、わら、わわわ、わらって――――――――――――っっ!」

義母も言葉にならないのか、その場に泣き崩れた。

 ・・・無理もない。なぜなら僕はここ数年間、貴族社会に疲れ切って、全く笑わなかった。いや、笑えなかったんだ。
そんな僕が久しぶりに笑っている姿を見て安堵したのか、両親は泣きながらも嬉しそうな表情をしていた。

 しばらくしてまだ目に涙を浮かべてはいるが、ひとしきり落ち着いた両親は、真剣な表情をして今まで何があったのか聞いてきた。

 「お父様、僕ね、【森の聖女様】に会ったんだ」

 「・・・そうか。その森の聖女様とやらがおまえの心の傷を癒やしてくれたんだな。おまえに・・・笑顔をくれたんだな」

 父のその言葉に「うん。」と頷くと義母が、

 「それでアルちゃん。その、森の・・・聖女様?という方は一体・・・・・・?」

 義母のその言葉に、父もはっとしたように再び真剣な表情になる。僕はそんな2人にふふっと微笑むと、

 「彼女は“翡翠の瞳”をもっていました。・・・おわかりですよね?」

 僕のその言葉に、父も義母も一瞬固まった。だが、さすが父だ。再起動するのが早く、もういつもの思考を取り戻している。

 「【カーラインの翡翠】、か。でも何でこんな森にカーライン家の者が・・・っ!まさか、消えた令嬢!たしか誘拐されたという・・・」

 早くも答えにたどり着いた父に、僕はさらに追い打ちをかけた。

 「お父様、僕、彼女が欲しい」

 その言葉に目を見開いていた両親だったが、すぐに穏やかな顔に戻って僕のことを認めてくれた。

 「まあ、欲しいだなんて……。アルちゃんは、その方かたにメロメロなのねぇ」

 「人に興味がなかったおまえをそこまで虜にする人物だ。全力で、奪ってこい」

 そうとなれば、彼女から婚約の書類にサインしてもらわないとな、と言う父に僕は「ほら」と、さっきロゼットにサインしてもらった紙を取り出して、見せた。
 父は、準備がいいさすがは俺の息子だ、といってクスクス笑っていた。

 そう、さっきロゼットにサインしてもらった紙は、婚約の承諾書だ。本来は本人の同意というか、ちゃんとした意思がなければ無効なのだが・・・。まぁ、純粋な彼女のことだ。だまされたと知っても、口先で簡単に丸め込めるだろう。僕としては騙した気はないけど。
それに今後のためにも物証はあった方がいい。

 「だが、アルストロ。いずれ結婚する相手なら、こんな森の中ではなく、我が家へ迎え入れた方がいいんじゃないか?」

 突然の父が素朴な疑問を投げかけてきた。だけど彼女の様子からして、自らの意思でここに住んでいるようだった。だから彼女の意思を尊重し、このまま時が来るまではそっとしておいてあげたいという僕の気持ちを話したところ、お前がそう言うならと、両親は納得してくれた。

 そして僕は両親に手を繋がれて帰る。

僕の、家へ



(待っててねロゼット。僕が絶対に迎えに行くから。僕だけの、聖女様)



  ☆   ☆   ☆    ☆   ☆


その後の社交界では、雰囲気が変わり、よく笑うようになったアルストロのことで話が持ちきりになった。そしてどこぞのご令嬢が今のように変わった原因を聞いたところこういったと言う。

「アルダの【森の聖女様】に会ったんだよ」 と。

それ以来、アルダの森には聖女様がいるという噂が広まり、会ったこともない聖女を信仰、崇拝する信者たちが国中に急増したのであった・・・。

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