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本人無自覚の出会い編〈7歳~12歳〉
悪役聖女の人助け
しおりを挟むどうやって運ぼっかなぁ~。・・・あ!そうだ。
(リフィー!いる?)
《は~い、いるよぉ~。なになにどうしたのロゼット?といっても、おおかたその人をどうやって運ぶのか考えてなかったんでしょ。で、助けを求めてきたと》
心で呼びかけてみたが、どうやら伝わったらしい。異世界マジパネェ。
(・・・よく分かったね)
《まぁ、きみが何も考えないで何かするのはいつものことだしね》
なんか言葉にトゲを感じるけど・・・。その通りで今までも迷惑かけてきたから言い返せないぃぃぃ!
(と、とにかくそういうことだから、運ぶのをお願いできる?)
頼むと、何やかんや言ったものの協力してくれることとなった。それじゃあ任せて~というが早いが周囲の植物が淡く光り、急成長を始める。葉や枝を重ねてクッションを作り、怪我人をいたわるようにそっとのせた。植物の担架を蔓が支えて、そのまま運んでくれている。
後ろでこれを見ていた人達から「これは奇跡か・・・?」「まさに聖女だ・・・聖女様だ・・・」という声が上がっていたが、リフィーとの会話に集中していた私には聞こえなかった。
うっわぁ~~~。某ジ〇リ映画のラストシーンみたいだわ~。
でかいダンゴムシみたいなのが金の触手を出すときの、ラン ランララ ランランラン ラン ランラララーン♪ ってかんじのBGM流れてきそう。
そんなこんなしているうちに移動が開始し始めており、置いていかれそうになった私は慌ててついて行くのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
二人の骨折を治してあげた後、リフィーに指示して、重傷の人を私が普段寝るときに使っているベッドに寝かせる。
はぁぁ~~。ようやく一息つけるわ・・・
周りを見ると、自身の怪我が治り重傷だった仲間も一命を取り留めたからか緊張から解放されているのがわかった。すると、あの金髪イケメンが話しかけてきた。
「今回は自業自得といえるが、そのせいで貴女まで危険にさらしてしまって・・・申し訳ない」
そう言ったあと、頭を下げた。
「あ、頭を上げてください!謝ることなんてないです。私がほしいのは謝る言葉じゃないです」
「・・・!そう・・ですね。それでは改めて。貴女のおかげで誰も命を落とさずにすみました。そして骨折ていたはずの2人も全快。本当に・・・本当に、我々の命を救ってくれてありがとう」
「はいっ!」
私が元気よく頷くと、みんなが表情を緩めて笑ってくれた。
せっかくみんな助かったのに暗い雰囲気なんていやだもの。明るくなってよかった。
するとさっき骨折をしていた人達も私にお礼を言ってきた。顔色は良く、魔法が効いているようで安心だ。
「そういえばまだ名乗っていませんでしたね。私の名はキディリ。年は14。そしてさっき貴女が骨折を治したこの者達は私の護衛でゲルクとレヴィンです。そして今眠っているのがランス。彼も私と同じ年齢です。
事情があって家名は名乗れません。どうか許してください。
・・・失礼ですが、貴女の名前をお聞きしても?」
なるほど~、骨折組の人達はこの金髪イケメン・・・もといキディリさんの護衛だったのか。私が間に合ってほんとによかったわ。主人を守り切れずに他が生き残るとか精神的にクるもんね。
相手の挨拶がおわり、今度は私の番だ。家庭教師に7歳までみっちりやらされたカーテシーをしながら名乗る。この森に来てからも練習を続けたからか、今ではもう意識せずとも体が動いてくれるほどになっていた。
「私は12歳で、名前はロゼットです。この森で暮らしている普通の娘なので、そのようなことに気をつかわなくって結構です。ところで話は変わりますが、日が随分と落ちてきてしまいました。もしよかったら、今日はここの近くに野営でもどうでしょう。ここの周辺には魔物よけの結界が何重にも張ってありますし、ほかのところよりは安全かと。」
私がそう提案すると、有り難くそうさせてもらうとのことだった。
この話受けてくれてよかった~。もう外は薄暗い。こんな人たちを森に放り出して、次の日血まみれでそこらに転がってたーとか、絶対にいやだもん。
あと、私も家名は言わないようにしておいた。カーライン家の令嬢が生きているなんて知れたら連れ戻されるもの。
家名がなければ平民・・・なのかな?前世で読んでたラノベとかでは、平民には名字がないのが普通って書いてあったし、たぶんこの人達も私が名字を言わなければ平民だと思ってくれるよね。
テントは護衛組が持っているらしく、それを使うこととなった。
そして現在ベッドをランスさんに貸しているため、寝る場がない私のためにまでテントを張ろうとしていたので丁重に断る。
「お気遣いありがとうございます。ゲルクさん、レヴィンさん。ですが私はランスさんの容態が気になるのでそちらについていようと思うので結構です」
「ですが、さすがに一晩中つきっきりという訳にはいかないでしょう。昼間の戦闘であれだけの大技を使ったのですから、膨大な魔力を消費しているはず。休まなくては魔力が回復しませんよ?
それにあなたの体が心配です」
私がテントをいらないと言っていたら、キディリさんが会話に入ってきた。
それにしても・・・大技?あれが?魔力も今までの特訓で鍛えてきたから全っ然減ってないし、逆に魔法の練習になって丁度よかったくらいなんですけど?
私が年下の女の子だから気を遣ってくれてるのかな?
「お気遣いありがとうございます。しかし治癒魔法をかけたといえ、容態が悪化・・・はないと思いますけど、万が一に備えておきたいのです。
皆さんお疲れのようですし、私なら何かあっても対処できるので気にしないでください」
まぁ、メンバー的にも私が適任だと思うしね。
私は安心させるため、ニコッと微笑んだ。
それにさっきの治癒魔法は即興でなんとな~く創ったヤバい代物だから怖いんだよね!
見た目は綺麗に治ったけど中身を見たら内臓がぐちゃぐちゃのままでした~、とか怖すぎでしょっ!どこぞのホラーかッッ!
そうして私はドキドキしながらランスさんが寝ている私のベッドへ向かった。この胸の鼓動は一体何なのか!それは・・・血を見たくないからだ!!
・・・・・・・・リアルで。
すぷらったー、こわい。
洞窟の入り口にあるカーテンをシャッとひき、中をテントにいるキディリさん達から見えなくする。
「君は本当に、聖女のような人だな・・・」
キディリさんのその呟きは、私の耳には届かなかった。
__________________________________________________
1人で森に住んでる時点で普通の娘じゃないってことにはロゼットちゃんは気付いてないのですよ…!!
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