カゼとサバンナの物語~カゼとともに~

ヤナキュー

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26.居留地へ

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「あっはっはっはっはっ!」
 紘一は、車を運転しながら、腹がねじれんばかりに大笑いしていた。
「じゃあ、何か?
 カゼは、親父が哀れな子ザルに見えたから、助けたっていうのか?」
「それだって、立派なことじゃない。ねえ、カゼ?」
 と、清子がカゼに問いかける。
 カゼは、素知らぬふりをして、窓から、流れる大自然をながめていた。
 車の後ろ座席は、信二、清子に、カゼと子ザルが乗り込み、ギュウギュウ詰めだった。
 ライフル銃が置かれている助手席には、動物たちはもちろん、信二も清子も嫌がつて座らなかった。
「親父が……」
 紘一は、涙を拭きながら言った。
「うちの親父が、動物以下だってさ……」
 ヒーヒーと笑い転げる紘一を見て、信二が怒鳴った。
「笑ってないで、ちゃんと運転しろ!」
 突然の怒鳴り声に、サルが、キーキーと悲鳴を上げて、カゼの背中に張り付いた。
「静かにしろよ、親父。何にぶつかるんだよ、サバンナのど真ん中で」
 確かに、広がる大平原の中で、車をぶつける方が難しい。
 だが、そんなことはどうでもよかった。
 ただ単に、信二は、紘一のバカ話を打ち切りたかったのだ。
 信二は、カゼを見た。
 カゼのたてがみが揺れている。
 遠く平原を見つめる瞳は、美しかった。
 その美しい瞳を見ながら、 
 (カゼの命の光は、なぜ誰よりも強く輝くのだろう)
 と、疑問を抱いた。
 生きたい、という強い意志なら、どんな野生動物でも持っている本能だ。
 だが、信二には、カゼは生きる、ということとは別の目的があるように感じていた。
 生きることが目的なのではなく、目的を果たすために生き続けよう、としているように感じた。
 (それが、カゼから感じた、強い輝きの理由かもしれない)
 だが、その目的が何なのかは、わからない。
 (それはなんだろう…)
 信二が、そんな疑問を抱いているなど、つゆとも知らぬカゼは、気持ちよさそうに、窓の外をながめていた。
 その姿は、美しい彫像のようだった。
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