カゼとサバンナの物語~カゼとともに~

ヤナキュー

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42.嫌な臭い

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 その夜、カゼは、ランと子供たち二人と一緒に寝ていた。
 カゼは、二頭の子供たちが生まれてから、両親の夢を見なくなっていた。
 しかし、子供たちとランがいれば、夢を見なくても幸せな気持ちになれる。
 それで充分だった。
 かたわらに寝る子供たちの寝顔を、ランとながめているだけで、幸せだった。
 その時、クンと、嫌な臭いがカゼの鼻腔びくうに飛び込んできた。
 火薬の匂いだった。
 いや、それ以外にもいだことのない異臭がする。
 しかも、その匂いの出どころは一つではなかった。
 その匂いの出どころを探すため、カゼはゆっくりと立ち上がると、風上の匂いを捜索した。
 しかし、まだはっきりしない。
 カゼの本能が、逃げろ、と叫んだ。
 カゼは、子供を一頭咥えると、走り出した。
 ランも、もう一頭の子供を咥え、カゼに続いた。
 その時、銃声が響いた。
 ランが、ギャンと、悲鳴を上げ、倒れる。
 ランの咥えていた子供が、転がった。
 カゼは、慌ててランのもとに、走り戻る。
 その時、太陽のようにまぶしい光が、いくつもランを照らした。
 それは、車だった。
 何台もの車のヘッドライトが、ランの姿を暗闇から引きずり出した。
 走り寄るカゼの目の前で、何発もの銃弾が、ランを襲った。
 ランの美しい体が、血で真っ赤に染まる。
 人間の悪意、憎悪、狂気が、カゼの心を襲う。
 ランが絶命ぜつめいした、とみると、次はカゼにヘッドライトが向けられた。
 カゼは、二頭の子供を背中で守るように、堂々と立ち向かう意思を見せた。
 カゼの目の前には、ランの遺体が見える。
 それを見つめるカゼの眼差しは、悲しみに染まっていた。
 だが、カゼがいくら見つめようと、命の輝きは、二度とランの体からき出て来ることはなかった。
 改めて、カゼは四肢を踏ん張る。
 今までも、サバンナ中を走り回り、たくさんの子供たちを守ってきた。
 そして、すべて守り切った。
 カゼには、自信があった。
 四肢を踏ん張り、牙をむきだし、全ての力をぶつけてやる。
 だが、敵の攻撃は、今までとは全く違った。
 左右から同時に放たれた銃弾が、カゼの四本の足を同時に撃ち抜いたのだ。
 カゼは、たくわえていたすべての力を失い、その場に倒れ伏した。
 だが、敵は、それ以上、何の攻撃も仕掛けてこない。
 まるで、カゼが苦しむ姿を見て、喜んでいるか、のようだった。
 だが、カゼにはそんなことは、どうでもよかった。
 必死に四肢に力をみなぎらせ、ゆっくりと立ちあがる。
 カゼの四肢は、ブルブルと震え、今にも倒れそうだった。
 しかし、カゼは立ち上がる。
 我が子を助けるために。
 だが、凶悪で狂った悪意が、カゼの後ろに不意に現れた。
 カゼが、後ろを振り向いた瞬間、火薬の音と匂いがして、カゼの意識は途絶とだえた。
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