さよならの代わりは

野村にれ

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調査9

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「説得という説得はしていないように思います」
「そう。当時、聞いたとしても、王太子妃として当然だと思ったかもしれないわね」
「そうだな。何か思い出すことがあれば、言ってくれ」
「はい、思い出してみます」

 コレドールはリファスとレイピア、ブルーベルもオペリーク王国を離れていて正解だと感じていた。フェイリアも汲んでくれたのだろう。

 調査は続けられたが、調べることはできても、いずれは直接訊ねなければならないという話にもなっていた。そこへある方から、連絡があった。

「どうして、今さらあのようなことを訊ねられたのかと気になりまして、訪ねさせていただきました」

 そう言って、調査部を訪ねて来たのは、アイラーとサエリの診断を行ったローラ・ベリンス医師であった。

「別件で調べることがございまして、念のために確認をしたのです」
「そうですか……」
「何かありましたか?」

 腑に落ちない様子のベリンス医師に、何か確認の際にあったのだろうかと思った。

「診断書が問題になったのでしょうか?」
「いえ、確認をしたかっただけです。保管してあった複写も見せていただき、確認が取れております」

 診断書は複写になっており、病院側に一枚、患者側に一枚となっており、照らし合わせることもできている。だが、ララスに関してはシズート男爵家に一応、頼んではみたが、複写は見付かっていなかった。

「不正を疑っているのではありませんか?」
「どうして、そう思うのですか?」
「私も不正を疑う部分があるのです」
「不正を?」

 ベリンス医師の不正という言葉に、皆は集中した。

「私が診断したわけではないのですけど、年下の幼なじみが当院でブライダルチェックを受けたのです。幼なじみは当時、パシム侯爵家で働いておりまして」
「えっ」
「やはり、ララス殿下について調べてらっしゃいますか?」
「い、いえ」

 調査員はララスの名前が出たことで、思わず上ずってしまい、ベリンス医師は見逃さなかった。

「私も守秘義務があります。ですが、ずっと引っ掛かっていたことがありまして、話をさせていただきます。こちらのことも、そちらのことも必要なければ、なかったことにしませんか」
「分かりました」

 調査員もベリンス医師を信じて、話をする覚悟を決めた。

「まず、ララス殿下はお二人と一緒で診断書を提出されたのでしょうか?」
「そうです」
「ありがとうございます。幼なじみは、今はオック男爵家に嫁いだのでエミリー・サッジ、当時はエミリー・ファークと申します」

 調査員は別の調査員を見ると、パシム侯爵家のメイドにエミリー・ファークの名前があった。男爵家の令嬢であった。

「あります」
「エミリーは結婚を控えていて、婚約者は気にしないと言ってくれたそうですが、身体が弱い部分がありまして、妊娠について不安がありました。それで、ブライダルチェックを受けることになりました。さすがに私がするのは気恥ずかしいので、他の女性医師に任せました。問題はありませんでした」

 エミリーは自分が覚悟するために受けたいと言い、問題がなかったことには、彼の子どもを産めるかもしれないと涙を流して喜んだ。

「それで、その話をパシム侯爵家でメイドたちにも相談していたので、話をしたそうです。すると、ララス殿下の耳に入ったのか、自分も受けるのだけど、どのような検査を行うのかと訊ねられたそうです」
「ララス殿下に……」

 誰かを受けさせて、診断書を見せてもらったのかと思ったが、そうではなく話を聞いて思い付いたのではないかと考えた。

「はい、それでエミリーは検査のことを話したそうです」
「はい……」
「ここで終われば、何も思いませんでしたが、診断書を見せてもらえないかと言われたそうです」
「っ」

 いよいよ繋がりそうな内容に、その場にいた数人の調査員は息をのんだ。
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