さよならの代わりは

野村にれ

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対応5

「コロメ医師、何か把握しておくことはある?」
「診察ではないのですが、ブルーベル様の状況だけ確認させていただいてもよろしいですか?」
「はい、何でも聞いてください」

 リュメリー王国の医師は無理強いすることはないために、彼女も信用していた。

「今、ブルーベル様に代わろうとすることはできますか?代わったらどうなるか分かりますか?」
「できますが、意識を失うと思います」
「やはりそうですか……」

 コレドールも目の当たりにしていることから、そうだろうと思い頷いた。

「意識を失うのは良くないわよね?」
「はい、度々というのは負荷が掛かりますので良くないと考えます」
「そう」

 フェイリアは維持するためにと目覚めた彼女が言ったように、代ろうと試みることもあるのではないかと思い、会えて訊ねた。

「ブルーベル様は今、どのような状態か分かりますか?」
「あくまでイメージだと思っていただきたのですが、体を丸めて眠っているような感じでしょうか」
「外を断絶しているような感じでしょうか」
「はい……これはいつもですけど、外の声は聞こえない部屋にいるような状態です」

 真っ白の部屋で丸まっているブルーベルを彼女は今も感じていた。泣いてもいない、悲しんでもいない、ただただ何も考えずに眠っている。

「意思の疎通はできないと聞いておりますが、絶対に無理ですか?」
「したことがないので分かりません。怖くてできないというのが本心です」
「二人で支え合って生きていくということは難しそうですか?」
「ブルーベルは自分よりも他者を考える子ですから……あげるなんて言われたら、私がいる意味がなくなります」
「それは……そうですね」

 そんなことになれば、共倒れになってしまう。ブルーベルあってこその彼女であるために、目覚める希望がなければ頑張れなくなってしまうだろう。

「先生、一般的にはどのような治療が行われるのですか?」

 コレドールはコロメ医師に訊ねた。

「解離性同一障害の治療目標は、複数の人格を統合することです。統合が難しい場合は、人格同士の関係にコミュニケーションを促して協調性を持たせ、正常に役割を果たせる状態にすることです」
「なるほど……」

 コレドールは可能ならコロメ医師に言ったようになるのが一番いいのではないかと思ったが、ブルーベルには難しいかもしれないと判断した。

「病は人それぞれですが、心の病は特にそれぞれ違います。ブルーベル様の場合は目標はブルーベル様が目を覚まされて、これからも生きていくことですよね?」
「はい」

 コロメ医師の言葉にコレドールとフェイリアは戸惑ったが、彼女だけが迷いなく強く頷いた。

「そうなると、治療は要らないと言っては投げやりのように聞こえますが、どちらかというとブルーベル様が目を覚ました時にこれまでのことをどう説明するか、どう受け止めるかだと思います」
「そうね、何が起きたか分からない状態だものね。以前はどうだったのですか」
「以前は出産後でしたので、眠っている状態でした。ですが、既に五日経っていますから、ブルーベルがどう思うかは分かりません」

 彼女も三日で目覚めはしたが、ブルーベルが目を覚ませばすぐに代わるつもりだった。ゆえにこんなにも眠り続けることは今までなく、どうなってしまうのか。

 このまま本当に眠ったままだったらと想像もしたくなかった。

 コレドールとフェイリアとコロメ医師もここまで彼女も表に出ているのは初めてで、戸惑いながらも分からず怖いのだろうと受け止めた。


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本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は1日2回、投稿させていただきます。
次はいつもの17時です。

よろしくお願いいたします。

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