さよならの代わりは

野村にれ

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里帰り1

「ここに泊まるのか?」
「いえ、詳しい日程はまた知らせるということです。どうやら王家からも口添えがあったようですね」
「それで帰って来るのか……はあ、顔は見たくないが仕方ないか」
「王太子妃として凱旋だとでも思っているのかしら?それはそれで不愉快ね」
「だが、まだおかしいんだろう?」
「どうなのかしら……」

 ミジュリーが話をしたことはエズリラ侯爵家には知らされていないために、ブルーベルが今どのような状態かを知ることはない。

「それでもエースト殿下はお喜びになるはずです。明日、お伝えして参ります」

 アーサーは会う度にブルーベルの里帰りのことを言われて、その度にオペリーク王国に里帰りの願いを送っていた。

「仕方ないが王家のために我慢しよう」

 エズリラ侯爵家にとって吉報ではないが、王家に貢献できることは喜ばしいことであった。

 翌日、アーサーは許可を得て、エースト殿下に会うことになった。

「ブルーベルのことか?」
「王家にも連絡がございましたか?」
「ああ、エズリラ侯爵家から再三、願いがあったために一度だけ里帰りすることにしたと手紙が届いた。ようやく、帰って来るのだな」

 エーストは満足そうに笑っており、アーサーはブルーベルのことを考えると不快感があるが、ようやく肩の荷が下りた気分だった。

「はい」
「詳細はエズリラ侯爵家に知らせるとあったが、いつなんだ?」
「そちらはまた知らせるとのことでした」
「分かった、詳細が決まったらまた教えてくれ」

 そうして、連絡を待ちたくはないが待っていると、オペリーク王国から一週間後に赴くこと、その際にそちらに寄るとの手紙が届いた。

「一週間後だそうです」
「部屋の準備をしなくてはならないな」
「待ってください、寄るとあります。泊まる気はないのかもしれません」
「だが、里帰りなのだから……」
「一応、準備だけしておきましょうか」
「そうだな、顔を合わせたくないから泊まらない方がありがたいな」

 エーストにも一週間後と伝えて、ブルーベルの里帰りを思惑たっぷりで待つことになった。

 エズリラ侯爵家にやって来たのは、モモリとサリリ、護衛たちに、リュメリー王国からコロメ医師と書記官と護衛、そしてコレドールも一緒にやって来た。

 セイジーとリスリーとアーサーとその妻・クレイシーが出迎えた。

 ブルーベルが降りて来て顔を歪ませたが、コレドールの姿が見えて緊張感が走った。コレドールも一緒にとは書いていなかったためになぜという思いであった。

「よ、ようこそおいでくださいました」
「ああ」

 アーサーが挨拶を行い、ブルーベルは小さく会釈した。

「コレドール殿下もいらしていただけるとは思っておらず、歓迎いたします」
「来れるか分からなかったものだからな」
「さようでございますか、どうぞ中へ」

 一行はエズリラ侯爵家に入って行き、あれだけ顔を見たくないと言っていたのにブルーベルを凝視していた。

 応接室に案内されて、コレドールとブルーベルが隣り合って座り、向かいにアーサーとクレイシーが座ったが、何を話せばいいか分からなかった。

 コレドールは嫌味を含めて、何か話し始めることはしなかった。

 おかげで誰も何も話さないという時間が流れたが、アーサーが何か話さなければと感じた。

「どちらにお泊りになっているのでしょうか」

 馬車でやって来た一行は荷物などを下ろすこともなかったことから、アーサーはここに泊まる気はないのだろう察していた。

「ホテルを取っている」
「そうでしたか」
「それで里帰りをあれだけ何度も要望していたのだから、ブルーベルの顔が見れて満足か?」
「え、ええ、そうですね」

 ブルーベルは下を向いており、アーサーは戸惑ったようにと答えた。セイジーとリスリーもコレドールの手前何も言えずに黙ったままであった。

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