さよならの代わりは

野村にれ

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責務3

「決めるのはこちらではないと言っている。大袈裟でもない」
「そんなに怒ることでしょうか」

 キールスも分かっていたことだが、大したことではないと思っていることをまずは正さなくてはならないと考えた。

「お前は謝罪をして、それでも駄目なら慰謝料を支払えばいいとしか考えていなかった。だが、謝罪を受け入れないと決まっている。交流もできない。どうする?どうにもできないだろう?」
「ですが……」
「ではどうする?お前は人を使ってきた。モルゾフ王国に話を聞いてもらえるように助けてくれる相手がいるのか?」
「おります!」
「ならば、どうして頼まなかったのだ?」

 エーストはいないと言いたくなかったのもあるが、これでも王太子として他国とは交流は持っていた。

 だが、頼み込まなければいけない相手で、事情を話せば受け入れてくれるかは分からない。何も聞かずに助けてくれる相手はいない。だからこそ、オペリーク王国だったのである。

「事情を話せばなりませんから……勝手はできません」
「そのくらいは分かっていたのだな。恥を晒すことをして、願い出ることはできなかったか」

 事情を話せば、誤解だと言っても相手がちゃんと信じてくれるかは分からない。力になってくれないどころか、弱みを握られると考えたのである。

 その点、ブルーベルならどうにでもなると思ってのことであった。

「ですが、縁談です。断れてももう一度申し込むことで、そんなにも望んでくれていると受け取ってくれてもいいではありませんか」
「確かにスチュワート王太子殿下は特殊だろう。だが、婚約を熱心に申し込むのなら事情を知らないことがおかしいと思わないか?」
「それは……オペリーク王国も教えてくれてもいいではありませんか」

 キールスとリュエンザには、エーストがまるで駄々をこねる子どものように見えてきており、こんなものを王太子にしていたのかと情けなくなった。

「そのような関係性を築いていないだろう?誰が嫌がらせをしていたような人間に教える?お前なら教えるのか?」

 キールスとリュエンザだけでなくとも、エーストが教えるはずがないことは分かる。

「そもそもブルーベルが書いたものではない推薦状が問題なのだ」
「ですから」
「もう言い訳はいい。お前が都合よく使おうと思っていたことは分かっている」
「違うと言っているのにですか!」
「そうだ。エーストがいくら言っても、オペリーク王国が否定し、モルゾフ王国もオペリーク王国を信じた。それが全てだ」

 エーストはいくら違うということはできても、否定する証拠を持っていない。そうなれば、状況は変わらない。

「王太子として責任を取るべき、それが王太子という責務だと思うが、エーストは違うのか?」
「私はこれまでちゃんとやって来ました!」
「公務はきちんとやっていることは知っている。それは王太子として当然のことで、何をしてもいいわけではない。国内のことでも問題なのに、国外に迷惑を掛けたのだ。あり得ぬことだ……戦争にでもなったら、おまえがきっかけになる」

 結果だけを伝えて終わりにしても良かったが、エーストには納得をしてもらうことが親としての最後の務めだという思いだった。

「戦争なんて……」

 エルゲリータ王国もだが、モルゾフ王国も戦争を起こすような国ではない。だが、軍事力はお互いに持っている。だが、資金の部分ではモルゾフ王国には敵わない。

「同じようにスチュワート殿下に失礼なことをした王族がいたそうだ。その方は既に王家にはいない。それに習うべきだろう」
「……えっ、誰ですか」
「そこまでは知らない。だが、モルゾフ王国の使者がそのように教えてくださった」

 ララスのことであったが、使者は誰かまでは話さなかったが、いい見本になるだろうと王家から伝えるように言われていたのである。

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