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理由
ある日、領地の邸に現れた人にサリーは酷く驚いた。あの側に侍っていた令嬢、エマ・ネイリー子爵令嬢だった。
「申し訳ありませんでした」
「どういう意味でしょうか」
「私に言いたいことは沢山あると思いますが、まず私は王太子殿下の恋人でも何でもないのです。あなたに危害が及ばないように、あなたの代わりをしていたのです。よく耐えたと思います、あなたに目も向けず、冷たい素振りを続けて。まだ混乱していると思いますが、ある事件を炙り出すためだったのです。あの、」
エマはサリーが納得するか、喜ぶことを想像していたが、サリーは何も言葉を発する気がないようで、表情は変わらない。
「…私は、何と言えば正解なのでしょうか?」
「お心のままに」
「ありがとう?それとも、だから何?それとも、死んでくれない?」
「えっ?」
「あなたは殿下と共に歩んではいただけないのですか」
「殿下と共に歩むのは、サリー様だけです」
名前を呼ぶ許可も出していないのに、優秀な令嬢ではなかったのか。殿下の側に侍ると自分も偉くなった気になるのだろうか。
「私は、婚約破棄を受け入れるつもりです。これだけ大きく動いたのですから、今さら違うと言っても、口にした言葉、目に見たものは変わりません」
「待ってください。急なことで驚いたと思いますので、ゆっくり考えてください。落ち着けば、殿下が必ずお迎えに上がります」
「あなたのついでに?」
「違います!」
「ならば、あなたとの時間を使って欲しいとお伝えください。お願いします」
殿下からの手紙を無視し、領地に迎えにまで来た両親は満面の笑みだった。私には薄汚い化け物にしか見えなかった。
「良かったな、婚約は継続だ」
「解消してください」
「何を言っているのだ!すべてお前のためにやっていたんだぞ!あの子爵令嬢の親戚が犯罪に手を染めていて、王太子と懇意にしていると分かれば、近づいてくると踏んでいたんだ。お前も狙われていたそうだ」
「そうよ、馬鹿なこと言わないで」
にやにやとしている両親に苛立ちしかなかった。
「聞こえませんでしたか、解消してくれと言いました」
聞いたことのない低く大きな声に両親は驚いた。
「落ち着きなさい。くだらないことを言うな」
「そうよ、みんなあなたのためにやってくれたというのに。辛かったのは分かるけど、良かったじゃない」
エマの親戚である伯爵は、災害の復興の担当だったが、費用の横領をしていたそうだ。支援された者は見た目だけ行ったようにし、伯爵と共に懐に入れ、私腹を肥やしていたそうだ。しかも本当に困っている領地が後回しにされていた。
エマといるためには心変わりしたと思わせるのが一番で、金に目のない親戚は王太子の恋人ともなれば、甘い汁を吸おうと近づいて来るだろうと思っていたそうだ。案の定、会いに来て、王太子妃になれば、私が後ろ盾になると言ったようで、伯爵家に出入りをしている者や、お金の行方を調べていたそうだ。サリーも確かに狙われてはいたが、いずれ解消するからと吹き込んでいたようだ。
サリーは王都に無理やり戻され、リール殿下がわざわざやって来るようになった。仕方なかった、演技だった、だから本心ではない。どうやって証明ができるというのだろうか。私に心を見る魔法でもあれば、そうだったのかとなれるのだろうか。いや、それはない。
「すまなかった、辛かったであろう。私も辛かったのだ」
「…」
「怒っているよな、でも婚約破棄などと言わないでくれ。頼む」
「…」
「サリーのためでもあったのだ。エマから親戚が羽振りが良すぎると相談を受け、エマと二人で話しているところを見られて噂になったんだ。ならばこのまま関係があるように思わせて、証拠を掴もうということになったんだ。サリーに危害が及ぶ前に捕まえられて良かったよ」
エマがいたからこそ狙われていたのに、まるで正義の味方のような言い様である。
「私は解消を望んでいます。ネイリー様が私の代わりをしていたのでしょう?」
「代わり?エマがサリーの代わりになんてなれるはずないだろう」
あり得ない、なぜエマを代わりにしなければならないのか。
「私の代わりをしていたと仰っていましたよ?簡単なのでしょう?このまま、ネイリー様を婚約者にしてください。爵位くらいどうにでもなるでしょう?」
「何を言っている!彼女は関係ない!私が愛しているのはサリーだけだ」
「…私はもう愛していません。申し訳ございません」
「きつく当たったことで、傷付けたことは分かっている。私だって辛かった、でもどうか償いをさせて貰えないか」
「どうやって償うのです?時間を戻すことでも出来るのですか?なかったことにはならないのですよ?」
「意味のあることだったんだ、なかなか証拠が見付からなくて」
「そんな話はしていません。もう殿下の問題ではないのです…お引き取りください」
冷遇されていた間もサリーは手紙や贈り物をしていたが、殿下から返事や贈り物が来ることはなかった。そして償いと言いながら、何も持って来ていないように、用意すらしていなかったのだろう。
「申し訳ありませんでした」
「どういう意味でしょうか」
「私に言いたいことは沢山あると思いますが、まず私は王太子殿下の恋人でも何でもないのです。あなたに危害が及ばないように、あなたの代わりをしていたのです。よく耐えたと思います、あなたに目も向けず、冷たい素振りを続けて。まだ混乱していると思いますが、ある事件を炙り出すためだったのです。あの、」
エマはサリーが納得するか、喜ぶことを想像していたが、サリーは何も言葉を発する気がないようで、表情は変わらない。
「…私は、何と言えば正解なのでしょうか?」
「お心のままに」
「ありがとう?それとも、だから何?それとも、死んでくれない?」
「えっ?」
「あなたは殿下と共に歩んではいただけないのですか」
「殿下と共に歩むのは、サリー様だけです」
名前を呼ぶ許可も出していないのに、優秀な令嬢ではなかったのか。殿下の側に侍ると自分も偉くなった気になるのだろうか。
「私は、婚約破棄を受け入れるつもりです。これだけ大きく動いたのですから、今さら違うと言っても、口にした言葉、目に見たものは変わりません」
「待ってください。急なことで驚いたと思いますので、ゆっくり考えてください。落ち着けば、殿下が必ずお迎えに上がります」
「あなたのついでに?」
「違います!」
「ならば、あなたとの時間を使って欲しいとお伝えください。お願いします」
殿下からの手紙を無視し、領地に迎えにまで来た両親は満面の笑みだった。私には薄汚い化け物にしか見えなかった。
「良かったな、婚約は継続だ」
「解消してください」
「何を言っているのだ!すべてお前のためにやっていたんだぞ!あの子爵令嬢の親戚が犯罪に手を染めていて、王太子と懇意にしていると分かれば、近づいてくると踏んでいたんだ。お前も狙われていたそうだ」
「そうよ、馬鹿なこと言わないで」
にやにやとしている両親に苛立ちしかなかった。
「聞こえませんでしたか、解消してくれと言いました」
聞いたことのない低く大きな声に両親は驚いた。
「落ち着きなさい。くだらないことを言うな」
「そうよ、みんなあなたのためにやってくれたというのに。辛かったのは分かるけど、良かったじゃない」
エマの親戚である伯爵は、災害の復興の担当だったが、費用の横領をしていたそうだ。支援された者は見た目だけ行ったようにし、伯爵と共に懐に入れ、私腹を肥やしていたそうだ。しかも本当に困っている領地が後回しにされていた。
エマといるためには心変わりしたと思わせるのが一番で、金に目のない親戚は王太子の恋人ともなれば、甘い汁を吸おうと近づいて来るだろうと思っていたそうだ。案の定、会いに来て、王太子妃になれば、私が後ろ盾になると言ったようで、伯爵家に出入りをしている者や、お金の行方を調べていたそうだ。サリーも確かに狙われてはいたが、いずれ解消するからと吹き込んでいたようだ。
サリーは王都に無理やり戻され、リール殿下がわざわざやって来るようになった。仕方なかった、演技だった、だから本心ではない。どうやって証明ができるというのだろうか。私に心を見る魔法でもあれば、そうだったのかとなれるのだろうか。いや、それはない。
「すまなかった、辛かったであろう。私も辛かったのだ」
「…」
「怒っているよな、でも婚約破棄などと言わないでくれ。頼む」
「…」
「サリーのためでもあったのだ。エマから親戚が羽振りが良すぎると相談を受け、エマと二人で話しているところを見られて噂になったんだ。ならばこのまま関係があるように思わせて、証拠を掴もうということになったんだ。サリーに危害が及ぶ前に捕まえられて良かったよ」
エマがいたからこそ狙われていたのに、まるで正義の味方のような言い様である。
「私は解消を望んでいます。ネイリー様が私の代わりをしていたのでしょう?」
「代わり?エマがサリーの代わりになんてなれるはずないだろう」
あり得ない、なぜエマを代わりにしなければならないのか。
「私の代わりをしていたと仰っていましたよ?簡単なのでしょう?このまま、ネイリー様を婚約者にしてください。爵位くらいどうにでもなるでしょう?」
「何を言っている!彼女は関係ない!私が愛しているのはサリーだけだ」
「…私はもう愛していません。申し訳ございません」
「きつく当たったことで、傷付けたことは分かっている。私だって辛かった、でもどうか償いをさせて貰えないか」
「どうやって償うのです?時間を戻すことでも出来るのですか?なかったことにはならないのですよ?」
「意味のあることだったんだ、なかなか証拠が見付からなくて」
「そんな話はしていません。もう殿下の問題ではないのです…お引き取りください」
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