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敬遠
再度、サリーに申し訳ございません、出来ませんと招待状と案内を送ったが、文は回収されていたが、招待状と案内は戻って来てしまった。
グリズナー夫人は夫にもバレたくない、恥もかきたくないと、急病で欠席することにした。サリー宛ての文を侍女に持って行かせることにした。
「そう、それはお大事になさってください」
「招待状はどうすればよろしいでしょうか」
「宛名はグリズナー夫人でしたでしょう?私の手から既に離れておりますので、私に言われても困ります」
「えっ?どうしたら…」
「案内に書いてあったでしょう?」
バリミューア島での言語はカベリ語である。侍女はもちろん、グリズナー夫人も読めてすらいなかった。王家にも交流会にも代理として名前を上げられているグリズナー・トラス。侍女は慌てて戻り、グリズナー夫人に報告するも、案内を読むことも出来ず、欠席の報告の仕方も分からない。
王太子殿下に熱が出たため、急病にて欠席をしたいと文を持って行かせて、こちらで手続きをしておくということになって、ようやくホッとした。
「仮病だろうな」
「ええ、そうでしょうね」
「サリーは欠席だよな?」
「はい、招待客の名前もグリズナー・トラスになっていましたから、出席はされないでしょう」
「そうか、良かったのか、悪かったのか」
クリコットも島には同行はしたが、交流会には一人で参加することとなり、サリーがいないことで、産後なら仕方ないと言っていたが、皆が残念そうな顔をしていた。
さらに出席者に名前のあった代理のグリズナー・トラスのことも聞かれることになり、サリーを蔑んだ相手とは言えず、サリーが優秀だと聞いていたが、荷が重かったのか熱を出してしまったのだと誤魔化すしかなかった。
そしてグリズナー夫人の元には、スターチスの花束がお見舞いと称してサリーから届けられた。花言葉は「変わらぬ心」「途絶えぬ記憶」。
王子が誕生してから、初めての王太子殿下の誕生祭が開かれることになり、サリーは再び、代理にグリズナー・トラスを指名した。再び文が届き、グリズナー夫人も驚いたが、トール殿下も担当者から確認をされて驚いた。いくら権限でも、自身の誕生祭に他人の妻を伴うことは出来ない。
「サリー!いい加減にしろ」
『何の話でしょうか?何か不備がありましたか?(カベリ語)』
「代理の件だ」
『その件でしたら、クリコット様に殿下と話をする気はないと、お伝えいただいたはずですが?(アペラ語)』
「誰が自身の誕生祭に、他人の夫人を伴わなければならないんだ?伯爵にも失礼だとは思わないのか」
『話をする気はないと言いました(ノワンナ語)』
「では、誰となら話をする気があるんだ?」
『誰と話しても結果は同じです。私はこれまで一度も使いませんでしたが、利用して何が悪いのでしょうか?(カベリ語)』
「もういい!君は欠席でいい」
『さようですか(ビアロ語)』
「っ!」
クリコットは殿下を追いかけながら、報復としては極めて真っ当で、そして言語もノワンナ語しか聞き取れなかったが、おそらく意図的なものだろう。
そして殿下は一人で誕生祭に出席することになる。
「トラス伯爵夫人を呼び出して、誠心誠意、謝罪させろ。このままでは一生、代理がトラス夫人になる。そもそもが夫人のせいだろう」
「それはそうですね、でも何かが引っ掛かるのです」
「引っ掛かる?」
「ええ、夫人が妃殿下に蔑むようなことを言ったのは、何か驕りがあったからではありませんか?」
「ああ、夫人は私の閨の教育担当だった。だからだろうな、驕ったのだろう」
「そういうことでしたか」
グリズナー・トラス、当時はグリズナー・マディン。夫を亡くした未亡人だった。
当時、十五歳のトール殿下に、十歳年上の二十五歳の彼女は閨の担当となった。報酬が良かったのもあったが、本人も納得したもので、殿下の初めての相手でもある。閨の教育担当は公にされる者ではないので、一部の人間にしか知らされていない。
グリズナー夫人は夫にもバレたくない、恥もかきたくないと、急病で欠席することにした。サリー宛ての文を侍女に持って行かせることにした。
「そう、それはお大事になさってください」
「招待状はどうすればよろしいでしょうか」
「宛名はグリズナー夫人でしたでしょう?私の手から既に離れておりますので、私に言われても困ります」
「えっ?どうしたら…」
「案内に書いてあったでしょう?」
バリミューア島での言語はカベリ語である。侍女はもちろん、グリズナー夫人も読めてすらいなかった。王家にも交流会にも代理として名前を上げられているグリズナー・トラス。侍女は慌てて戻り、グリズナー夫人に報告するも、案内を読むことも出来ず、欠席の報告の仕方も分からない。
王太子殿下に熱が出たため、急病にて欠席をしたいと文を持って行かせて、こちらで手続きをしておくということになって、ようやくホッとした。
「仮病だろうな」
「ええ、そうでしょうね」
「サリーは欠席だよな?」
「はい、招待客の名前もグリズナー・トラスになっていましたから、出席はされないでしょう」
「そうか、良かったのか、悪かったのか」
クリコットも島には同行はしたが、交流会には一人で参加することとなり、サリーがいないことで、産後なら仕方ないと言っていたが、皆が残念そうな顔をしていた。
さらに出席者に名前のあった代理のグリズナー・トラスのことも聞かれることになり、サリーを蔑んだ相手とは言えず、サリーが優秀だと聞いていたが、荷が重かったのか熱を出してしまったのだと誤魔化すしかなかった。
そしてグリズナー夫人の元には、スターチスの花束がお見舞いと称してサリーから届けられた。花言葉は「変わらぬ心」「途絶えぬ記憶」。
王子が誕生してから、初めての王太子殿下の誕生祭が開かれることになり、サリーは再び、代理にグリズナー・トラスを指名した。再び文が届き、グリズナー夫人も驚いたが、トール殿下も担当者から確認をされて驚いた。いくら権限でも、自身の誕生祭に他人の妻を伴うことは出来ない。
「サリー!いい加減にしろ」
『何の話でしょうか?何か不備がありましたか?(カベリ語)』
「代理の件だ」
『その件でしたら、クリコット様に殿下と話をする気はないと、お伝えいただいたはずですが?(アペラ語)』
「誰が自身の誕生祭に、他人の夫人を伴わなければならないんだ?伯爵にも失礼だとは思わないのか」
『話をする気はないと言いました(ノワンナ語)』
「では、誰となら話をする気があるんだ?」
『誰と話しても結果は同じです。私はこれまで一度も使いませんでしたが、利用して何が悪いのでしょうか?(カベリ語)』
「もういい!君は欠席でいい」
『さようですか(ビアロ語)』
「っ!」
クリコットは殿下を追いかけながら、報復としては極めて真っ当で、そして言語もノワンナ語しか聞き取れなかったが、おそらく意図的なものだろう。
そして殿下は一人で誕生祭に出席することになる。
「トラス伯爵夫人を呼び出して、誠心誠意、謝罪させろ。このままでは一生、代理がトラス夫人になる。そもそもが夫人のせいだろう」
「それはそうですね、でも何かが引っ掛かるのです」
「引っ掛かる?」
「ええ、夫人が妃殿下に蔑むようなことを言ったのは、何か驕りがあったからではありませんか?」
「ああ、夫人は私の閨の教育担当だった。だからだろうな、驕ったのだろう」
「そういうことでしたか」
グリズナー・トラス、当時はグリズナー・マディン。夫を亡くした未亡人だった。
当時、十五歳のトール殿下に、十歳年上の二十五歳の彼女は閨の担当となった。報酬が良かったのもあったが、本人も納得したもので、殿下の初めての相手でもある。閨の教育担当は公にされる者ではないので、一部の人間にしか知らされていない。
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