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暴露
夫人に久しぶりにまじまじと対峙した殿下は、当時よりも十キロ以上ふくよかになっており、一瞬別人かと思ったほどであった。
「夫人の言ったことを、妃に謝罪してくれ」
「申し訳ございません。ですが、私ほとんど憶えていないのです。妃殿下が記憶力が良いのは存じておりますが、どこを謝れば良いのか」
「言った方は憶えていないというのは、蔑むようなことを言った証拠だろう」
嫌味を言った方が憶えていなくとも、言われた方は憶えているのが、世の常だ。
「いえ、そのようなことは」
「殿下とは年齢が合わなかっただけで、本来なら私の方が王家に相応しかったと言ったのだろう?」
「そのことも憶えていないのです」
「はあ、嘘なのか知らないが、閨の教育担当で驕ったのか?自分は魅力的だと勘違いしたのか?」
「いえ、そのようなことは」
「だがな、サリーは夫人を代理に立て続けるぞ?仮病も毎回は使えない、夫人に出来るのか?各国の集まる会議、交流会、学会」
「誕生祭でしたら、お役に立てるかと…」
交流会は無理だと思ったが、母国の誕生祭ならば指名されたのなら、立つのもやぶさかではないと思っていた。指名なのだから、拒否は出来ないだろうと、交流会のことはすっかりなかったように考えており、周りから羨ましいと思われることなのではないか、夫も義息子も娘も、誇らしいと思ってくれるのではないか。正直、女性に生まれた以上、一度は立ってみたかった場所である。
「は?夫人は何ヶ国語、話せるのだ?」
「あの、トワイ語のみです」
「愚か者が…誕生祭には他国の者も来るんだぞ?外国語で話し掛けられたら?夫人はサリーより相応しかったと言って、代理に立たされているのだ。分からないのか?」
「っ、それは。代理ですから、通訳を付ければ」
「まあ、代理だから通訳は問題ないが、外国語は一つも話せないのに、相応しいと言ったことになる」
「あっ、それは…」
グリズナーはようやく自身の立場を知った。横に立って、優雅に微笑んでいるだけでは足りない。サリー王太子妃と比べられるのだ。娘はまだ幼いが、義息子には誤魔化せない。継母ということで、娘が緩衝材となって、折角上手く家族になれたと思っていたのに、まさかこんなところで崩れるわけにはいかない。
「トラス伯爵にも嫡男にも、娘にも夫人のせいで迷惑が掛かることになる、分かるな?きちんと謝罪してくれ」
「承知しました」
三人でサリーの宮に応接室に行くと、既に待っており、グリズナー夫人はサリーに向かって、深く頭を下げた。
「申し訳ございませんでした」
「何の謝罪かしら?一度、吐いた言葉は消えませんよ?(カベリ語)」
「あの、その」
「何の謝罪かと聞いております(アペラ語)」
「サリー、夫人はトワイ語しか出来ない」
「まあ、皆、同じね(ノワンナ語)」
「失礼なことを申しまして、不快にさせたことを大変申し訳なく思っております」
「何を言ったか、憶えているの?」
「全てではありませんが、私が相応しいなどと…」
「あとは?」
「…」
サリーは整理するように頭を軽く振ると、一気に喋り始めた。
「『頭の出来が良いだけで、殿下の横に立つのって怖くないのかしら?意外と強い心を持ってらっしゃるのかしら?』とか『語学が出来るからっていい女ってわけじゃないのよ?お分かり?』とか、これは同じ日だったわね、えっと六年前の八月三十日のスワン公爵の夜会でした、あなたは薄いオレンジ色の大きく胸元の開いたドレスを着ていて、周りから裸に見えるとコソコソ言われていた日。憶えてらっしゃる?」
グリズナー夫人はめかし込んで来たはずのドレスを握りしめ、真っ青になっており、目の焦点すら合っていなかった。
「あとは『私の柔肌のもち肌に殿方は吸い付くのよ、リール殿下もお気に召してね、吸い付いて離れなかったのだから。あなたで満足できるのかしら?私、心配だわ』とかね、これは六年前の十月九日のリビター侯爵家の夜会ね、あなたは薄紫色のまた胸元が大きく開いたドレスを着ていて、周りから腐ったような色だとコソコソ言われていた日。憶えてらっしゃる?」
サリーは捲し立てるように話し、もはや誰も声が出せなかった。
「あとは」
「もう…もう止めてください、申し訳ございませんでした」
「吐いた言葉は戻らないの。消えないわ、だって、私は記憶力が良いんですもの。そうでしょう?」
「夫人の言ったことを、妃に謝罪してくれ」
「申し訳ございません。ですが、私ほとんど憶えていないのです。妃殿下が記憶力が良いのは存じておりますが、どこを謝れば良いのか」
「言った方は憶えていないというのは、蔑むようなことを言った証拠だろう」
嫌味を言った方が憶えていなくとも、言われた方は憶えているのが、世の常だ。
「いえ、そのようなことは」
「殿下とは年齢が合わなかっただけで、本来なら私の方が王家に相応しかったと言ったのだろう?」
「そのことも憶えていないのです」
「はあ、嘘なのか知らないが、閨の教育担当で驕ったのか?自分は魅力的だと勘違いしたのか?」
「いえ、そのようなことは」
「だがな、サリーは夫人を代理に立て続けるぞ?仮病も毎回は使えない、夫人に出来るのか?各国の集まる会議、交流会、学会」
「誕生祭でしたら、お役に立てるかと…」
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「は?夫人は何ヶ国語、話せるのだ?」
「あの、トワイ語のみです」
「愚か者が…誕生祭には他国の者も来るんだぞ?外国語で話し掛けられたら?夫人はサリーより相応しかったと言って、代理に立たされているのだ。分からないのか?」
「っ、それは。代理ですから、通訳を付ければ」
「まあ、代理だから通訳は問題ないが、外国語は一つも話せないのに、相応しいと言ったことになる」
「あっ、それは…」
グリズナーはようやく自身の立場を知った。横に立って、優雅に微笑んでいるだけでは足りない。サリー王太子妃と比べられるのだ。娘はまだ幼いが、義息子には誤魔化せない。継母ということで、娘が緩衝材となって、折角上手く家族になれたと思っていたのに、まさかこんなところで崩れるわけにはいかない。
「トラス伯爵にも嫡男にも、娘にも夫人のせいで迷惑が掛かることになる、分かるな?きちんと謝罪してくれ」
「承知しました」
三人でサリーの宮に応接室に行くと、既に待っており、グリズナー夫人はサリーに向かって、深く頭を下げた。
「申し訳ございませんでした」
「何の謝罪かしら?一度、吐いた言葉は消えませんよ?(カベリ語)」
「あの、その」
「何の謝罪かと聞いております(アペラ語)」
「サリー、夫人はトワイ語しか出来ない」
「まあ、皆、同じね(ノワンナ語)」
「失礼なことを申しまして、不快にさせたことを大変申し訳なく思っております」
「何を言ったか、憶えているの?」
「全てではありませんが、私が相応しいなどと…」
「あとは?」
「…」
サリーは整理するように頭を軽く振ると、一気に喋り始めた。
「『頭の出来が良いだけで、殿下の横に立つのって怖くないのかしら?意外と強い心を持ってらっしゃるのかしら?』とか『語学が出来るからっていい女ってわけじゃないのよ?お分かり?』とか、これは同じ日だったわね、えっと六年前の八月三十日のスワン公爵の夜会でした、あなたは薄いオレンジ色の大きく胸元の開いたドレスを着ていて、周りから裸に見えるとコソコソ言われていた日。憶えてらっしゃる?」
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「あとは『私の柔肌のもち肌に殿方は吸い付くのよ、リール殿下もお気に召してね、吸い付いて離れなかったのだから。あなたで満足できるのかしら?私、心配だわ』とかね、これは六年前の十月九日のリビター侯爵家の夜会ね、あなたは薄紫色のまた胸元が大きく開いたドレスを着ていて、周りから腐ったような色だとコソコソ言われていた日。憶えてらっしゃる?」
サリーは捲し立てるように話し、もはや誰も声が出せなかった。
「あとは」
「もう…もう止めてください、申し訳ございませんでした」
「吐いた言葉は戻らないの。消えないわ、だって、私は記憶力が良いんですもの。そうでしょう?」
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