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慚愧
グリズナーは離縁されても仕方ないと思っていたが、別邸に移るだけでいいとは思わなかった。メイドは必要外は来なくなってしまったが、場所が変わっただけで、娯楽はないが、特に困ることもない。
毎日、同じ生活である。そんな日々を過ごしていると、社交界から追放されただけで、邸では今まで通りでも良いのではないかと思い始め、思い切って夫に話したいことがあると呼んで貰うことにした。
「あの、大人しくしますから、本邸で暮らすことは出来ませんか。娘も寂しがっているのではありませんか」
「君は反省していないのか?」
「反省しております、ですが邸では今まで通りでも良いのではありませんか」
「はあ…」
これを読みなさいと手渡された紙には、グリズナーがサリーを蔑んだ言葉が敷き詰められていた。確かに一度や二度ではない、会う度に言っていた。でも皆も言っていたのではないか。一緒にいた者もクスクス笑っていたではないか。なぜ私だけが今さらこんな目に遭うのか。
「っな、これを妃殿下が?酷い…」
「酷い?どちらのことを言っているんだ?まさか自身の事ではないだろうな?」
「あの、いえ、でも今さらバラさなくたっていいとは思いませんか」
「は?私は謝罪を兼ねて、聞きに行ったんだ。それがこれだよ、棘どころか、棘しかない言葉、蔑んでしかいない言葉。吐き気がしたよ。閨の教育の担当だったのも、殿下から伺った。それで己惚れたのか?殿下は恥だと言っていたよ、私も君は恥だ」
まだ足りずに送られてきたのかと思っていたが、まさかわざわざ会いに行っていたとは思わなかった。
「…そんな、でも私も若くて」
「六年前、二十五歳の未亡人。若くてという言葉を使える年齢か?よくも十五歳の妃殿下にそんなことが言えたものだ。妃殿下はどんな顔をしていた?」
「でもこれが全て真実だとは」
「嘘を書いて妃殿下に何の得がある?それとも私に事実か聞いて回れと言うのか?」
「私に復讐を」
「されても仕方ないことを言っているではないか!君にはこの紙を妃殿下の前で読まされた私の気持ちが分かるのか!」
トラス伯爵がグリズナーに声を荒げたのは初めてのことであった。静かに反省していれば、全てを受け入れれば、このまま見届けようと思っていたが、これで間違いなくグリズナーが言ったのだと確信出来た。
「っひ!」
「妃殿下は記憶力がいい、ずっと君のこの汚物のような言葉を忘れられないということが分からないのか!」
「汚物…でもそれは、私も夫を亡くして」
「夫を亡くしたから、妃殿下を蔑んでもいいと言う決まりがあるのか?あと王太子殿下のことも勝手に名前を呼んでいたそうだな?許可を出していないと仰っていた。もし、君のせいで婚約を解消になっていたら、君は責任が取れたのか?」
「…それは」
当時、拗れるのではないかと期待したが、何も起こらなかった。結局は結婚し、側妃を娶った時も、やはり魅力がなかったのだとほくそ笑んだのだ。咎められるようなこともなかったのだからと、またサリーにも嫌味を言った、しっかり書かれている。責任を追及されていたかもしれないなどと考えたこともなかった。
「それほどのまでのことをしたんだよ。交流会のことも聞いた、しっかりと名前が載っていたよ」
「あの時は、その、具合が悪くて」
「仮病だろう、殿下も妃殿下も分かっている。まあ、出すことはなかっただろうな。殿下の恥でしかない。君の選択肢は黙ってここにいるか、実家に帰るかだけだ。どちらにせよ大人しく、反省すること以外、君に与える気はない」
「実家…」
「連帯責任として、ご実家にも事情を話してある」
「あっ、あああ、その紙は…」
「ご両親にも読んでいただいた。義母上は自分たちの責任だと仰っていたよ。私の母も同じ女性として、軽蔑すると言っていた。そして君の発言はいずれ子どもたちにも見せる」
「待ってください、それだけは…お願いです」
グリズナーは義息子は無理でも、いずれ娘が助けてくれるはずだと心のどこかで思っていた。伏して頭を下げたが、トラス伯爵は冷めた目で見つめるだけだった。
「あの子たちには知る権利があるだろう?なぜ君は追放されたのか、自分の娘が同じように十歳も年上の女性に言われたらどう思う?しかも君は子爵令嬢、伯爵夫人でしかなかったのに、よくも侯爵令嬢に王太子妃殿下に言えたものだな?君が出来ることは妃殿下に心から謝罪し、反省することだけだ」
グリズナーは再び、崩れ落ちることになり、その後はただ静かに過ごした。才女と呼ばれるサリーを見下すことでの得る一時の快感で全てを失った。
「マリーズは…仕方ないわね。となると、次はミアローズ・エモンドね」
サリーは再び、次の矢を放とうとしていた。
毎日、同じ生活である。そんな日々を過ごしていると、社交界から追放されただけで、邸では今まで通りでも良いのではないかと思い始め、思い切って夫に話したいことがあると呼んで貰うことにした。
「あの、大人しくしますから、本邸で暮らすことは出来ませんか。娘も寂しがっているのではありませんか」
「君は反省していないのか?」
「反省しております、ですが邸では今まで通りでも良いのではありませんか」
「はあ…」
これを読みなさいと手渡された紙には、グリズナーがサリーを蔑んだ言葉が敷き詰められていた。確かに一度や二度ではない、会う度に言っていた。でも皆も言っていたのではないか。一緒にいた者もクスクス笑っていたではないか。なぜ私だけが今さらこんな目に遭うのか。
「っな、これを妃殿下が?酷い…」
「酷い?どちらのことを言っているんだ?まさか自身の事ではないだろうな?」
「あの、いえ、でも今さらバラさなくたっていいとは思いませんか」
「は?私は謝罪を兼ねて、聞きに行ったんだ。それがこれだよ、棘どころか、棘しかない言葉、蔑んでしかいない言葉。吐き気がしたよ。閨の教育の担当だったのも、殿下から伺った。それで己惚れたのか?殿下は恥だと言っていたよ、私も君は恥だ」
まだ足りずに送られてきたのかと思っていたが、まさかわざわざ会いに行っていたとは思わなかった。
「…そんな、でも私も若くて」
「六年前、二十五歳の未亡人。若くてという言葉を使える年齢か?よくも十五歳の妃殿下にそんなことが言えたものだ。妃殿下はどんな顔をしていた?」
「でもこれが全て真実だとは」
「嘘を書いて妃殿下に何の得がある?それとも私に事実か聞いて回れと言うのか?」
「私に復讐を」
「されても仕方ないことを言っているではないか!君にはこの紙を妃殿下の前で読まされた私の気持ちが分かるのか!」
トラス伯爵がグリズナーに声を荒げたのは初めてのことであった。静かに反省していれば、全てを受け入れれば、このまま見届けようと思っていたが、これで間違いなくグリズナーが言ったのだと確信出来た。
「っひ!」
「妃殿下は記憶力がいい、ずっと君のこの汚物のような言葉を忘れられないということが分からないのか!」
「汚物…でもそれは、私も夫を亡くして」
「夫を亡くしたから、妃殿下を蔑んでもいいと言う決まりがあるのか?あと王太子殿下のことも勝手に名前を呼んでいたそうだな?許可を出していないと仰っていた。もし、君のせいで婚約を解消になっていたら、君は責任が取れたのか?」
「…それは」
当時、拗れるのではないかと期待したが、何も起こらなかった。結局は結婚し、側妃を娶った時も、やはり魅力がなかったのだとほくそ笑んだのだ。咎められるようなこともなかったのだからと、またサリーにも嫌味を言った、しっかり書かれている。責任を追及されていたかもしれないなどと考えたこともなかった。
「それほどのまでのことをしたんだよ。交流会のことも聞いた、しっかりと名前が載っていたよ」
「あの時は、その、具合が悪くて」
「仮病だろう、殿下も妃殿下も分かっている。まあ、出すことはなかっただろうな。殿下の恥でしかない。君の選択肢は黙ってここにいるか、実家に帰るかだけだ。どちらにせよ大人しく、反省すること以外、君に与える気はない」
「実家…」
「連帯責任として、ご実家にも事情を話してある」
「あっ、あああ、その紙は…」
「ご両親にも読んでいただいた。義母上は自分たちの責任だと仰っていたよ。私の母も同じ女性として、軽蔑すると言っていた。そして君の発言はいずれ子どもたちにも見せる」
「待ってください、それだけは…お願いです」
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「あの子たちには知る権利があるだろう?なぜ君は追放されたのか、自分の娘が同じように十歳も年上の女性に言われたらどう思う?しかも君は子爵令嬢、伯爵夫人でしかなかったのに、よくも侯爵令嬢に王太子妃殿下に言えたものだな?君が出来ることは妃殿下に心から謝罪し、反省することだけだ」
グリズナーは再び、崩れ落ちることになり、その後はただ静かに過ごした。才女と呼ばれるサリーを見下すことでの得る一時の快感で全てを失った。
「マリーズは…仕方ないわね。となると、次はミアローズ・エモンドね」
サリーは再び、次の矢を放とうとしていた。
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