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崩落
正気なのはサリーだけという、あまりに混沌とした状態に奮い立たせたクリコットが願い出ることにした。
「妃殿下、殿下に話をするチャンスを与えてはいただけませんか」
「私は特に話すこともないのだけど」
「私にはある、お願いだ…」
殿下は座ったままではあるが、頭を深く下げており、表情は分からないが、頭を上げる気配すらない。
「アズラー夫人は娘さんを連れてお帰りいただけますか。今日のことは、そちらも関係者ですから、どうされるか結論を出されるべきでしょう」
「はい、夫と相談いたします」
アズラー夫人は無言で深くサリーに頭を下げて、まともに歩けないルアンナを支える気もなく、しっかり歩きなさいと叱咤しながら連れ帰って行った。
クリコットとリビアナも席を外し、部屋にはサリーとリール殿下だけとなった。
「すまなかった、謝罪を受け取らないと言われたのに、謝罪しか出来ない。知っていたのだな、彼女にも婚約者がいたが、私にもサリーがいたのに…あのような言葉も、サリーが言われていい言葉ではない」
サリーは聞いてはいるが、まるで興味のない顔をしている。
「私が欲に負けて、愚かだったとしか言いようがない。傷付けてすまなかった。逆だったらと考えれば、答えは簡単に出るはずだった。私に出来ることは何でもする。許して欲しいと言ったりはしない」
「何でも?」
「ああ、希望があれば言って欲しい。父上に全て話して許可を取る」
「そうね、籠の中で出来ることは限られるけど、翻訳を最優先にしたいわね。いずれは全てレベッカ様にお任せしようと思っているわ、どうかしら?」
レベッカは頑張ってはいるようだが、出来ると言っていたノワンナ語ですら躓いて、まだ残りの二ヶ国語は学んでもいないと聞いている。
「国際会議は…」
「ええ、国際会議は後任が現れるまでは出ましょう」
「ありがとう」
国際会議では、サリーは通訳はもちろんのこと、それぞれの発言を議事録にまとめる役を担っており、代理では到底出来ない。
「代理はもう立てなくていい、サリーは出たくない時は欠席でいい。文句は言わせない。私と並ぶのも苦痛だろう」
「そうね、ルアンナの次もいたのですけど、欠席でいいなら仕方ないわね。皆、快く受けると思ったのに、押し掛けられて、時間を取られるとは思わなかったわ」
「次は、誰だったんだい?よければ、誰か教えて貰えるか…」
「カリー・カイサック」
「えっ」
「今は、結婚してカリー・ロイルね」
「男爵令嬢がサリーに酷いことを言ったのか、あり得ないだろう」
カリー・カイサックは一つ年下の男爵令嬢だった、現在はロイル子爵家に嫁いでおり、学園でも夜会でもサリーが顔を合わせることもまずないと考えていいはずだ。
「ねえ、そろそろ気付いたら?」
「どう、いう、意味、だい?」
サリーが口角だけを上げ、不敵な笑みを浮かべているのを初めて見て、背中に嫌な汗が流れた。
「グリズナー夫人、ミアローズ・エモンド、ルアンナ・アズラー、ミアローズの前に男爵令嬢のマリーズ・ヒルダが本当はいたのよ?」
「っな、まさか…」
「ふふふ、私が王太子妃に相応しいと発言した人物で、どういう並びで代理にしようかと思っていたの。だから、あなたを基準に並べたら丁度良かったの」
グリズナー夫人は閨の教育担当だった、ミアローズは興奮剤のせいだと、ルアンナは最後までしていないと、頭のどこかで言いわけをしていた。
「私が不貞を行った相手…だと言うのか。だが、ミアローズのことは公にされていないはずだ、どうして…」
「全員、隠されていたはずの間違いでしょう?」
「ああ、そうだな…だが、ミアローズのことは私の責任ではない。知っているなら、あれはミアローズに襲われたのだ」
「でもミアローズにマリーズのことで脅されたでしょう?だから出入り禁止にはなったけど、罰されることはなかった、そうでしょう?」
「どこまで知っているんだ…」
思わず口から出ていた、情報はサリーの記憶力とは関係がない。
「妃殿下、殿下に話をするチャンスを与えてはいただけませんか」
「私は特に話すこともないのだけど」
「私にはある、お願いだ…」
殿下は座ったままではあるが、頭を深く下げており、表情は分からないが、頭を上げる気配すらない。
「アズラー夫人は娘さんを連れてお帰りいただけますか。今日のことは、そちらも関係者ですから、どうされるか結論を出されるべきでしょう」
「はい、夫と相談いたします」
アズラー夫人は無言で深くサリーに頭を下げて、まともに歩けないルアンナを支える気もなく、しっかり歩きなさいと叱咤しながら連れ帰って行った。
クリコットとリビアナも席を外し、部屋にはサリーとリール殿下だけとなった。
「すまなかった、謝罪を受け取らないと言われたのに、謝罪しか出来ない。知っていたのだな、彼女にも婚約者がいたが、私にもサリーがいたのに…あのような言葉も、サリーが言われていい言葉ではない」
サリーは聞いてはいるが、まるで興味のない顔をしている。
「私が欲に負けて、愚かだったとしか言いようがない。傷付けてすまなかった。逆だったらと考えれば、答えは簡単に出るはずだった。私に出来ることは何でもする。許して欲しいと言ったりはしない」
「何でも?」
「ああ、希望があれば言って欲しい。父上に全て話して許可を取る」
「そうね、籠の中で出来ることは限られるけど、翻訳を最優先にしたいわね。いずれは全てレベッカ様にお任せしようと思っているわ、どうかしら?」
レベッカは頑張ってはいるようだが、出来ると言っていたノワンナ語ですら躓いて、まだ残りの二ヶ国語は学んでもいないと聞いている。
「国際会議は…」
「ええ、国際会議は後任が現れるまでは出ましょう」
「ありがとう」
国際会議では、サリーは通訳はもちろんのこと、それぞれの発言を議事録にまとめる役を担っており、代理では到底出来ない。
「代理はもう立てなくていい、サリーは出たくない時は欠席でいい。文句は言わせない。私と並ぶのも苦痛だろう」
「そうね、ルアンナの次もいたのですけど、欠席でいいなら仕方ないわね。皆、快く受けると思ったのに、押し掛けられて、時間を取られるとは思わなかったわ」
「次は、誰だったんだい?よければ、誰か教えて貰えるか…」
「カリー・カイサック」
「えっ」
「今は、結婚してカリー・ロイルね」
「男爵令嬢がサリーに酷いことを言ったのか、あり得ないだろう」
カリー・カイサックは一つ年下の男爵令嬢だった、現在はロイル子爵家に嫁いでおり、学園でも夜会でもサリーが顔を合わせることもまずないと考えていいはずだ。
「ねえ、そろそろ気付いたら?」
「どう、いう、意味、だい?」
サリーが口角だけを上げ、不敵な笑みを浮かべているのを初めて見て、背中に嫌な汗が流れた。
「グリズナー夫人、ミアローズ・エモンド、ルアンナ・アズラー、ミアローズの前に男爵令嬢のマリーズ・ヒルダが本当はいたのよ?」
「っな、まさか…」
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「全員、隠されていたはずの間違いでしょう?」
「ああ、そうだな…だが、ミアローズのことは私の責任ではない。知っているなら、あれはミアローズに襲われたのだ」
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