【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ

文字の大きさ
78 / 203
番外編1

ミアローズ・エモンド2

 そして、咎める者が同世代にいないこともあるが、他の令嬢には友人を利用して、蔑んだり、貶めたりすることが、上手だった。

「そのドレス、サイズが合っていないのではなくて?」
「えっ、あの」
「私がお貸しいたしましょうか」
「ミアローズ様、ミアローズ様のドレスが合うはずないではありませんか」
「あら、そうね、ごめんなさいね。失礼なことを言ってしまったわね」
「ミアローズ様が謝ることはありません。サイズの合っていないドレスを着て来るのが悪いのです」

 その令嬢は急遽出席にすることになって、借りたドレスの胸部が足りず、詰め物をしていたのだ。それに気付いたミアローズは、辱めるためだけにそのような言葉を言い、そんなつもりではなかったのよと、そんなことを繰り返していた。

 ただ、サリーには初めて会った時から、暴言を吐いた。ミアローズの中で攻撃していい相手だと勝手に認定していたのだ。

「何よ、こんなちんちくりんが婚約者だなんて」

「お姫様は私なの。私以外、あり得ないの。みーんな私を美しいと言うのよ?あなたは言われている?言われているはずがないわよね」

 ミアローズとサリー、どちらも美しい。どちらかと言えば、好みの話になるだろう。だが、自他ともに美しいと呼ばれれているミアローズと、言われる機会のなかったサリーだっただけである。

 サリーはただただ申し訳ございませんと謝り続け、別に心を込めて謝罪する必要はない。謝れば、ミアローズは満足するのだ。

 縁談の方は公爵家の伝手でいくつかの王族に会うことは出来たが、第一印象は良くても、どんどん減点されて、最終的にはやはり言葉が分からないという理由で断られてしまう。母国の他の貴族から縁談はあったが、格下であるためミアローズは受け入れることはなく、高望みしたまま、一度も決まることはなかった。

 そして、色狂いのきっかけとなったのは、この他国での縁談であった。

 ミアローズはある端正な男性に声を掛けられて、色事を初めて知ってしまった。言葉も分からず、だが相手も言葉が分からないので、言葉ではなく、身体で感じてしまったというわけである。

 さすがにミアローズも始めは抵抗したが、快楽に非常に弱かった。しかも、この男性は女性を悦ばせるのを得意としており、ミアローズは色事に堕ちていった。その男性とはその国で別れたきりとなったが、ミアローズの周りには沢山の男性がいる。

 ミアローズは色気を一気に放ち始めれば、さらに男性は寄って来る。相手に困ることはなかった。公爵夫妻も薄々気付いてはいたが、ミアローズに相応しい縁談が決まらないこともあって、公にならぬように邸を与え、使用人に避妊薬を飲ませるように指示するだけで、黙認していた。

 ミアローズは頭では憶えられないが、身体で憶えることは出来ることを体現した色事に、人生は傾いて行ってしまったのだ。

 そして、友人に借りた恋愛小説を読むようになって、ある作品で王太子が媚薬を盛られたところに遭遇して、関係を持ってしまい、責任を取って正妃になることになり、溺愛されるという話であった。

 真に受けたミアローズは仲良くしている男性から、今度試したいから媚薬を手に入れて欲しいと言い、リール殿下のところに押しかけ、相手が限られるから縁談が決まらないと愚痴をこぼし、隙を見て興奮剤を入れることに成功した。

 発熱したような症状になると聞いていたので、一度立ち去ってから、熱が出たと聞いたと私室に入り込んで、情事に及んだ。

 リールはまるで夢現で、意識を取り戻して戦慄し、ミアローズは子どもが出来ているかもしれないと、騒ぎ立てた。とりあえず、公爵家に帰るように言い、リールは陛下にミアローズを調べるように願い出て、興奮剤を手に入れた令息と関係を持っていること、ミアローズに別邸を与えていて、何を行っているかは分からないが、公爵夫妻も黙認していることを知った。

 両親は報告に怒り狂い、ミアローズは修道院に入れることになることが決まった。

 エモンド公爵とミアローズを呼び出すと、公爵は何も知らなかったようで、ミアローズはこれで正妃になれると思っていた。

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

妹に奪われた婚約者は、私を壊す災厄でした

あう
恋愛
伯爵家の長女セレナは、侯爵令息の婚約者として家を支え、妹のわがままにも耐え続けてきた。 しかし妹ミレイユは、“可哀想な妹”を演じて姉の婚約者を奪い、ついに婚約破棄へ持ち込んでしまう。 すべてを奪われた――そう思われたセレナだったが、伯爵家を離れたことで見えてきたのは、自分を縛っていた歪な家族と婚約の真実だった。 そして、奪ったはずの妹のほうもまた、望んだ未来とは違う現実へ追い詰められていく。 奪い返さない。縋らない。 静かに手放した令嬢が、自分の人生を取り戻していくざまぁ恋愛譚。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました

伊久留りさ
恋愛
 北辺の国境を守る小さな領地、ヴァルドリア。その城館の一室で、若き領主の妻アリシアは、夫レオンハルトの言葉に静かに耳を傾けていた。 「アリシア、君にはもう少し、この城から離れてもらいたい」  レオンハルトの声は、いつものように低く、落ち着いていた。しかし、その言葉の意味は、アリシアにとってあまりにも唐突で、あまりにも冷たいものだった。 「……離れる、とはどういう意味でございますか」 「つまり、この城にいないでほしい、ということだ。しばらくの間、君には別の場所で暮らしてもらいたい」  アリシアは、ゆっくりと目を閉じた。指先がわずかに震えるのを、彼女は必死に抑えていた。この男の前で、自分が動揺している姿を見せたくなかったからだ。

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・