137 / 203
番外編1
エマ・ネイリー3
しおりを挟む
母はエマとの会話を終えて、どっと疲れて、父のいる執務室へ戻った。王都の方はエマの弟・ルオに任せてある。
「はあ…本当に吐き気がするわ」
「どうなった?」
「検定を受けるそうよ。落ちたら修道院に行ってもらうと言ったら、出て行くって」
「それはでは監視が…」
「ええ、殿下に、いえ、クリコット・バーンズ様の方がいいかしら?罰を覚悟で文を書いて、判断を仰ぐか、許可を得るわ。ルオのためには罰されない方が良かったけど、罰されるべき存在よ。娘だとは思えないもの」
母と娘は成長するに連れ、相性が悪くなった。
母は学生の頃は騎士を目指していた、だがある程度の体重が必要なのだが、太りにくい体質で、軽すぎること、騎士になれるほどの実力も身に付けられず、守れないなら意味がないと、諦めるしかなかった。それでも今でも鍛錬は欠かさず、身体を鍛えれば、心も鍛えられるという思考の持ち主。
片や、娘は父に似たのか、他の令嬢に比べて背も高く、体格も良く、大柄であった。母は娘なら騎士になれるのではないかと羨ましく思った。押し付けるつもりはなかったが、騎士を目指したらどうかと話したこともあった。だが見た目に反して、娘はお姫様になってハッピーエンドを迎えるような絵本や小説を好んでいた。
劇で男装をするとなった際には、エマは不満顔だったが、両親はドレスより余程似合うのではないかと思っていたので、心からの感想を述べた。
「まあ、良く似合うじゃない」
「うん、いいじゃないか」
「そうですか…他の人にも言われたけど、そんなにでしょうか」
肩幅もあるので、露出したり、身体のラインが出るドレスはどうしても角ばってしまう。だが、男装となれば、肩幅がある方が様になる。
愛想のいい方でもなく、顔立ちも華やかではなく、スッキリとしていたので、男性だと言っても通用するほどであった。
「この機会に剣術を習ってみるのはどう?今までで一番似合っているわよ」
「絶対に嫌です!女性は男性に守ってもらうものでしょう!」
「え?」
「お母様は誰にも守って貰えないから、そんなことを言うのでしょう。私はお母様とは違うの」
「…守ってくれるような人がいるといいわね」
「いるに決まっているでしょう」
母は我が娘ながらとても気持ちが悪いと感じてしまった。そこから一気に母は嫌悪感を持つようになり、父は女の子なのだから、結婚に憧れるくらいはと思って、仲裁役となっていた。
だが、王宮から文が届いた際に、妻の気持ちがよく分かった。話が通じない、気持ちが悪い、そして現実を見ていない。領地に閉じ込めたまでは良かった、まさかこんな恥知らずな真似をするとは思わなかった。
殿下の説明を聞きながら、側近になって、愛妾になると押し掛けた?それもクリコット・バーンズ様がノワンナ語だけで側近をしていることを勝手に解釈した?恥ずかしくて堪らなかった。妻は指の爪が食い込んで、掌は血が滲んでいた。
ルオにもエマのことで酷く迷惑を掛けた、心無い言葉を言われ、恥ずかしい姉を持った弟にさせてしまった。「姉さんのせいで、お父様とお母様のせいではない」「友人たちがルオは関係ないって、庇ってくれるから平気」と言ってくれたが、辛い思いをしただろう。
エマの不正の功績で評価が上がったのは一瞬で、あのせいで王太子夫妻は不仲になった、エマの縁談相手も優秀だというのはデタラメだったと知っているため、ネイリー子爵家の評価は低い。
不正が暴かれたことは良かったが、エマが伯爵邸に行かなければ、エマが見付けなければ、エマが殿下に相談しなければ、そう考えたことは何度もある。
「はあ…本当に吐き気がするわ」
「どうなった?」
「検定を受けるそうよ。落ちたら修道院に行ってもらうと言ったら、出て行くって」
「それはでは監視が…」
「ええ、殿下に、いえ、クリコット・バーンズ様の方がいいかしら?罰を覚悟で文を書いて、判断を仰ぐか、許可を得るわ。ルオのためには罰されない方が良かったけど、罰されるべき存在よ。娘だとは思えないもの」
母と娘は成長するに連れ、相性が悪くなった。
母は学生の頃は騎士を目指していた、だがある程度の体重が必要なのだが、太りにくい体質で、軽すぎること、騎士になれるほどの実力も身に付けられず、守れないなら意味がないと、諦めるしかなかった。それでも今でも鍛錬は欠かさず、身体を鍛えれば、心も鍛えられるという思考の持ち主。
片や、娘は父に似たのか、他の令嬢に比べて背も高く、体格も良く、大柄であった。母は娘なら騎士になれるのではないかと羨ましく思った。押し付けるつもりはなかったが、騎士を目指したらどうかと話したこともあった。だが見た目に反して、娘はお姫様になってハッピーエンドを迎えるような絵本や小説を好んでいた。
劇で男装をするとなった際には、エマは不満顔だったが、両親はドレスより余程似合うのではないかと思っていたので、心からの感想を述べた。
「まあ、良く似合うじゃない」
「うん、いいじゃないか」
「そうですか…他の人にも言われたけど、そんなにでしょうか」
肩幅もあるので、露出したり、身体のラインが出るドレスはどうしても角ばってしまう。だが、男装となれば、肩幅がある方が様になる。
愛想のいい方でもなく、顔立ちも華やかではなく、スッキリとしていたので、男性だと言っても通用するほどであった。
「この機会に剣術を習ってみるのはどう?今までで一番似合っているわよ」
「絶対に嫌です!女性は男性に守ってもらうものでしょう!」
「え?」
「お母様は誰にも守って貰えないから、そんなことを言うのでしょう。私はお母様とは違うの」
「…守ってくれるような人がいるといいわね」
「いるに決まっているでしょう」
母は我が娘ながらとても気持ちが悪いと感じてしまった。そこから一気に母は嫌悪感を持つようになり、父は女の子なのだから、結婚に憧れるくらいはと思って、仲裁役となっていた。
だが、王宮から文が届いた際に、妻の気持ちがよく分かった。話が通じない、気持ちが悪い、そして現実を見ていない。領地に閉じ込めたまでは良かった、まさかこんな恥知らずな真似をするとは思わなかった。
殿下の説明を聞きながら、側近になって、愛妾になると押し掛けた?それもクリコット・バーンズ様がノワンナ語だけで側近をしていることを勝手に解釈した?恥ずかしくて堪らなかった。妻は指の爪が食い込んで、掌は血が滲んでいた。
ルオにもエマのことで酷く迷惑を掛けた、心無い言葉を言われ、恥ずかしい姉を持った弟にさせてしまった。「姉さんのせいで、お父様とお母様のせいではない」「友人たちがルオは関係ないって、庇ってくれるから平気」と言ってくれたが、辛い思いをしただろう。
エマの不正の功績で評価が上がったのは一瞬で、あのせいで王太子夫妻は不仲になった、エマの縁談相手も優秀だというのはデタラメだったと知っているため、ネイリー子爵家の評価は低い。
不正が暴かれたことは良かったが、エマが伯爵邸に行かなければ、エマが見付けなければ、エマが殿下に相談しなければ、そう考えたことは何度もある。
546
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる