【完結】聖女の在り方

野村にれ

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聖女

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「出まかせを自分で考えたのか?」
「……そうです」

 調査員の苦労を思うと、リリカの嘘に踊らされて、腹が立っていた。

「我々が調査をしていることをどう思っていたんだ?」
「申し訳ないと思っておりましたが、すべてが嘘だったわけではありません」
「エバンジー・ジッソワードと一緒にいなかったところだけを話したのか?」
「はい……その通りです」

 エバンジーと一緒にいるところを見られている可能性の場所は、伝えなかったのだろうと考えていた。

「娘のために戻ろうと思ったのだろうが、それはマリアール侯爵家だからか?」
「そ、そうです」
「誰かに言われたのか?」
「言われもしました……別れることになって、彼にホーリーのために戻った方がいいのではないかと言われ、考えるようになりました」

 ギルクはなぜ、自分の娘だとは思わなかったのだろうと思っていた。

 自分の子どもではないと責任転嫁したかったのか、保身のためだったのか。だが、一つのことが思い出された。

「もしかして、ホーリーを聖女だとでも思っていたのか?」
「っ」

 リリカは顔を繕うこともできなくなっており、ビクリを体を動かした。

「やはりそうか、だから認められると思っていたのだな?」

 疑う部分はあるが、シールドの子どもだと思うようにしており、だからこそマリアール侯爵家の人間ならば、親子の証明はできなくても、何らかの方法で認められると思っていた。

 だから、養子を受け入れはしたが、不思議な顔をしていたのだろう。

「それで、図書館で聖女の本を読んでいたのか」

 ここでエッジコート伯爵領の図書館で目撃されていたことが、ようやく繋がった。

「エッジコート伯爵領にいただろう?図書館に通っていた。そうだろう?」
「……はい」
「聖女について調べていたのだろうが、何が分かった?もし違っても騙せると思ったのか?」
「それは……」
「認められなくて驚いたか?当然のことだろう、今となってはこれで良かったということだな」

 リリカはエバンシーにホーリーがシールドの子どもだと言われて、どちらの子どもなのか、本当に分からなかった。

 何か決定的なことはないかと、シールドの子どもならば、聖女の可能性もあるのではないか。どうすれば聖女なのかと、図書館で調べていたのである。

 だが、書物は物語なのか、事実なのか分からなかった。

 それでも、サント王国のように黒髪でヴァイオレットの瞳であるだけで、聖女や聖人とされるような明確なことはないことだけは分かった。

 そして、エバンシーと別れることになって、もし違えば指摘されて終わりだろうが、意を決してマリアール侯爵家を訊ねた。

 驚かれはしたが、再婚相手ともすぐに別れてくれることになった。

 実は再婚のことは王都に着いてから、聞いていたが、子どもはいないと言われて、良かったと思っていた。

 上手くいったと思っていたわけではない、やはりホーリーはシールドの子どもだと実感したのである。

 罰も働き先を紹介してくれるだけでも、あのまま逃げていたら、仕事も見付かったかも分からない。ホーリーも育てられなかっただろうと思うだけだった。

 実子と認められなかったのは想定外だったが、聖女ではないのか、認められる条件が分からないために下手に口に出すことは控え、コロゾ子爵家に預けられるよりいいと思うことにした。

「ホーリーも、イリアもこれから大変だろう」
「はい、私の責任です。申し訳ないことをしました」

 イリアを妊娠したことで、リリカもマリアール侯爵家の血筋がなくなる恐怖からは解放されて、ホッとしていた。

 だが、これから自分の娘であることが二人を苦しめることになるだろう。

 ホーリーと生きるために戻ったのに、認めてもらうためにイリアを産んだのに、二人には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
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