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最期の部屋
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スペンサ侯爵からメリーナが向かうと連絡を貰っていた。メリーナがメメリーなら、誰よりも適任だろうと思った。
ハーライド邸にはカールスとバイラだけではなく、リークス、エンバー、ファイナの皆が揃っていた。
「この度はご無理を言いまして、ありがとうございます」
「いや、案内いたします」
「はい、よろしくお願いいたします」
カールスの目に映るメリーナは、あの時は嘘だったのではないかというほど、礼儀正しい侯爵令嬢そのものであった。
案内するとは言ったが、メリーナはメメリーの部屋の場所も分かっているだろうとも考えていた。
「こちらです…」
カールスは冷静にしなければと強く思ってはいたが、言葉は弱くなっていた。扉を開け、バイラは何も口には出来なかった。
「ありがとう……」
メリーナの目にはあの日以来、もう足を踏み入れることのない場所が広がっており、思わず言葉に詰まった。
「ございます」
「いいえ、じっくり見てください」
リークスとエンバーは、どうして他人行基なのかと違和感を感じていた。
だが、カールスはメリーナの目に、涙が溜まっていく瞬間を見つめていた。その瞬間に本当にメメリーだったのだなと、痛いほど感じていた。
そうでなければ、メリーナがこの部屋には何の思いれもないからである。
バイラは理由は分かっていたが、リークスもエンバーもファイナも、叔母に感極まっているのだろうとしか思っていなかった。
メリーナは見渡した後、息を吸い込んだ。だが、涙は零すことはなかった。
「お嬢様」
運ぶための男たちが、いかがしましょうかと待ち構えていた。
「ごめんなさい。全部、お、叔母様の物かしら?」
「はい、そうです」
「では、全て運び出していただけますか」
「はい!」
男たちはテキパキと運び出し、メリーナはその様子を見ていた。
「父上、運び出す間にお茶でもいかがですか」
「終わりましたら、お声を掛けますので、皆様はお茶をなさってください」
リークスはメリーナも誘ったつもりだったが、メリーナは二度と来れないこの場から、離れるつもりはなかった。
「そうさせて貰おうか」
カールスもメリーナの気持ちに気付き、皆に行こうと声を掛けた。
「でも」
「行きましょう」
バイラも部屋の本当の持ち主を、見ているのは辛かった。
和やかとは言い難い形で、お茶をすることになった。
「メリーナも任せて、お茶を飲めばいいと思って言ったのです」
「そうです!」
「メリーナ嬢は指示をされなければならない」
「どうして、そんなに他人行儀なのですか?」
「格上の侯爵家のご令嬢の縁談が進んでいると聞いているのに、馴れ馴れしくしてはいけないだろう?スペンサ侯爵家に迷惑は掛けられない」
言い訳のようではあったが、カールスもどうしたらいいのか分からず、メリーナに合わせることが精一杯であった。
「婚約したとも聞いていません」
「それでも、私たちは聞いているのだから、きちんと線引きをしなければいけないだろう」
「それはそうですけど、親戚ではありませんか」
「リークスは、本当にそう思っているのか?」
「え?」
「あの部屋に、何の思い入れもないのだろう?」
カールスには都合のいい時だけ親戚だと言っているようにしか聞こえず、完全に八つ当たりだったが、言わずにはいれなかった。
「それは、覚えていないからで…メリーナ嬢だってそうでしょう?指示なんて、必要ないではありませんか」
「侯爵様に色々聞いているのではないか」
学園を卒業後、メリーナはメメリーの家具を持って、ジシュア・デートライ公爵の後妻として、嫁いでいった。
ハーライド邸にはカールスとバイラだけではなく、リークス、エンバー、ファイナの皆が揃っていた。
「この度はご無理を言いまして、ありがとうございます」
「いや、案内いたします」
「はい、よろしくお願いいたします」
カールスの目に映るメリーナは、あの時は嘘だったのではないかというほど、礼儀正しい侯爵令嬢そのものであった。
案内するとは言ったが、メリーナはメメリーの部屋の場所も分かっているだろうとも考えていた。
「こちらです…」
カールスは冷静にしなければと強く思ってはいたが、言葉は弱くなっていた。扉を開け、バイラは何も口には出来なかった。
「ありがとう……」
メリーナの目にはあの日以来、もう足を踏み入れることのない場所が広がっており、思わず言葉に詰まった。
「ございます」
「いいえ、じっくり見てください」
リークスとエンバーは、どうして他人行基なのかと違和感を感じていた。
だが、カールスはメリーナの目に、涙が溜まっていく瞬間を見つめていた。その瞬間に本当にメメリーだったのだなと、痛いほど感じていた。
そうでなければ、メリーナがこの部屋には何の思いれもないからである。
バイラは理由は分かっていたが、リークスもエンバーもファイナも、叔母に感極まっているのだろうとしか思っていなかった。
メリーナは見渡した後、息を吸い込んだ。だが、涙は零すことはなかった。
「お嬢様」
運ぶための男たちが、いかがしましょうかと待ち構えていた。
「ごめんなさい。全部、お、叔母様の物かしら?」
「はい、そうです」
「では、全て運び出していただけますか」
「はい!」
男たちはテキパキと運び出し、メリーナはその様子を見ていた。
「父上、運び出す間にお茶でもいかがですか」
「終わりましたら、お声を掛けますので、皆様はお茶をなさってください」
リークスはメリーナも誘ったつもりだったが、メリーナは二度と来れないこの場から、離れるつもりはなかった。
「そうさせて貰おうか」
カールスもメリーナの気持ちに気付き、皆に行こうと声を掛けた。
「でも」
「行きましょう」
バイラも部屋の本当の持ち主を、見ているのは辛かった。
和やかとは言い難い形で、お茶をすることになった。
「メリーナも任せて、お茶を飲めばいいと思って言ったのです」
「そうです!」
「メリーナ嬢は指示をされなければならない」
「どうして、そんなに他人行儀なのですか?」
「格上の侯爵家のご令嬢の縁談が進んでいると聞いているのに、馴れ馴れしくしてはいけないだろう?スペンサ侯爵家に迷惑は掛けられない」
言い訳のようではあったが、カールスもどうしたらいいのか分からず、メリーナに合わせることが精一杯であった。
「婚約したとも聞いていません」
「それでも、私たちは聞いているのだから、きちんと線引きをしなければいけないだろう」
「それはそうですけど、親戚ではありませんか」
「リークスは、本当にそう思っているのか?」
「え?」
「あの部屋に、何の思い入れもないのだろう?」
カールスには都合のいい時だけ親戚だと言っているようにしか聞こえず、完全に八つ当たりだったが、言わずにはいれなかった。
「それは、覚えていないからで…メリーナ嬢だってそうでしょう?指示なんて、必要ないではありませんか」
「侯爵様に色々聞いているのではないか」
学園を卒業後、メリーナはメメリーの家具を持って、ジシュア・デートライ公爵の後妻として、嫁いでいった。
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