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【テイラー】崩御(妃1)
「テイラー嬢には会えないままだった。どんな方だった?」
「意志の強い方でした」
「顔は?」
「お美しい方でした」
「そうか、お会いしたかったな」
「写真をお譲りいただけば良かったでしょうか」
ディオエルへ渡ったテイラーを感じる物は、一通の手紙だけだった。
いつも殺伐としており、写真を撮るような機会などなかったが、生家に頼むなり、配慮するべきだったのだろうかと考えた。
「いや、欲しければディオエルが頼むべきだろう」
「そうでしょうか」
「ああ、だが、もっと違う未来が……未来があっただろう?」
「はい、あったと思います」
ライシードは答え終えてから、下唇を噛み締めた。
「悔しいな」
「はい」
二人はディオエルの死を受け入れられず、後悔し、ただ悲しかった。
「ディオエルを大事に思っていた。これからもディオエルのしたことを守ることはできるだろう」
「はい、私もでございます」
「だがな、私なりにもやらせてもらう。そうしてくれと言われたからな」
「はい」
「ディオエル皇帝陛下のところに行こうか。妃も会わせないとならないしな」
「はい」
ディオエルは警備された秘匿された場所に、安置されており、国葬までは皇帝宮で過ごさせたいというアンデュース、ライシードを始めとする皆の意見であった。
ずっと付いていた護衛たちも、最期の護衛だと交代で付いてくれている。
何も知らされていなかった妃たちは、どういうことなのか!夫が亡くなったのだと騒いでいた。
詳細は後日としたが、発表も終えたので、皇帝宮に残っているハウニー妃、エオナ妃、クーナ妃、モルカ妃をディオエルの亡骸に会わせることになった。
ハウニー妃、クーナ妃、モルカ妃はディオエルの亡骸に縋りついて号泣していたが、エオナ妃だけは黙ってディオエルへ向かって深く頭を下げた。
妃たちもまた番が見付かったことは聞いていたが、その次に聞かされたのはイオリクに殺されたということであり、自分の立場が脅かされずにホッとした者もいれば、ショックを受けた者もいた。
だが、それはディオエルが生きている前提であった。
「どうしてこんなことになったのですか!具合が悪いなら、教えてくれてもいいではありませんか」
「ディオエル様の希望でございます」
崩御されたと聞いて、一番騒いでいたのは、ハウニー妃であった。
ディオエルは妃たちとお茶などをするなどといった、交流を持ったりすることがなかったために、妃とは言っても、あまり関わりがなかった。
だが、ディオエルの最初の妃で、一番長い間、妃ではあった。
「それでも、私は妃なのですよ!」
「存じております。ですが、ディオエル様は、最期は静かに過ごしたい、妃には知らせないでくれと願われましたので」
「あの、これから妃はどうなるのでしょうか」
訊ねたのは、エオナ妃であった。
悲しんでいないわけではないが、ハウニー妃を黙らせようと口を挟んだのだろう。ライシードは気遣いのできるエオナ妃に感謝した。
そして、冷静に身の振り方によって、準備をしなくてはならないと、冷静に考えておられるのだろうと考えていた。
「はい、慣例通りに十分なお金を渡し、生家に帰られるなり、帰られたくない、帰る場所がない場合はお金は減りますが、別の場所を手配するようになっております」
「承知いたしました」
ディオエルから亡くなった場合の妃の処遇は、慣例通りと伝えられていた。
竜帝国では、正妃がいれば、離宮に下がるが、妃は皇帝宮を出ることになる。
正妃以外に妃が子どもを産んでいた場合は、側妃になっており、こちらも離宮に下がれるが、まずないことである。
ディオエルの妃たちに該当者はいないので、生家に帰るか、別の家を用意してもらうか。過去には希望によっては教会や修道院に行くという選択をした妃もいる。
「えっ」
「意志の強い方でした」
「顔は?」
「お美しい方でした」
「そうか、お会いしたかったな」
「写真をお譲りいただけば良かったでしょうか」
ディオエルへ渡ったテイラーを感じる物は、一通の手紙だけだった。
いつも殺伐としており、写真を撮るような機会などなかったが、生家に頼むなり、配慮するべきだったのだろうかと考えた。
「いや、欲しければディオエルが頼むべきだろう」
「そうでしょうか」
「ああ、だが、もっと違う未来が……未来があっただろう?」
「はい、あったと思います」
ライシードは答え終えてから、下唇を噛み締めた。
「悔しいな」
「はい」
二人はディオエルの死を受け入れられず、後悔し、ただ悲しかった。
「ディオエルを大事に思っていた。これからもディオエルのしたことを守ることはできるだろう」
「はい、私もでございます」
「だがな、私なりにもやらせてもらう。そうしてくれと言われたからな」
「はい」
「ディオエル皇帝陛下のところに行こうか。妃も会わせないとならないしな」
「はい」
ディオエルは警備された秘匿された場所に、安置されており、国葬までは皇帝宮で過ごさせたいというアンデュース、ライシードを始めとする皆の意見であった。
ずっと付いていた護衛たちも、最期の護衛だと交代で付いてくれている。
何も知らされていなかった妃たちは、どういうことなのか!夫が亡くなったのだと騒いでいた。
詳細は後日としたが、発表も終えたので、皇帝宮に残っているハウニー妃、エオナ妃、クーナ妃、モルカ妃をディオエルの亡骸に会わせることになった。
ハウニー妃、クーナ妃、モルカ妃はディオエルの亡骸に縋りついて号泣していたが、エオナ妃だけは黙ってディオエルへ向かって深く頭を下げた。
妃たちもまた番が見付かったことは聞いていたが、その次に聞かされたのはイオリクに殺されたということであり、自分の立場が脅かされずにホッとした者もいれば、ショックを受けた者もいた。
だが、それはディオエルが生きている前提であった。
「どうしてこんなことになったのですか!具合が悪いなら、教えてくれてもいいではありませんか」
「ディオエル様の希望でございます」
崩御されたと聞いて、一番騒いでいたのは、ハウニー妃であった。
ディオエルは妃たちとお茶などをするなどといった、交流を持ったりすることがなかったために、妃とは言っても、あまり関わりがなかった。
だが、ディオエルの最初の妃で、一番長い間、妃ではあった。
「それでも、私は妃なのですよ!」
「存じております。ですが、ディオエル様は、最期は静かに過ごしたい、妃には知らせないでくれと願われましたので」
「あの、これから妃はどうなるのでしょうか」
訊ねたのは、エオナ妃であった。
悲しんでいないわけではないが、ハウニー妃を黙らせようと口を挟んだのだろう。ライシードは気遣いのできるエオナ妃に感謝した。
そして、冷静に身の振り方によって、準備をしなくてはならないと、冷静に考えておられるのだろうと考えていた。
「はい、慣例通りに十分なお金を渡し、生家に帰られるなり、帰られたくない、帰る場所がない場合はお金は減りますが、別の場所を手配するようになっております」
「承知いたしました」
ディオエルから亡くなった場合の妃の処遇は、慣例通りと伝えられていた。
竜帝国では、正妃がいれば、離宮に下がるが、妃は皇帝宮を出ることになる。
正妃以外に妃が子どもを産んでいた場合は、側妃になっており、こちらも離宮に下がれるが、まずないことである。
ディオエルの妃たちに該当者はいないので、生家に帰るか、別の家を用意してもらうか。過去には希望によっては教会や修道院に行くという選択をした妃もいる。
「えっ」
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