【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】余波(デリア侯爵家1)

「それは、素敵な方だと思って……」
「お姉様の最期のお別れである、葬儀で行うことですか?」

 そう言われると、ラオナは何も言えなかった。上手い答えが思いつかなかったとラオナは思っていたが、実際は反論する答えがあるはずもない。

「そのような方と話をしたいと思いますか?」
「でも、お姉様の話を……」
「同じことを何度言わせる気ですか?」

 お前から話など聞く気はないと、ずっと言っているのが伝わっていないのかと語気を強くした。

 ベルサートとナナリーは、もしかしたら、ラオナが押し掛けてくるかもしれないと、門番にも執事にも話をしてあった。

 そして、テイラーのことをラオナからは聞きたくもない。話もする価値もないと判断していた。

「でも、聞かなくていいのですか?」
「そう言っているのが、ご理解いただけませんか?」

 そこへ馬車が門へやって来て、確認をして通されていった。

「こちらも予定がございますので、お帰りください」

 馬車は本日の客人であり、これから楽しい話にはならないと思うが、彼がこの邸に来るのも、約二十年振りとなる。

「待ってください!話をすれば分かると思うんです」
「騎士団に連行してもらいますか?」
「っえ、どうして……」
「あなたが行っていることは、デリア侯爵家への迷惑行為です。帰らないのなら、騎士団を呼びます」

 当然だが、エイク子爵夫妻からラオナが、もしかしたら手紙や押し掛けたりすることがあるかもしれないこと。面倒をお掛けしますが、追い返してください。帰らないようなら、騎士団を呼んでくださいと連絡をもらっていた。

 執事が門番に話をしに行こうかと動こうとすると、ラオナは焦った。

「か、帰ります」
「そうですか、二度と来ないでください。次は即、騎士団を呼びます。そうなれば、学園にも通えなくなりますよ」
「は、い」

 ラオナは不満そうな顔ではあったが、そのまま何も言わずに去って行った。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 それよりも客人の案内をしなければならないと、馬車留めに急いだ。

「お待ちしておりました、ファドット伯爵」
「いえ、こちらこそ本日はありがとうございます」

 訊ねて来たのは、マーク・ファドットであった。

 ルーベンスがお会いしたいという手紙をもらい、許可をして、今日という日を迎えていた。そこへ、よりにもよって、ラオナがやって来たというわけである。

 マーク・ファドットは執事が、二十年以上前は何度も、案内をした相手であった。

 応接室に案内すると、待っていたのはルーベンスとベルサート、そして眉間に皺を寄せたナナリーだった。

「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」

 マークは三人に向かって、深く頭を下げたまま、相手の答えを待った。

「頭を上げなさい、座ってくれ」
「はい」

 ルーベンスが声を掛けると、マークはベルサートとナナリーと向き合う形で座り、ルーベンスが左側に座っていた。

「久し振りだな」
「はい、ご無沙汰しております」

 ルーベンスやベルサートから声を掛けない限りは、双方が話をすることはなかった。ベルサートは、二人きりではないが、周りと一緒に時折話すことがあったが、ルーベンスは話し掛けることもなかった。

「ナビナ夫人に会ったそうだな」
「はい、お話をさせていただきました」

 ルーベンスにナビナからマークと会ったことや、どのような話をしたかという手紙をもらっていた。

「墓参りか?」
「はい、行かせていただけないかとお願いに参りました」
「私は許可しよう、ベルサートとナナリーはどうだ?」
「私は構わないと思っておりますが、ナナリーどうだ?」
「ええ……」

 ナナリーは視界入れないようにしていたマークを何年振りかに、じっと見つめた。

「当然ですけど、悼む気持ちがあるのですよね?」
「はい」


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本日もお読みいただきありがとうございます。

昨日、予約時間を間違えておりました。
申し訳ございませんでした。

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