【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】余波(デリア侯爵家2)

「当然ですわよね、私もナビナ夫人と同じで、あなたに対して怒っているけど、謝罪をしてもらいたいわけではありませんから」
「は、い。ですが、ナビナ夫人に結婚式にドレスを用意していたと伺いました」
「そうね、着ることもなかったわ」
「申し訳ございませんでした」

 ナビナに言われていたために、おそらくナナリーも用意していただろうと思い、責めて謝罪したいと考えていた。

「そうか……アイルーンも、テイラーも結婚式を挙げることもなかったな」

 ルーベンスは改めて、二人とも結婚式を挙げることもなく亡くなった悲しい事実に気付いてしまった。

「アイルーン様もですか?」
「ああ」

 マークは自分は当然呼ばれていないが、結婚式は行われたのだと思っていた。

「そうよ、一度も、せめてテイラーが着てくれたら良かったのに」
「そうだな」

 アイルーンのドレスは今でも、デリア侯爵家に保管してある。

 ルーベンスとベルサートは気にしていなかったが、ナナリーは結婚式を挙げていないこと、正式に結婚すらしていないことにも気付いていた。

「でも、縁起が悪いかもしれないわ」
「っ、申し訳ございません」
「はあ……あなたを前にすると、どうしても嫌味が浮かんでくるの」
「すべて受け入れます」
「そんな風に言われると、言いにくいわ」

 ナナリーもナビナからの手紙を読んでおり、マークがアイルーンのために婚約を解消したのだと思うということも、気持ちを複雑にしていた。

「いえ、何でも言ってください。私が負う責任です」
「いいえ、それを言っていいのはアイルーンと、テイラー様なのは分かっているわ。いえ、きっとテイラー様は言わないわね。私はね、あなたたちの結婚を楽しみにしていたの。邸も近いから、お茶をしたり、一緒に観劇に行ったり、色んなことをこれからもできると思って……」

 そう言いながら、ナナリーの目にはみるみると涙が溜まり、それでも零すまいと耐えているようであった。

「だから、あなたが許せなかった。本当に個人的なことなの」
「いいえ、怒って当然のことをしたのは私です」
「でも、あなたはアイルーンのために婚約を解消したのでしょう?」
「違います、そうではありません」

 マークはナビナにも認める気はなかったが、デリア侯爵家には絶対に認める気はなかった。

「私はね、アイルーンを傷付けた人を恨むことしかできなかった。あなたは近い存在だったから顕著だったわ。奥さんのことは興味はなかったけど……大変だったようね。常軌を逸しているのでしょう?」

 ナナリーは実家を使って、レーズのことを調べた。

 これまでマークのことは調べていたが、レーズのことは興味がなかったために、深く調べることはしなかった。

 だが、調べてみると、マークはよくここまで結婚生活を続けられていたなと言うほどの、常軌を逸している独占欲を持っているということが分かった。

「常軌を逸して……」

 マークもナナリーの実家のことは、アイルーンの婚約者だったことから聞いたことがあり、知られているのだろうと思った。

「あなた以外と話さないとか、挨拶をするだけでも、敵意を向けることもあるって聞いたわ。確かにあなたたちはいつも二人で、奥様は社交もしていない。あなたはしたくてもできない、そうでしょう?」
「はい、そうです……でも私が選んだことですから」
「奥様はあなた以外はどうでもいいと思っているのでしょう?そういった人間は確かに怖い部分はあるわ」
「怖い?」

 ベルサートも夫人としてどうなのかとは思ったが、番だからではないかと、ゆえに怖いというのは違和感があり、ナナリーに問い掛けた。

「マーク以外どうでもいいと思っているのよ?何をするか分からないってことよ。最悪、あなたを殺して私も死ぬなんて言い出すこともあったのではない?」

 ナナリーの言葉に、マークは頬をピクリと動かした。

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