286 / 344
【テイラー】余波(デリア侯爵家2)
「当然ですわよね、私もナビナ夫人と同じで、あなたに対して怒っているけど、謝罪をしてもらいたいわけではありませんから」
「は、い。ですが、ナビナ夫人に結婚式にドレスを用意していたと伺いました」
「そうね、着ることもなかったわ」
「申し訳ございませんでした」
ナビナに言われていたために、おそらくナナリーも用意していただろうと思い、責めて謝罪したいと考えていた。
「そうか……アイルーンも、テイラーも結婚式を挙げることもなかったな」
ルーベンスは改めて、二人とも結婚式を挙げることもなく亡くなった悲しい事実に気付いてしまった。
「アイルーン様もですか?」
「ああ」
マークは自分は当然呼ばれていないが、結婚式は行われたのだと思っていた。
「そうよ、一度も、せめてテイラーが着てくれたら良かったのに」
「そうだな」
アイルーンのドレスは今でも、デリア侯爵家に保管してある。
ルーベンスとベルサートは気にしていなかったが、ナナリーは結婚式を挙げていないこと、正式に結婚すらしていないことにも気付いていた。
「でも、縁起が悪いかもしれないわ」
「っ、申し訳ございません」
「はあ……あなたを前にすると、どうしても嫌味が浮かんでくるの」
「すべて受け入れます」
「そんな風に言われると、言いにくいわ」
ナナリーもナビナからの手紙を読んでおり、マークがアイルーンのために婚約を解消したのだと思うということも、気持ちを複雑にしていた。
「いえ、何でも言ってください。私が負う責任です」
「いいえ、それを言っていいのはアイルーンと、テイラー様なのは分かっているわ。いえ、きっとテイラー様は言わないわね。私はね、あなたたちの結婚を楽しみにしていたの。邸も近いから、お茶をしたり、一緒に観劇に行ったり、色んなことをこれからもできると思って……」
そう言いながら、ナナリーの目にはみるみると涙が溜まり、それでも零すまいと耐えているようであった。
「だから、あなたが許せなかった。本当に個人的なことなの」
「いいえ、怒って当然のことをしたのは私です」
「でも、あなたはアイルーンのために婚約を解消したのでしょう?」
「違います、そうではありません」
マークはナビナにも認める気はなかったが、デリア侯爵家には絶対に認める気はなかった。
「私はね、アイルーンを傷付けた人を恨むことしかできなかった。あなたは近い存在だったから顕著だったわ。奥さんのことは興味はなかったけど……大変だったようね。常軌を逸しているのでしょう?」
ナナリーは実家を使って、レーズのことを調べた。
これまでマークのことは調べていたが、レーズのことは興味がなかったために、深く調べることはしなかった。
だが、調べてみると、マークはよくここまで結婚生活を続けられていたなと言うほどの、常軌を逸している独占欲を持っているということが分かった。
「常軌を逸して……」
マークもナナリーの実家のことは、アイルーンの婚約者だったことから聞いたことがあり、知られているのだろうと思った。
「あなた以外と話さないとか、挨拶をするだけでも、敵意を向けることもあるって聞いたわ。確かにあなたたちはいつも二人で、奥様は社交もしていない。あなたはしたくてもできない、そうでしょう?」
「はい、そうです……でも私が選んだことですから」
「奥様はあなた以外はどうでもいいと思っているのでしょう?そういった人間は確かに怖い部分はあるわ」
「怖い?」
ベルサートも夫人としてどうなのかとは思ったが、番だからではないかと、ゆえに怖いというのは違和感があり、ナナリーに問い掛けた。
「マーク以外どうでもいいと思っているのよ?何をするか分からないってことよ。最悪、あなたを殺して私も死ぬなんて言い出すこともあったのではない?」
ナナリーの言葉に、マークは頬をピクリと動かした。
「は、い。ですが、ナビナ夫人に結婚式にドレスを用意していたと伺いました」
「そうね、着ることもなかったわ」
「申し訳ございませんでした」
ナビナに言われていたために、おそらくナナリーも用意していただろうと思い、責めて謝罪したいと考えていた。
「そうか……アイルーンも、テイラーも結婚式を挙げることもなかったな」
ルーベンスは改めて、二人とも結婚式を挙げることもなく亡くなった悲しい事実に気付いてしまった。
「アイルーン様もですか?」
「ああ」
マークは自分は当然呼ばれていないが、結婚式は行われたのだと思っていた。
「そうよ、一度も、せめてテイラーが着てくれたら良かったのに」
「そうだな」
アイルーンのドレスは今でも、デリア侯爵家に保管してある。
ルーベンスとベルサートは気にしていなかったが、ナナリーは結婚式を挙げていないこと、正式に結婚すらしていないことにも気付いていた。
「でも、縁起が悪いかもしれないわ」
「っ、申し訳ございません」
「はあ……あなたを前にすると、どうしても嫌味が浮かんでくるの」
「すべて受け入れます」
「そんな風に言われると、言いにくいわ」
ナナリーもナビナからの手紙を読んでおり、マークがアイルーンのために婚約を解消したのだと思うということも、気持ちを複雑にしていた。
「いえ、何でも言ってください。私が負う責任です」
「いいえ、それを言っていいのはアイルーンと、テイラー様なのは分かっているわ。いえ、きっとテイラー様は言わないわね。私はね、あなたたちの結婚を楽しみにしていたの。邸も近いから、お茶をしたり、一緒に観劇に行ったり、色んなことをこれからもできると思って……」
そう言いながら、ナナリーの目にはみるみると涙が溜まり、それでも零すまいと耐えているようであった。
「だから、あなたが許せなかった。本当に個人的なことなの」
「いいえ、怒って当然のことをしたのは私です」
「でも、あなたはアイルーンのために婚約を解消したのでしょう?」
「違います、そうではありません」
マークはナビナにも認める気はなかったが、デリア侯爵家には絶対に認める気はなかった。
「私はね、アイルーンを傷付けた人を恨むことしかできなかった。あなたは近い存在だったから顕著だったわ。奥さんのことは興味はなかったけど……大変だったようね。常軌を逸しているのでしょう?」
ナナリーは実家を使って、レーズのことを調べた。
これまでマークのことは調べていたが、レーズのことは興味がなかったために、深く調べることはしなかった。
だが、調べてみると、マークはよくここまで結婚生活を続けられていたなと言うほどの、常軌を逸している独占欲を持っているということが分かった。
「常軌を逸して……」
マークもナナリーの実家のことは、アイルーンの婚約者だったことから聞いたことがあり、知られているのだろうと思った。
「あなた以外と話さないとか、挨拶をするだけでも、敵意を向けることもあるって聞いたわ。確かにあなたたちはいつも二人で、奥様は社交もしていない。あなたはしたくてもできない、そうでしょう?」
「はい、そうです……でも私が選んだことですから」
「奥様はあなた以外はどうでもいいと思っているのでしょう?そういった人間は確かに怖い部分はあるわ」
「怖い?」
ベルサートも夫人としてどうなのかとは思ったが、番だからではないかと、ゆえに怖いというのは違和感があり、ナナリーに問い掛けた。
「マーク以外どうでもいいと思っているのよ?何をするか分からないってことよ。最悪、あなたを殺して私も死ぬなんて言い出すこともあったのではない?」
ナナリーの言葉に、マークは頬をピクリと動かした。
あなたにおすすめの小説
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします
柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。
正確には、忘れられたわけではない。
エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。
記念のディナーも、予約していた。
薔薇だって、一輪、用意していた。
ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。
「すぐ戻る」
彼が戻ったのは、三時間後だった。
蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。
それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。
「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」
完璧な微笑みで、完璧にそう言った。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。