【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】お墓2

「謝ることが遅くなってすまない……許してなどくれなくていい。恨んでくれていいと思っていた。だが、ちゃんと謝るべきだった……すまない」

 マークは涙を流しながら、アイルーンのお墓に向かって訴えた。カイラーとテイラーにも見られているような気もしたが、二人にも謝りたかった。

「いや、申し訳ございませんでした……どうして、君が殺されるなど、私が代わりたかった……私が、私が死んだ方が良かっただろうに……」
「坊ちゃま……」

 執事は見習いだった頃の昔の呼び名で思わず呼んでしまったほど、苦しくなった。だが、マークの耳には届いていないようで、お墓に頭を下げていた。

「いつか会えると、その時に謝って、いや、私は君に罵られるべきだった……私は間違っていた」

 テイラーに代わりに、罵ってもらうことも叶わない。

 アイルーンにアイルーンの口で非難して欲しいが、ナビナにもデリア侯爵家の方たちにも言えなかったが、せめてテイラーが生きていたらと考えていた。

「私は辛い目に遭って欲しかったわけではない、君にはそんな目に遭って欲しくなかった。君にだけは、幸せになって欲しかった。せめて笑っていて欲しかった……本当にそう思っていた。それだけは信じて欲しい」

 マークは約二十年が経ち、届かないかもしれないが、ようやく謝罪をすることができたと感じていた。

 お墓に何があるのか、アイルーンの魂が残っていると思っているわけではない。

 だから今、ここで謝罪をしているのは自己満足であることは分かっている。

 そして、マークは自身に言われても不愉快かもしれないが、どうか安らかにと心の中で願い、カイラーとテイラーにも深く頭を下げて謝罪をした。

 執事はその姿を見ながら、自身も涙が零れそうだった。

 マークに番に見付かり、アイルーンと婚約を解消することが決まり、神様はどうしてこのような運命を背負わせたのだと、何度も思った。

 だが、マークは自分で決めたことだと、人のせいにしてはならないとも考えられていることも理解していた。

 マーク様がアイルーン様と結婚していたら、少なくともこんな未来にはならなかったのではないかと、どうしても考えてしまう。

 目を瞑れば、アイルーン様が微笑むとマーク様も微笑む姿が、思い出される。

 お二人はとてもお似合いで、ファドット伯爵家は安泰だと思っていた。お二人の子どもは可愛いだろう。命ある限り、お支え続けようと誓っていた。

「長居しても迷惑だな、帰ろうか……」
「はい」

 アイルーンには赤いカーネーションを、カイラーとテイラーには白いカーネーションの花束を置き、マークと執事は再度深く頭を下げて、お墓を後にした。

 マークのこれからに何かが変わるわけではないが、生きていくための大きな節目となった。

 ミリオン王国でも、アイルーンを知る者たちには大きな余波となったが、竜帝国ではそれ以上であった―――。

 悲しみと同時にイオリクへの憎悪は、さらに膨れ上がった。

 ただ、アンデュースが『私罰を望めばディオエル前国王陛下の意思を私も反故することになる。きちんと反省して後悔して、生きていってもらいたい』と伝えたために、オイワード公爵邸に奇襲をかけるなどといったことはなかった。

 イオリクも、アンデュース皇帝陛下の発表を聞いていた。

 アイルーンの記憶については驚くことはなかったが、ディオエルはテイラーのために公表しなかったと説明をしたのに、イオリクは自分のことを考えて、詳細は公表しなかったと考えていた。

 既に罰を受けているのに、再び自分をわざわざ糾弾するような内容に、アンデュースに対して苛立ちを隠せなかった。

 しかも、ディオエルが妃に望まなかったなど、口ではそう言っても、自分の方が分かっていると自負していた。

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