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【テイラー】申請6
「お前がどう思うかは確かに勝手だが、事実は事実だからな。もういい、私も忙しいんだ。どうすることにしたかは早めに報告をしてくれ」
「ライシード、送ってやれ」
「はい」
ライシードは床を強く踏みしめながら、まだ話をと言いたそうなイオリクを引っ張って、部屋から出した。
「本当は、ディオエル様は何か言っていたんではないか?」
「いいえ、あなたの名前を聞くこともなかったです」
「嘘を言うな!」
「嘘ではありません。あなたがテイラー様を傷付けた後から、あなたの名前を呼ぶことも不愉快に思ってはいらっしゃいました。ですが、その後はまるで最初からいなかったように消え去りました」
ディオエルも番を殺した男を、忘れることはできなかっただろう。
それでも自分の命が亡くなることが分かって、イオリクのことを考えることは無駄だと切り捨てられた。
本当は同じように頭を壁に打ちつけるなどして、殺したかっただろう。だが、テイラーの意に望んだ罰を叶える方が、優先されることであった。
竜帝国のこれからと、アイルーン、テイラーのこと、そして生まれなかった命のことを考えることに時間を当てられた。
テイラーの物はなかったが、アイルーンの残した物で、竜帝国にある物を並べて、謝りながら手に取っていらした。そして、自分が亡くなったら、デリア侯爵家に送って欲しいと願われた。
「それは気になさっていた証拠ではないか!」
「そう思いたいなら、そう思えばいいですが、あなたに残された言葉はありません!あなたに伝えることは何もない!」
「そんな」
「ディオエル様はテイラー様のことを話しておいででした。アイルーン様とはあまりお話はしておりませんでしたから、何も知らないと、子どもまでできたのに、おかしな話ですよね。私たちは側近の意味を成していなかった。その上、あなたは敵意さえ向けて、私たちが側近でなければ、ディオエル様は今も生きていたでしょう」
ライシードはイオリクのような実質的な罪はないが、側近として機能していなかったことは、同じだと感じていた。
「そんなことは!」
「あなたは罪深いことをしました。ですが、私も正しかったわけではない!だからこそ、テイラー様には真摯にお話をしたいとディオエル様も、私も考えていました。ですが、あなただけは何も変わっていなかった」
「疑うのも当然だろう」
「そんな理由で、あなたは事件が事実だと分かっても同じだったではありませんか!都合の良い理由で優位に立った気でいた結果が今です」
離縁され、両親に自害されても、番に批判的な思想を曲げないことは勝手であるが、今の結果は受け止めるしかない。
イオリクが何を言っても、どう考えても変わることも、テイラーのように記憶を持った方が現れることはあるかもしれないが、アイルーン様が生き返ったわけではないように、亡くなった方が生き返ることはない。
「テイラー様はあなたに殺され、ディオエル様はそのせいで亡くなり、あなたはご両親を自殺に追い込み、公爵家を維持できなくなっている。どれだけ不幸にすれば気が済むのですか!」
「違う、私が、私は殺そうとしたわけではない」
「皇帝陛下の番に足を引っ掛けるようなことはしないのです。17歳の女の子を怪我させるようなことはしないのです。それを分別のある大人が行ったのです」
皇帝陛下の番ではなかったとしても、17歳の女の子でなかったとしても、会話をしただけの相手に分別のある大人はしない。だからこそ、罪深い。
「あなたは罪を償った身ですから、今後、口に出すことはしません」
「そう、そうだ、罪は償った」
誰も納得していない罪でも終えているイオリクに、これからどのような立場になっても、このような話をするのは最後にしようと決めていた。
「ライシード、送ってやれ」
「はい」
ライシードは床を強く踏みしめながら、まだ話をと言いたそうなイオリクを引っ張って、部屋から出した。
「本当は、ディオエル様は何か言っていたんではないか?」
「いいえ、あなたの名前を聞くこともなかったです」
「嘘を言うな!」
「嘘ではありません。あなたがテイラー様を傷付けた後から、あなたの名前を呼ぶことも不愉快に思ってはいらっしゃいました。ですが、その後はまるで最初からいなかったように消え去りました」
ディオエルも番を殺した男を、忘れることはできなかっただろう。
それでも自分の命が亡くなることが分かって、イオリクのことを考えることは無駄だと切り捨てられた。
本当は同じように頭を壁に打ちつけるなどして、殺したかっただろう。だが、テイラーの意に望んだ罰を叶える方が、優先されることであった。
竜帝国のこれからと、アイルーン、テイラーのこと、そして生まれなかった命のことを考えることに時間を当てられた。
テイラーの物はなかったが、アイルーンの残した物で、竜帝国にある物を並べて、謝りながら手に取っていらした。そして、自分が亡くなったら、デリア侯爵家に送って欲しいと願われた。
「それは気になさっていた証拠ではないか!」
「そう思いたいなら、そう思えばいいですが、あなたに残された言葉はありません!あなたに伝えることは何もない!」
「そんな」
「ディオエル様はテイラー様のことを話しておいででした。アイルーン様とはあまりお話はしておりませんでしたから、何も知らないと、子どもまでできたのに、おかしな話ですよね。私たちは側近の意味を成していなかった。その上、あなたは敵意さえ向けて、私たちが側近でなければ、ディオエル様は今も生きていたでしょう」
ライシードはイオリクのような実質的な罪はないが、側近として機能していなかったことは、同じだと感じていた。
「そんなことは!」
「あなたは罪深いことをしました。ですが、私も正しかったわけではない!だからこそ、テイラー様には真摯にお話をしたいとディオエル様も、私も考えていました。ですが、あなただけは何も変わっていなかった」
「疑うのも当然だろう」
「そんな理由で、あなたは事件が事実だと分かっても同じだったではありませんか!都合の良い理由で優位に立った気でいた結果が今です」
離縁され、両親に自害されても、番に批判的な思想を曲げないことは勝手であるが、今の結果は受け止めるしかない。
イオリクが何を言っても、どう考えても変わることも、テイラーのように記憶を持った方が現れることはあるかもしれないが、アイルーン様が生き返ったわけではないように、亡くなった方が生き返ることはない。
「テイラー様はあなたに殺され、ディオエル様はそのせいで亡くなり、あなたはご両親を自殺に追い込み、公爵家を維持できなくなっている。どれだけ不幸にすれば気が済むのですか!」
「違う、私が、私は殺そうとしたわけではない」
「皇帝陛下の番に足を引っ掛けるようなことはしないのです。17歳の女の子を怪我させるようなことはしないのです。それを分別のある大人が行ったのです」
皇帝陛下の番ではなかったとしても、17歳の女の子でなかったとしても、会話をしただけの相手に分別のある大人はしない。だからこそ、罪深い。
「あなたは罪を償った身ですから、今後、口に出すことはしません」
「そう、そうだ、罪は償った」
誰も納得していない罪でも終えているイオリクに、これからどのような立場になっても、このような話をするのは最後にしようと決めていた。
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