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【テイラー】親6
「テイラーは薄情で書かなかったのではなく、きっと二人のことを思って書かなかったのではないかと思うのです」
「親だから?」
「はい、私たちには要望でしたから、書き残しておく必要があった」
「ええ。もしかしたら、ディオエル前国王陛下のように、書いておくつもりだったけど、まだ書いていなかっただけかもしれないわね」
「そうかもしれませんね」
テイラーはあの日、あんなことになるとは思っていなかった。
まだ続きだってあったかもしれない。
両親には書きたいことがあって、後になったのかもしれない。だが、そんなことを言っても、想像であって、実際に手紙はなかったのだから、やはり伝えなくて良かったと思った。
「ディオエル皇帝陛下には、何が書いてあったか気になる?」
「いいえ」
「私は聞くことはしませんが、気になるわ」
「良いことは書いていないと思いますけどね」
「そうね」
亡くなったからと言って、すべてを明かしていいわけではない。シュアリアだって分かっている。
「私はあの事件が起きた日、テイラーを見た時、そんな状況ではありませんでしたが、頭を打ったと聞き、アイルーンの記憶がなくなったらいい、テイラーの人生を歩んで欲しいと思っていました」
「記憶を?」
「はい、そうすればテイラーとして、生きていけると思ったのです。そんな上手くはいきませんよね、分かっています。それでも、あの子には自分の人生を生きていって欲しかった」
ルーベンスはテイラーが血まみれだったが、医師から頭を打ったことが原因だと言われて、そんなことを考えていた。
「そうね……」
「命ではなく、記憶を奪って欲しかったです」
自分が愚かなことを考えたせいかと思う反面、テイラーを看病をする中で、頭を打ったのなら、どうかアイルーンの記憶だけを奪ってくれ、私のことは忘れてくれていい、どうか命を奪わないでくれと願っていた。
「ええ、本当に。そうしたら、あの子は何も考えずに生きて、コンフォートホテルで働いていた」
「はい、レストランもあるそうですから、皆で食事に行ったり、したかったですね」
「ええ、私も一緒に行きたいわ」
「ええ」
叶わない願いでも、そんな世界があったかもしれない。そう思うことで、二人はようやく微笑むことができる。
「前国王陛下はどうされていますか?」
「変わらないわ」
「そうですか」
ディオエルが亡くなったことで、自分がしたことに耐え切れず、茫然として過ごしていると聞いていた。
「あなたには腹の立つことだと思うけど、現実逃避というのかしらね。自分のことではないと思って、生きているわ」
「そうですか」
「受け止め切れないのよ、弱くて、謝罪もできない、責任も取れない。国王の器ではなかったことは確かだわ」
シュアリアだから言えることだが、確かにギリシスは愚王ではなかったが、浅墓なところがあり、シュアリアが支えていたからこそであった。
「あなたは恨むべき相手でしょうけど、ディオエル皇帝陛下とは違うわ」
「そうですね、でもエレサーレ国王陛下はしっかりされていらっしゃいます」
「頑張ってくれているわ」
「ええ」
ミリオン王国はエレサーレによって、これからも続いていくことになる。
その国王はアイルーンとテイラーに怒ったことを身を持って知っている、それだけで救われる気持ちになる。
ギリシスはエレサーレが国王になってから、四年後に亡くなった。
食事もあまり摂れなくなり、動かなくなり、どんどん衰弱していった。エレサーレの結婚式にも体調不良ということで、参列しなかった。
姿を見ることはずっとギリシスに付いていた使用人と、シュアリアとエレサーレだけで、最期はふくよかな方だった体はすっかり痩せ細ってしまった。
葬儀も国葬にはせず、静かに弔われ、後日亡くなったことを発表した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
最終回を明日に控え、
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話を投稿します。
そして、本日同時刻より、
新作「愛されて、愛されて、愛されて」を投稿しております。
よろしければよろしくお願いします。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
「親だから?」
「はい、私たちには要望でしたから、書き残しておく必要があった」
「ええ。もしかしたら、ディオエル前国王陛下のように、書いておくつもりだったけど、まだ書いていなかっただけかもしれないわね」
「そうかもしれませんね」
テイラーはあの日、あんなことになるとは思っていなかった。
まだ続きだってあったかもしれない。
両親には書きたいことがあって、後になったのかもしれない。だが、そんなことを言っても、想像であって、実際に手紙はなかったのだから、やはり伝えなくて良かったと思った。
「ディオエル皇帝陛下には、何が書いてあったか気になる?」
「いいえ」
「私は聞くことはしませんが、気になるわ」
「良いことは書いていないと思いますけどね」
「そうね」
亡くなったからと言って、すべてを明かしていいわけではない。シュアリアだって分かっている。
「私はあの事件が起きた日、テイラーを見た時、そんな状況ではありませんでしたが、頭を打ったと聞き、アイルーンの記憶がなくなったらいい、テイラーの人生を歩んで欲しいと思っていました」
「記憶を?」
「はい、そうすればテイラーとして、生きていけると思ったのです。そんな上手くはいきませんよね、分かっています。それでも、あの子には自分の人生を生きていって欲しかった」
ルーベンスはテイラーが血まみれだったが、医師から頭を打ったことが原因だと言われて、そんなことを考えていた。
「そうね……」
「命ではなく、記憶を奪って欲しかったです」
自分が愚かなことを考えたせいかと思う反面、テイラーを看病をする中で、頭を打ったのなら、どうかアイルーンの記憶だけを奪ってくれ、私のことは忘れてくれていい、どうか命を奪わないでくれと願っていた。
「ええ、本当に。そうしたら、あの子は何も考えずに生きて、コンフォートホテルで働いていた」
「はい、レストランもあるそうですから、皆で食事に行ったり、したかったですね」
「ええ、私も一緒に行きたいわ」
「ええ」
叶わない願いでも、そんな世界があったかもしれない。そう思うことで、二人はようやく微笑むことができる。
「前国王陛下はどうされていますか?」
「変わらないわ」
「そうですか」
ディオエルが亡くなったことで、自分がしたことに耐え切れず、茫然として過ごしていると聞いていた。
「あなたには腹の立つことだと思うけど、現実逃避というのかしらね。自分のことではないと思って、生きているわ」
「そうですか」
「受け止め切れないのよ、弱くて、謝罪もできない、責任も取れない。国王の器ではなかったことは確かだわ」
シュアリアだから言えることだが、確かにギリシスは愚王ではなかったが、浅墓なところがあり、シュアリアが支えていたからこそであった。
「あなたは恨むべき相手でしょうけど、ディオエル皇帝陛下とは違うわ」
「そうですね、でもエレサーレ国王陛下はしっかりされていらっしゃいます」
「頑張ってくれているわ」
「ええ」
ミリオン王国はエレサーレによって、これからも続いていくことになる。
その国王はアイルーンとテイラーに怒ったことを身を持って知っている、それだけで救われる気持ちになる。
ギリシスはエレサーレが国王になってから、四年後に亡くなった。
食事もあまり摂れなくなり、動かなくなり、どんどん衰弱していった。エレサーレの結婚式にも体調不良ということで、参列しなかった。
姿を見ることはずっとギリシスに付いていた使用人と、シュアリアとエレサーレだけで、最期はふくよかな方だった体はすっかり痩せ細ってしまった。
葬儀も国葬にはせず、静かに弔われ、後日亡くなったことを発表した。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
最終回を明日に控え、
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話を投稿します。
そして、本日同時刻より、
新作「愛されて、愛されて、愛されて」を投稿しております。
よろしければよろしくお願いします。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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