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【アイルーン】運命
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「何か?」
「いえ、実は娘は婚約者に番が見付かって、婚約を白紙にしたばかりでして」
「それは!そうでしたか…でも、それすらも運命だったのでしょう。それで、令嬢にディオエル皇帝陛下の妃になっていただきたいのですが、いかがでしょうか」
確かにアイルーンも、カフェでも、再会した今も、ディオエルに恍惚とした気持ちも、沸き上がる感覚はあった。
だが、何も考えず、いますぐに駆け寄りたいなどと思うことはなかった。
「よろしく頼む」
ディオエルはそう言ったきり、ソファの中央で、誰よりも神々しい存在感を放ちがながらも、アイルーンとは目を合わせないようにしていた。
「妃ということは、正妃ということですか?」
「竜帝国は皇帝の子を産んだ者が正妃となる決まりでして…長寿であるために、妃は既に五人おりますが、子どもは授かっておりません」
竜帝国で、竜の魂を持つ者は成人してから、年を取ることが緩やかになるために長寿であり、平均寿命は三百歳である。
だが、ディオエルの子どもを産んだ者はまだおらず、六十五歳は超えていたが、子どもは一人もいなかった。
アイルーンも竜帝国の皇帝に、妃がいることは知識として知っていた。
番という気持ちよりも、この目の前の男は五人もの女性を侍らせてると思うと、心はスッと爽快感を感じていた。
「五人でございますか…」
竜帝国は内情をあまり表に出すことはなく、父であるルーベルトも妃がいることは聞いていたが、人数に驚きはした。
「はい、番が見付からない以上、後継を考えて、幾人かを娶ったのです」
「ではアイルーンが子どもを産めば、正妃にということですか?」
「ええ、番との子どもは授かり易いですから、すぐに正妃となられることでしょう」
「子どもが生まれた暁には妃たちは、どうなるのです?」
「降嫁することが多いです。もう降嫁先がない場合は、残る者もいるかもしれませんが、正妃様とは住まいが違いますから、会うこともないでしょう」
その言葉で、ルーベルトはミリオン王国でも側妃制度はあるために、納得した。
皇帝一行は、しばらくミリオン王国に滞在する予定だったので、帰る際に一緒にアイルーンを迎い入れたいと言い、本来なら既に結婚していたのだからと、ルーベルトは受け入れた。
アイルーンの兄である、ベルサートも同じ意見であった。
折角友人たちに励まされて、少し回復していたアイルーンは、また悲観的に逆戻りし、本当ならば邸にいるはずないのだから、二人にとって邪魔者なのだと思うようになっていた。
竜帝国が子どもを求め、アイルーンも番同士の方が子どもが出来やすいというのは、証明されていると聞いたことがあった。
目の前の何も言わないディオエルよりも、マークはきっと愛する番と沢山の子どもを作り、愛するのだろうと考えていると、片方の目から涙が零れていた。
「ご、ご令嬢、大丈夫か?」
声を掛けたのは、ディオエルを挟んで、もう一方に座っていた三人の中では一番穏やかそうな風貌の男性だった。ディオエルは、僅かに驚いた顔をする程度であった。
「感動されたのですかな?」
説明をしていた眼鏡の男性が、笑みを零しながら言った。
「いいえ、ゴミが入っただけでございます。失礼いたしました」
そう言って、アイルーンはハンカチで目尻を押さえた。
その後、ディオエルがアイルーンに何か訊ねて来ることも、話し掛けて来ることもなかったので、同じ場所にいながら、言葉を交わすこともなかった。
アイルーンの様子を感じ取ったのか、また帰る際に迎えに来ると、デリア侯爵家を後にする際に、眼鏡の男性はにこにこしながら、アイルーンに告げた。
「皇帝陛下はずっと探していた番が見付かったことに驚き、まだ上手く話せないのでございます。誤解されないように、お願いいたします」
「はい」
アイルーンは穏やかに返事をしたが、ただただ胡散臭いと感じるだけであった。
「いえ、実は娘は婚約者に番が見付かって、婚約を白紙にしたばかりでして」
「それは!そうでしたか…でも、それすらも運命だったのでしょう。それで、令嬢にディオエル皇帝陛下の妃になっていただきたいのですが、いかがでしょうか」
確かにアイルーンも、カフェでも、再会した今も、ディオエルに恍惚とした気持ちも、沸き上がる感覚はあった。
だが、何も考えず、いますぐに駆け寄りたいなどと思うことはなかった。
「よろしく頼む」
ディオエルはそう言ったきり、ソファの中央で、誰よりも神々しい存在感を放ちがながらも、アイルーンとは目を合わせないようにしていた。
「妃ということは、正妃ということですか?」
「竜帝国は皇帝の子を産んだ者が正妃となる決まりでして…長寿であるために、妃は既に五人おりますが、子どもは授かっておりません」
竜帝国で、竜の魂を持つ者は成人してから、年を取ることが緩やかになるために長寿であり、平均寿命は三百歳である。
だが、ディオエルの子どもを産んだ者はまだおらず、六十五歳は超えていたが、子どもは一人もいなかった。
アイルーンも竜帝国の皇帝に、妃がいることは知識として知っていた。
番という気持ちよりも、この目の前の男は五人もの女性を侍らせてると思うと、心はスッと爽快感を感じていた。
「五人でございますか…」
竜帝国は内情をあまり表に出すことはなく、父であるルーベルトも妃がいることは聞いていたが、人数に驚きはした。
「はい、番が見付からない以上、後継を考えて、幾人かを娶ったのです」
「ではアイルーンが子どもを産めば、正妃にということですか?」
「ええ、番との子どもは授かり易いですから、すぐに正妃となられることでしょう」
「子どもが生まれた暁には妃たちは、どうなるのです?」
「降嫁することが多いです。もう降嫁先がない場合は、残る者もいるかもしれませんが、正妃様とは住まいが違いますから、会うこともないでしょう」
その言葉で、ルーベルトはミリオン王国でも側妃制度はあるために、納得した。
皇帝一行は、しばらくミリオン王国に滞在する予定だったので、帰る際に一緒にアイルーンを迎い入れたいと言い、本来なら既に結婚していたのだからと、ルーベルトは受け入れた。
アイルーンの兄である、ベルサートも同じ意見であった。
折角友人たちに励まされて、少し回復していたアイルーンは、また悲観的に逆戻りし、本当ならば邸にいるはずないのだから、二人にとって邪魔者なのだと思うようになっていた。
竜帝国が子どもを求め、アイルーンも番同士の方が子どもが出来やすいというのは、証明されていると聞いたことがあった。
目の前の何も言わないディオエルよりも、マークはきっと愛する番と沢山の子どもを作り、愛するのだろうと考えていると、片方の目から涙が零れていた。
「ご、ご令嬢、大丈夫か?」
声を掛けたのは、ディオエルを挟んで、もう一方に座っていた三人の中では一番穏やかそうな風貌の男性だった。ディオエルは、僅かに驚いた顔をする程度であった。
「感動されたのですかな?」
説明をしていた眼鏡の男性が、笑みを零しながら言った。
「いいえ、ゴミが入っただけでございます。失礼いたしました」
そう言って、アイルーンはハンカチで目尻を押さえた。
その後、ディオエルがアイルーンに何か訊ねて来ることも、話し掛けて来ることもなかったので、同じ場所にいながら、言葉を交わすこともなかった。
アイルーンの様子を感じ取ったのか、また帰る際に迎えに来ると、デリア侯爵家を後にする際に、眼鏡の男性はにこにこしながら、アイルーンに告げた。
「皇帝陛下はずっと探していた番が見付かったことに驚き、まだ上手く話せないのでございます。誤解されないように、お願いいたします」
「はい」
アイルーンは穏やかに返事をしたが、ただただ胡散臭いと感じるだけであった。
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