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【アイルーン】優しさ
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翌日、教会でディオエルとアイルーンが、番の確認をすると、二人の手の甲には迷路のような印が浮かび上がった。
これで間違いだということはなくなり、相手は強国で、いくら侯爵家でも、結婚が破談になった邪魔な令嬢であるアイルーンに抗う術はなかった。
母は三年前に既に亡くなっていたが、父と兄は甲斐甲斐しく準備を進めており、最後には本当に良かった、母も喜んでいると言われ、アイルーンの薄い笑みにも気付くことはなかった。
愛されたいなどと、貪欲に求めていたわけではないアイルーンですら、どんな人となりであれ、五人の妃にはいい思いは持てなかった。
だが、父と兄にとってはあの眼鏡の説明で納得が出来るもので、男性側からしか考えられず、仕方ないことだで済むのだろう。
悲観的なアイルーンは、私の気持ちはどこにあるのかすら、誰も気にもしていない。自分だけが不幸だと思うのではなく、何だか変な気分をずっと感じていた。
皇帝が滞在していることや、教会でのこと、王家にも報告をしたことから、カフェに誘ってくれた友人である同じ侯爵令嬢のナビナと、伯爵令嬢のレイエンヌとミラニューも、アイルーンが皇帝の番だったと聞いたようで、嬉しそうに訪ねて来た。
「辛いこともあったけど、アイルーンが番に出会うためだったのよ。あいつらは、アイルーンの幸せの踏み台よ!」
「そう…かしら?」
アイルーンは番だと判明しても、確認をしても、輿入れが決まっても、どうしても愛することも、幸せも何も手にした気持ちがなかった。
「私もナビナに同意よ、本当にそう思うわ」
「羨ましいくらいですわよ」
三人はそれぞれに結婚を控えており、四人の中で最初の結婚式が、アイルーンであるはずだった。
「こんな短い期間で状況が変われば、気持ちが追い付かないのは分かるわ。でも、きっとあんな男と結婚するよりも、絶対に幸せになれるんだから」
レイエンヌとミラニューも、そうそうと頷いている。
「でも、目も合わさないのよ?」
「そうなの?恥ずかしいのかしら?」
「噂だけど、実直な方だって聞いたことがあるわ」
ミリオン王国の貴族令嬢がディオエルのことは、ほとんどが噂程度でしか知ることのない存在である。
「じゃあ、まだどう接したらいいか分からないのよ」
「そうよ、アイルーンにはマークのことで辛いだろうから言えなかったけど、男性にとって番は愛おしくて堪らない存在だそうよ」
一番、何事にも冷静で、博識なレイエンヌが心苦しそうに話した。
「女性は違うの?」
「女性は男性よりも理性が強いんですって、子どもを産んでからは母性にもなって、男性よりも冷静なことが多いそうよ」
「なら…私も冷静なのね」
「何も思わないことはないのでしょう?」
アイルーンも歴史ある侯爵家であるために、番を感知することは出来る。血が薄まった家や、猿類を始祖に持つ家では感知が出来ないことが多い。
「湧き上がる気持ちはあったけど、抑え込めるものだったわ」
「二人きりにはなっていないのでしょう?」
「ええ、勿論よ」
いくら番だ、妃になって貰うという間柄でも、すぐに二人きりにということはなかった。アイルーンも、望みたいとも思わなかった。
「きっと、臣下の前で、デレデレするわけにはいかないのよ!皇帝だから威厳は大事でしょう?」
「そうかしら?妃のことも、気が重くて堪らないわ」
三人も喜ばしいことではあったが、気がかりなのは、既に妃がいるということであった。レイエンヌは口籠ったが、ナビナとミラニューは強く励ました。
「皇帝陛下が守ってくれるわよ!」
「そうよ!番が酷い目に遭うわけないじゃない」
「そうね」
友人たちが励まそうとしているのは頭では分かっているが、アイルーンはこの前のように心が軽くなるようなことはなかった。
そして、三人は絶対に遊びに行くからねと言い、アイルーンは帰って行く姿を見送りながら、なぜかもうこの背中を見ることはないのではないかと感じていた。
これで間違いだということはなくなり、相手は強国で、いくら侯爵家でも、結婚が破談になった邪魔な令嬢であるアイルーンに抗う術はなかった。
母は三年前に既に亡くなっていたが、父と兄は甲斐甲斐しく準備を進めており、最後には本当に良かった、母も喜んでいると言われ、アイルーンの薄い笑みにも気付くことはなかった。
愛されたいなどと、貪欲に求めていたわけではないアイルーンですら、どんな人となりであれ、五人の妃にはいい思いは持てなかった。
だが、父と兄にとってはあの眼鏡の説明で納得が出来るもので、男性側からしか考えられず、仕方ないことだで済むのだろう。
悲観的なアイルーンは、私の気持ちはどこにあるのかすら、誰も気にもしていない。自分だけが不幸だと思うのではなく、何だか変な気分をずっと感じていた。
皇帝が滞在していることや、教会でのこと、王家にも報告をしたことから、カフェに誘ってくれた友人である同じ侯爵令嬢のナビナと、伯爵令嬢のレイエンヌとミラニューも、アイルーンが皇帝の番だったと聞いたようで、嬉しそうに訪ねて来た。
「辛いこともあったけど、アイルーンが番に出会うためだったのよ。あいつらは、アイルーンの幸せの踏み台よ!」
「そう…かしら?」
アイルーンは番だと判明しても、確認をしても、輿入れが決まっても、どうしても愛することも、幸せも何も手にした気持ちがなかった。
「私もナビナに同意よ、本当にそう思うわ」
「羨ましいくらいですわよ」
三人はそれぞれに結婚を控えており、四人の中で最初の結婚式が、アイルーンであるはずだった。
「こんな短い期間で状況が変われば、気持ちが追い付かないのは分かるわ。でも、きっとあんな男と結婚するよりも、絶対に幸せになれるんだから」
レイエンヌとミラニューも、そうそうと頷いている。
「でも、目も合わさないのよ?」
「そうなの?恥ずかしいのかしら?」
「噂だけど、実直な方だって聞いたことがあるわ」
ミリオン王国の貴族令嬢がディオエルのことは、ほとんどが噂程度でしか知ることのない存在である。
「じゃあ、まだどう接したらいいか分からないのよ」
「そうよ、アイルーンにはマークのことで辛いだろうから言えなかったけど、男性にとって番は愛おしくて堪らない存在だそうよ」
一番、何事にも冷静で、博識なレイエンヌが心苦しそうに話した。
「女性は違うの?」
「女性は男性よりも理性が強いんですって、子どもを産んでからは母性にもなって、男性よりも冷静なことが多いそうよ」
「なら…私も冷静なのね」
「何も思わないことはないのでしょう?」
アイルーンも歴史ある侯爵家であるために、番を感知することは出来る。血が薄まった家や、猿類を始祖に持つ家では感知が出来ないことが多い。
「湧き上がる気持ちはあったけど、抑え込めるものだったわ」
「二人きりにはなっていないのでしょう?」
「ええ、勿論よ」
いくら番だ、妃になって貰うという間柄でも、すぐに二人きりにということはなかった。アイルーンも、望みたいとも思わなかった。
「きっと、臣下の前で、デレデレするわけにはいかないのよ!皇帝だから威厳は大事でしょう?」
「そうかしら?妃のことも、気が重くて堪らないわ」
三人も喜ばしいことではあったが、気がかりなのは、既に妃がいるということであった。レイエンヌは口籠ったが、ナビナとミラニューは強く励ました。
「皇帝陛下が守ってくれるわよ!」
「そうよ!番が酷い目に遭うわけないじゃない」
「そうね」
友人たちが励まそうとしているのは頭では分かっているが、アイルーンはこの前のように心が軽くなるようなことはなかった。
そして、三人は絶対に遊びに行くからねと言い、アイルーンは帰って行く姿を見送りながら、なぜかもうこの背中を見ることはないのではないかと感じていた。
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