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【アイルーン】寵愛
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皇帝一行が帰ることになり、アイルーンは元気に暮らすのだぞと、皆に華々しく見送られ、道中も甲斐甲斐しく、世話をされた。
父・ルーベルトは侍女や護衛を連れて行って欲しいと願ったが、まずは慣れてからということになり、アイルーンは単身で竜王国に着いた。
竜帝国、正式名はエレアンジューラソーレ竜帝国である。
アイルーンはまず王宮を案内して貰っていると、全員ではないが、歓迎されていない空気も感じ取っていた。
そして、ピンク色のドレスを纏った一人の女性が、ディオエルの胸に飛び込んだ。その瞬間、アイルーンの胸がキシリと痛んだが、掌で撫でるとすぐに治まった。
「遅かったじゃない!」
「すまない」
「で、この子?」
「ああ」
「そうなのね」
ローズミーはアイルーンを睨み付けるようなこともなく、大きな瞳と、長いまつ毛をパチパチさせて、アイルーンをじっと見つめただけであった。
「令嬢、彼女は妃であるローズミーだ、私の愛する人である」
ディオエルは慣れた手つきでローズミーの肩を抱き、ローズミーも当たり前のように寄り添った。
アイルーンの中のディオエルに、ようやく芯が見えた思いであった。彼は妃の中に、きちんと愛する妃がいたのであると、正しく理解した。
「承知いたしました」
「…」
ディオエルは急激な胸の高鳴りに動揺したが、愛するローズミーに気付かれる前に平然を装った。
「残りの四人も後で紹介する」
「皇帝陛下、お願いがございます」
アイルーンは何も願うことも、聞くこともなかったが、一つ願うことにした。
「何だ?」
「私は妃にならなくて構いません、妾としてどこかあまり目に着かない場所に置いていただけないでしょうか」
「ご令嬢!」
声を上げたのは、穏やかな顔をした男性、ライシードという名前の方であった。眼鏡のイオリクの方は、何も言わなかった。
「竜王国にとって、私は軽い存在だと正しく理解しました。ですので、相応しい場所で結構です」
アイルーンは他の妃は分からないが、ローズミーを彼女は私と同じ立場で、番である私が側にいる以上、私より辛い立場かもしれないと思っていた。
ディオエルは番よりも、ローズミーを愛しており、それはマークにはなかったものだ。アイルーンにも今でも胸が痛いほど、気持ちの分かることであった。
それならば、彼女に極力見ることのない存在になろうと思った。
もしあのままマークと結婚して、その後で番に出会って、離縁が出来ない状況で、番を迎い入れることになったとしたら…私だったら、見たくないと思うだろうと一瞬にして考えた。
「いかがでしょうか」
「令嬢がいいならば、それで構わない。イオリク、手配してやれ」
「かしこまりました」
アイルーンは、王宮の片隅の部屋を与えられることになった。
約束通り、他の四人の妃も紹介はして貰ったが、皆、ローズミーのようなことはなく、歓迎されることはなかったが、淡々としたものであった。
「物分かりのいい方で助かりました」
部屋を訪ねて来たイオリクは、アイルーンにそう告げた。当たり前だが、イオリクも、ライシードもローズミーの存在を知っていたのである。
イオリクはきっと、上手く丸め込めたと思っているのだろう。
「あなたには番として、子どもを産んでいただきたい」
「そうなったら、正妃になってしまうのではなかったのですか?」
「名前だけですよ」
「そうですか」
ディオエルは子どもを作るために、アイルーンを抱かなくてならなかった。そして、アイルーンも抱かれなくてならなかった。
アイルーンは、互いに苦行でしかない行為でも、子どもを産めば、その子を可愛がればいい。レイエンヌが母性になると言っていた意味が、まだ子どもは出来ていない状況だったが、理解が出来る気がしていた。
父・ルーベルトは侍女や護衛を連れて行って欲しいと願ったが、まずは慣れてからということになり、アイルーンは単身で竜王国に着いた。
竜帝国、正式名はエレアンジューラソーレ竜帝国である。
アイルーンはまず王宮を案内して貰っていると、全員ではないが、歓迎されていない空気も感じ取っていた。
そして、ピンク色のドレスを纏った一人の女性が、ディオエルの胸に飛び込んだ。その瞬間、アイルーンの胸がキシリと痛んだが、掌で撫でるとすぐに治まった。
「遅かったじゃない!」
「すまない」
「で、この子?」
「ああ」
「そうなのね」
ローズミーはアイルーンを睨み付けるようなこともなく、大きな瞳と、長いまつ毛をパチパチさせて、アイルーンをじっと見つめただけであった。
「令嬢、彼女は妃であるローズミーだ、私の愛する人である」
ディオエルは慣れた手つきでローズミーの肩を抱き、ローズミーも当たり前のように寄り添った。
アイルーンの中のディオエルに、ようやく芯が見えた思いであった。彼は妃の中に、きちんと愛する妃がいたのであると、正しく理解した。
「承知いたしました」
「…」
ディオエルは急激な胸の高鳴りに動揺したが、愛するローズミーに気付かれる前に平然を装った。
「残りの四人も後で紹介する」
「皇帝陛下、お願いがございます」
アイルーンは何も願うことも、聞くこともなかったが、一つ願うことにした。
「何だ?」
「私は妃にならなくて構いません、妾としてどこかあまり目に着かない場所に置いていただけないでしょうか」
「ご令嬢!」
声を上げたのは、穏やかな顔をした男性、ライシードという名前の方であった。眼鏡のイオリクの方は、何も言わなかった。
「竜王国にとって、私は軽い存在だと正しく理解しました。ですので、相応しい場所で結構です」
アイルーンは他の妃は分からないが、ローズミーを彼女は私と同じ立場で、番である私が側にいる以上、私より辛い立場かもしれないと思っていた。
ディオエルは番よりも、ローズミーを愛しており、それはマークにはなかったものだ。アイルーンにも今でも胸が痛いほど、気持ちの分かることであった。
それならば、彼女に極力見ることのない存在になろうと思った。
もしあのままマークと結婚して、その後で番に出会って、離縁が出来ない状況で、番を迎い入れることになったとしたら…私だったら、見たくないと思うだろうと一瞬にして考えた。
「いかがでしょうか」
「令嬢がいいならば、それで構わない。イオリク、手配してやれ」
「かしこまりました」
アイルーンは、王宮の片隅の部屋を与えられることになった。
約束通り、他の四人の妃も紹介はして貰ったが、皆、ローズミーのようなことはなく、歓迎されることはなかったが、淡々としたものであった。
「物分かりのいい方で助かりました」
部屋を訪ねて来たイオリクは、アイルーンにそう告げた。当たり前だが、イオリクも、ライシードもローズミーの存在を知っていたのである。
イオリクはきっと、上手く丸め込めたと思っているのだろう。
「あなたには番として、子どもを産んでいただきたい」
「そうなったら、正妃になってしまうのではなかったのですか?」
「名前だけですよ」
「そうですか」
ディオエルは子どもを作るために、アイルーンを抱かなくてならなかった。そして、アイルーンも抱かれなくてならなかった。
アイルーンは、互いに苦行でしかない行為でも、子どもを産めば、その子を可愛がればいい。レイエンヌが母性になると言っていた意味が、まだ子どもは出来ていない状況だったが、理解が出来る気がしていた。
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