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【アイルーン】終わりの後
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「アイルーンが亡くなった?」
ミリオン王国では、アイルーンの父であるルーベルト・デリア侯爵に、早馬で向かった使者から死去が伝えられた。
「はい、陛下がすぐに知らせる様にと」
「なぜ?」
「今、原因を調べているとのことでした」
「そうですか…準備をして、すぐに参りますとお伝えいただけますか」
「承知いたしました」
使者はそのまま帰って行き、ルーベルトは隣の邸で暮らすアイルーンの兄・ベルサートにすぐさま話に向かった。
「亡くなった?そんな、嘘でしょう?」
「そんな…」
ベルサートの妻・ナナリーも、驚愕の表情を浮かべ、目を見開いた。
「そんな嘘をわざわざつく必要がないだろう」
「どうして…」
「原因は今、調べているそうだ。私はすぐに向かう。お前はどうする?」
「一緒に行きます。ナナリー、任せていいか?」
「勿論でございます」
ベルサートとナナリーはアイルーンが嫁ぐ二年前に結婚しており、娘もまだ幼いので、ナナリーまで向かうことは出来なかった。
アイルーンは、竜帝国に行って、一年半も経っていなかった。ルーベルトとベルサートは急いで、竜帝国に急いだ。
何かの間違いであって欲しいという気持ちもあったが、事実だろうということも分かっており、ただせめて泣くのは見てからだと思っていた。
だが、竜帝国に着き、皇帝宮の大きな部屋に案内されると、そこにいたのは、生きてはいない娘であり、妹であった。
「なぜこのような恰好に」
アイルーンは丸まって、死後硬直で固まってしまっているために、まっすぐ寝させることは出来ず、丸まった状態で、上等なブランケットが掛けられていた。
「子どもを守ろうとしたのだと思う」
答えたのは、デリア侯爵の到着を聞いたディオエルであった。
「皇帝陛下…ご挨拶申し上げます」
「そんなことはいい、こんなことになって申し訳ない」
「妊娠していたのですか?」
ルーベルトも、勿論ベルサートも知らなかった。
「ああ、知らなかったのか?」
「はい…手紙には変わりなく過ごしているとしか…」
「そうか」
イオリクがアイルーンの手紙を確認してから送っていることは知っていた、書いてはいけないと思い、書かなかったのかもしれないと思った。
「それで、なぜ亡くなったのですか」
「妊娠による貧血が原因の心臓の発作だと思われる、毒物や外傷、出血もない。ミリオン王国の医師に見せて貰ってもいい」
アイルーンが望み、ディオエルが許可した状況ではあったが、皇帝宮でアイルーンが好かれていたとは思えず、万が一のことを考えて、外傷もきちんと確認させ、毒物の反応も調べた。
「そうですか…」
こんな広い部屋なのに、あの子が好む色すらないことに気付いた。
「娘を連れて帰ってよろしいですか」
「それはっ!」
「疑っているわけではありません。正妃になることもなく、亡くなったのですから、アイルーンが竜帝国で名を残すことはないということですよね?こちらで埋葬する方がいいでしょう。妻の墓の横に埋葬したいと思います」
妊娠はしていたが、子どもを産んではいない。しかも、ルーベルトは知らないが、アイルーンは妃にすらなっていない。
「陛下、よろしいのではないですか」
「分かった、こちらで運ばせよう」
「では、お願いいたします」
ルーベルトが話している間、ベルサートは『よく頑張ったな』と、冷たくなった妹の頬を撫でていた。
二歳しか違わないことで、幼い頃はベルサートはアイルーンを煩わしいと思ったこともあったが、成長してからはしっかりはしていたが、どこか俯瞰で見ているような様子を心配もしていた。
マークとの婚約が駄目になり、ぼんやりしている姿も見ていられなかった。だから、見初められて良かったと思っていたが、こんな結果はあんまりだと思った。
アイルーンはミリオン王国で、母親の隣に静かに埋葬された。
ミリオン王国では、アイルーンの父であるルーベルト・デリア侯爵に、早馬で向かった使者から死去が伝えられた。
「はい、陛下がすぐに知らせる様にと」
「なぜ?」
「今、原因を調べているとのことでした」
「そうですか…準備をして、すぐに参りますとお伝えいただけますか」
「承知いたしました」
使者はそのまま帰って行き、ルーベルトは隣の邸で暮らすアイルーンの兄・ベルサートにすぐさま話に向かった。
「亡くなった?そんな、嘘でしょう?」
「そんな…」
ベルサートの妻・ナナリーも、驚愕の表情を浮かべ、目を見開いた。
「そんな嘘をわざわざつく必要がないだろう」
「どうして…」
「原因は今、調べているそうだ。私はすぐに向かう。お前はどうする?」
「一緒に行きます。ナナリー、任せていいか?」
「勿論でございます」
ベルサートとナナリーはアイルーンが嫁ぐ二年前に結婚しており、娘もまだ幼いので、ナナリーまで向かうことは出来なかった。
アイルーンは、竜帝国に行って、一年半も経っていなかった。ルーベルトとベルサートは急いで、竜帝国に急いだ。
何かの間違いであって欲しいという気持ちもあったが、事実だろうということも分かっており、ただせめて泣くのは見てからだと思っていた。
だが、竜帝国に着き、皇帝宮の大きな部屋に案内されると、そこにいたのは、生きてはいない娘であり、妹であった。
「なぜこのような恰好に」
アイルーンは丸まって、死後硬直で固まってしまっているために、まっすぐ寝させることは出来ず、丸まった状態で、上等なブランケットが掛けられていた。
「子どもを守ろうとしたのだと思う」
答えたのは、デリア侯爵の到着を聞いたディオエルであった。
「皇帝陛下…ご挨拶申し上げます」
「そんなことはいい、こんなことになって申し訳ない」
「妊娠していたのですか?」
ルーベルトも、勿論ベルサートも知らなかった。
「ああ、知らなかったのか?」
「はい…手紙には変わりなく過ごしているとしか…」
「そうか」
イオリクがアイルーンの手紙を確認してから送っていることは知っていた、書いてはいけないと思い、書かなかったのかもしれないと思った。
「それで、なぜ亡くなったのですか」
「妊娠による貧血が原因の心臓の発作だと思われる、毒物や外傷、出血もない。ミリオン王国の医師に見せて貰ってもいい」
アイルーンが望み、ディオエルが許可した状況ではあったが、皇帝宮でアイルーンが好かれていたとは思えず、万が一のことを考えて、外傷もきちんと確認させ、毒物の反応も調べた。
「そうですか…」
こんな広い部屋なのに、あの子が好む色すらないことに気付いた。
「娘を連れて帰ってよろしいですか」
「それはっ!」
「疑っているわけではありません。正妃になることもなく、亡くなったのですから、アイルーンが竜帝国で名を残すことはないということですよね?こちらで埋葬する方がいいでしょう。妻の墓の横に埋葬したいと思います」
妊娠はしていたが、子どもを産んではいない。しかも、ルーベルトは知らないが、アイルーンは妃にすらなっていない。
「陛下、よろしいのではないですか」
「分かった、こちらで運ばせよう」
「では、お願いいたします」
ルーベルトが話している間、ベルサートは『よく頑張ったな』と、冷たくなった妹の頬を撫でていた。
二歳しか違わないことで、幼い頃はベルサートはアイルーンを煩わしいと思ったこともあったが、成長してからはしっかりはしていたが、どこか俯瞰で見ているような様子を心配もしていた。
マークとの婚約が駄目になり、ぼんやりしている姿も見ていられなかった。だから、見初められて良かったと思っていたが、こんな結果はあんまりだと思った。
アイルーンはミリオン王国で、母親の隣に静かに埋葬された。
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