【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
22 / 344

【テイラー】最高潮

しおりを挟む
「ミリオン王国は、賠償金を貰ったのですよね?それなのに、何の調査もしなかった。違いますか?」
「それは、殺されたなどと思いもせずに」

 ミリオン王国の王家にも、慰謝料はないが、賠償金は支払われていた。

「では、聞き方を変えましょう。もし、ご自身が殺されたとします。何らかの形で、その記憶を持つことになり、病死したことにされて、それによって利益を得ている人がいたら、どう思いますか?」
「利益など」
「いくら貰ったのか、どのように使われたのか、知りたいと思うのは当然ではありませんか?」

 アイルーンが手にするべきお金ではないが、どのようなことに使われたかくらいは、知る権利があるだろうと思っての質問であった。

「不当なものには使ってはいない」
「では、不遇な妊婦、恵まれない子どもなどに使われましたか?違いましたか?」

 ルーベルトとは違い、ギリシスは予算の補填や、道の整備などに使っていた。

 アイルーンの死で得たお金であったが、ギリシスにとっては賠償金でも、たかがお金という感覚しかない。しかも、生きていたらもっと融通して貰えたはずが、これだけかという思いしかなかった。

 死にたくなかっただろうアイルーンの気持ちを汲んで、同じような境遇の者になどと、考えることもなかった。

「いや、そうではないが、必要な場所に使っただけだ!」

 テイラーもギリシスにとって、たかが金であっただろうことは、分かっていた。

 それでも、せめて優しい使い方をしてくれていたら、アイルーンは喜ぶだろうと思った。アイルーンはテイラーであり、テイラーはアイルーンである。

 だが、テイラーの生きて来た道が、アイルーンの気持ちをどこか、第三者のような気分にもなる。不思議な感覚であった。

「アイルーンは竜帝国でひとりぼっちでした…でも、愛すべき存在が出来て、生まれるのを楽しみにしていました。それなのに、殺されたのです!それが病死?竜帝国でも、ミリオン王国でも、受け入れられた?何の罪もない子どもが殺されたのに?」

 アイルーンの怒りは、本日最高潮であった。

「それは、知らなかったからだ!こちらでも調べられることがあるならば、協力する。デリア侯爵、何か残っているか?」
「望みは薄いですが、遺体を調べれば…」
「もう遅いでしょう」

 ルーベルトも同じように思ったが、誰も付いて行かせて貰えず、手掛かりはミリオン王国には遺体しか残っていない。

「殺されたとなれば、私たちもしっかり受け止め、罰を求める」
「また賠償金狙いですか?」
「っな!」
「せめて同じような境遇の方に使ってくださいませ。その方がアイルーンも、うかばれますわ。そろそろ、帰らせてください」
「ああ、送って行こう」

 エレサーレが答えると、テイラーは満足そうに頷いた。

「今日は、王宮に泊まったらいい!そうしなさい!」

 ギリシスはテイラーをどう扱っていいか分からないままではあったが、ここで帰すわけには行かないと、再び引き留めてしまった。

「最後に言って置きます。私は皇帝に嫁ぐ気はありません」
「っ、だが」

 いくらアイルーンの記憶があっても、番が生きており、竜帝国に今度はちゃんと嫁がせるのならば、国王として受け入れらせようと思っていた。

「無理にも送るのではあれば、そのように皆に、全国民に知らせてください。ミリオン王国は利益のために、平民の女性を殺人鬼が潜む死の巣窟である竜帝国に送ると」
「っな」

 そんなことをすれば、ミリオン王国は利益を得られば、何でもするというイメージを、しかも竜帝国も死の巣窟と表現すれば、間違いなく反感を買う。

「その前に私は正直、明日でも、明後日でも、いつ死んでもいいと思っています。もし病気に罹り、事故に遭い、死んだとしても、今ならば運命だと思うでしょう。ですが、意図的に殺されたのに、病死や自殺だと言われることは、どうしても許せません。ですから、テイラーの命を懸けて戦います」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

処理中です...