【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】漏洩

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「番が殺されたというのは、どういうことですか!」

 ディオエルの元へやって来たのは、ロウス妃の父であるデアン・ドアソア前公爵であった。

 実家に知らせたことで何か言って来るかと思っていたが、一番爵位の高いドアソア公爵家であるのも、妥当だなと思った。

「ロウス妃に聞いたのか?」
「当たり前ではありませんか」
「当たり前?」
「ロウスのことも疑っておいでなのでしょう」
「疑われるようなことがあるのか?」

 確かに疑いはしたが、ロウス妃は有力候補ではなかった。

「あるわけないではありませんか」
「ならばいいではないか。そもそも妃には訊ねたが、実家にまで訊ねろとは言っていなかったのだがな。何でも洩らすような妃だったとはな…これからは気を付けなければならぬな」

 ディオエルはデアンを動揺させようと、鋭い視線を向けた。

「い、いえ、娘は良かれと思ってのことでございます。調べているそうだから、何か知らないかと聞かれたのです」
「何か知っているのか?」
「知りません、病死だとおっしゃっていたではありませんか!それを今更」
「今更という言葉は二度と使うな!」

 ディオエルにこの件に関して、『今更』という言葉は禁句であり、イオリクと同じように立ち上がって殺気を放つと、デアンは膝を付いた。

「殺されているかもしれないのに、ロウス妃が同じ目に遭っても、お前は今更と言えるのか!」
「っっっ…」
「答えろっ!」
「……はっ、はっ、い、いいえ」
「ならば、ふざけたことを言うな!」
「申し訳ございませんでした」

 デアンは見た目はディオエルの方が若いが、年はデアンの方が年下である。

「知らないのなら用はない、帰ってくれ」
「ですが、なぜ、今、になってなのでしょうか。何か証拠があるのですか」
「まだ話す気はない!また洩らされては堪らぬからな」
「っ」

 前公爵という立場で、勢いで訪ねて来てしまったが、秘密裏に進めていたことを、ロウスが洩らした形になってしまったと後悔していた。

「ですが、殺されたのだとしたら、我々も黙ってはいられません」
「ならば、証拠を見付けてくれるのか?」
「あの新しい自白剤を使えばよろしいのではありませんか」

 以前の自白剤は自白はするが、薬が切れると廃人となってしまう物しかなく、犯人は捕まっても、正常に罰することは出来なかった。

 だが、三年前に約一週間で回復するという新しい自白剤が完成していた。

 ディオエルも使う予定ではあったが、まずは怪しい者を炙り出してからでないと、デアンのように乗り込んで来る者がいると思ったからである。

 勿論、証拠が見付かったり、自供が取れれば良かったが、自白剤を使う許可を得るために事前準備のためでもあった。

 そして自白剤は、テイラー嬢の前で使うのが一番いいと思っているが、自分の殺された場所に来て貰えるかは分からない。

「ああ、最終的にはそのつもりだ」
「さようでございましたか」
「お前は許可するか?」
「ロウスにですか?」
「ああ、自白剤を使って、潔白が証明されれば間違いないだろう」
「ですが、ロウスは関係ありません」

 デアンはいくら一週間で回復するとしても、ロウスに自白剤を使うなどという決断は、今までの自白剤のことがあるために許可はしたくなかった。

「口では何とでも言える、きっと子を思う親ならば皆、そういうのではないか?」
「では妃、全員に使うと言うのですか?」
「拒否すれば、疑われることにはなるだろうな」

 一週間寝込むことにはなるが、全員に使うのが、一番いいという考えであった。

 殺した証拠がないように、当時、各々の部屋にいたという妃たちも、証言はお付きの者しかおらず、アイルーンを殺していないという証明も出来ないのである。

 宮に不在だったとしても、命じた可能性もあるので、外されるわけではない。
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