【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】道中

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「答えたくなかったら…答えなくていいのだが、アイルーンの墓には、行ったのだろうか?」
「はい、お母様のお墓参りには行きたかったので」

 ルーベンスは私のことは侯爵と呼ぶが、カイラーをお母様という言葉にギュッと胸を掴まれた。

「横にありましたね」
「そうなんだ、落ち着ける場所はカイラーの横だろうと思って」
「ありがとうございます」
「ああ」

 今はどんな思いになったのかまでは聞くことはしなかった。何の罪滅ぼしにもならないが、少しばかり救われた気がした。

 ルーベンスは他には何も聞かず、黙って、テイラー嬢を見守ることにした。その空間は、確かにアイルーンと一緒にいる懐かしい気持ちになった。

 護衛の騎士たちにはテイラーのことを全てを聞かせることも出来ず、大切な方だと分からせるために、アイルーンの関係者だと、くれぐれも危険なことがないようにと通達した。

「よろしくお願いいたします」
「はい、しっかりとお守りいたします」

 不思議がってはいたが、アイルーンを知る者はテイラーに会い、レッドブラウンの瞳を見て、何か感じたような顔をした者もいた。

 ルーベンスは隠し子だと思われる可能性も分かってはいたが、説明の出来ないことであり、正直どうでも良かった。

 ただ、今はテイラーがアイルーンの真実を炙り出し、死の真相を突き止めてくれることだけを考えたかった。

 そして、ほぼ一日掛かりで竜帝国に辿り着き、その日はホテルに泊まって、翌朝、皇帝宮にやって来た。ルーベンスもアイルーンのお墓はミリオン王国にあるために、来たのはあの日以来となる。

「大丈夫か?」

 ルーベンスは、テイラー自分が殺された場所に行くのは辛いのではないかと、気持ちを慮った。

「ありがとうございます。外から見ることはあまりなかったのですが、気分のいいものではありませんね。ですが、仕方ありません」

 アイルーンとしても、テイラーとしても二度と来たくはない場所ではあったが、許せない気持ちが滞っている場所でもあった。

「気分が悪くなったら、すぐに離れよう」
「はい」

 話をしていると、出迎えたのは、ライシードであった。

「遠いところ、ようこそおいでくださいました。既に準備はしておりますので、ご案内いたします」
「同じ空間で話を聞くのですか?」

 ルーベンスは自白剤を使う立ち合いとは聞いていたが、どのような形になるかまでは聞いていなかった。犯人と対峙するような形では、いくら記憶とはいえ、テイラーは耐えられないのではないかと心配になった。

「どうがよろしいでしょうか?」
「同席します。ですが、私はどのように紹介されるのでしょうか?」
「デリア侯爵の縁者ということでいかがでしょうか」

 よく見ると虹彩が違うが、遠くから見れば同じようなレッドブラウンの瞳をしているために、縁者と言われれば納得するだろう。

「そうですか」
「構いませんか?」
「はい、それでお願いします」

 テイラーは正体ということではないが、アイルーンの記憶があることを話されない方がいいと考えていた。

「ありがとうございます、皇帝陛下も私も犯人を捕まえたいと思っております。ですので、こちらからあなたのことを話すことはいたしません。ですが、何かおっしゃりたいことがあれば、おっしゃっていただいて構いません」
「承知しました」

 テイラーとルーベンスはライシードに付いて行き、案内された部屋にはディオエルと護衛がいた。

「わざわざ来て貰ってすまない」

 頭こそ下げることはなかったが、ディオエルは申し訳なさそうな顔をしていた。

「犯人が罰されるのならば、構いません」
「ああ、そのつもりだが…証拠が見付かっていない」
「自白剤を使うのですよね?」
「ああ、まずはペジリーに使うつもりだ」
「彼女だけに使うのですか?」
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