【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
49 / 344

【テイラー】自白剤1

しおりを挟む
 ディオエルはペジリーの名前を出して、テイラーの表情を読み取ろうとしたが、逆に質問をされるとは思っていなかった。

「いや、まずはペジリーであるだけだ」
「そうですか」

 テイラーが熟女女性と言っていたのは、間違いなくペジリーであり、おそらく名前も呼びたくもない相手だったのではないかとも感じ取っていた。

「もし、誰か使って欲しい相手がいれば言って欲しい」
「必要あれば、お話はさせていただきたいと思いますが、見付けるのは皇帝陛下だと申したはずです」
「ああ」

 そう言われるのではないかと思っていたが、ペジリー以上に疑わしい相手はおらず、反論はないようだったので進めることにした。

 ライシードがペジリーを連れて来られて、皇帝に護衛たち、そしてデリア侯爵とテイラーと護衛たちは少し外れた場所で座っていることになった。

 ラオイ医師は監視対象となっているので、見張りは付いているが、まだ連れて来られてはいない。

「どうして呼ばれたか分かるか?」
「まだローズミーが殺したと疑われているのですか」
「ああ、そうだな」
「そんな!あの子はそんなことをする子ではありません!」

 ペジリーはあれ以来、ローズミーに会っていないままで、立ち上がって訴えた。

「お前がペジリーが関わっていないと証明が出来るのか?」
「勿論でございます!あの子のことは一番分かっておりますから」
「ならば、お前に自白剤を使っても問題ないな?」
「じ、は、く、ざい?」

 ローズミーがどのような子なのかを話す程度くらいに思っていたペジリーは、思ってもいない言葉を言われて、思考が停止した。

「ああ」
「どうして私が…」
「お前が言ったのではないか?関係ないと証明するためだ」
「でも自白剤なんて」
「不都合があるのか?一週間、寝込むくらいだ。死ぬわけでもないのに」
「そんな、無理です」

 アイルーンがペジリーによって殺されたのなら、よくも無理などと言えたものである。ディオエルはテイラーより後ろにいるために、振り向かなければどんな顔をしているのか見えず、見たくもあったが、見ることはしなかった。

「疑われたままでもいいのか?お前が証明すると言ったのではないか」
「自白剤なんて思わなかったものですから」
「まあ、どうでもいい。息子には既に許可を得ている」
「え…そんな」
「息子は言わなかったんだな、まともで安心したよ。医師を呼んで、使ってくれ」

 ペジリーは騎士に拘束されて、既に隣の部屋で待機していた医師によって、自白剤の注射を打たれることになった。

 ヒューヒューと息が上がり、動悸が落ち着くまで、しばらく待つことになった。

 そして、ペジリーは顔を真っ赤にさせて、瞳をキョロキョロと動かし始めた。

「始めてください」

 医師がそう言うと、ディオエルは頷いた。

 自白剤の効果は大体30分くらいであるために、切れる前に的確に質問を行わなくてはならない。

「私の番であるアイルーン・デリアを殺したのは、ペジリーか?」

 ペジリーは目を血走らせ、鼻息も荒くなっていた。

「殺した、わけでは、あり、ません」
「殺していない?お前が殺したのだろう!」
「殺して、は、いません」
「では、誰かに殺させたのか?」
「ち、がう」

 ペジリーは目を左右にギョロギョロと動かしながら、ディオエルに向かって首を振っている。

「死んで、は、困った」
「困る?何が困る?」
「ローズミーが困る、でも大丈夫、で、は、なかった」

 ディオエルは自白剤を使っているので、ペジリーが嘘を付いてはいないが、何が言いたいのかは理解が出来なかった。

 だが、関わっていることは確信に変わっていた。

「では、質問を変える。アイルーン・デリアにお前は何をした?」
「私は、ローズ、ミーの、ために」
「何をしたかを聞いている!」
「血、を、血が、欲しくて、あの子の、ために、血が、ひ、つようで」
「は?血だと?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」 その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。 「了承しました」 ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。 (わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの) そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。 (それに欲しいものは手に入れたわ) 壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。 (愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?) エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。 「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」 類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。 だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。 今後は自分の力で頑張ってもらおう。 ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。 ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。 カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*) 表紙絵は猫絵師さんより(⁠。⁠・⁠ω⁠・⁠。⁠)⁠ノ⁠♡

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

処理中です...